ナイチンゲールの沈黙(上) [宝島社文庫] (宝島社文庫 C か 1-3 「このミス」大賞シリーズ) 海堂尊 宝島社 このアイテムの詳細を見る |
待ってました。
「チーム・バチスタの栄光」以来、この文庫化を心待ちにしていました。
おなじみ田口・白鳥シリーズ第2弾。
この作品中いよいよ殺人事件が起るのは、全体の3分の1以上読み進んでからなのですが・・・。
私は、事件が起る前のこの小説の雰囲気の方が好きでした。
舞台は前作と同じ東城大学医学部付属病院なんですが、
今回は小児科病棟がメイン。
小児の眼球に発生するガンの一種、レティノブラストーマ(網膜芽腫)を発症した14歳牧村瑞人と5歳佐々木アツシくん、登場。
その牧村瑞人の父親というのが、
完全に育児放棄というか、児童虐待のどうにもならない親で、
息子の病状の説明を聞きにさえ来ない。
瑞人はすっかり気持ちがささくれ立ち自暴自棄。
そんな二人の担当看護師が、浜田小夜。
彼女は類まれな歌の才能の持ち主。
そんなところへ、伝説の歌手、水落冴子が緊急入院。
これらの人物と、愚痴外来担当田口との交流がなかなか情感たっぷりに描かれていまして、推理小説であることを忘れて、楽しんでしまいました。
ところがやはり起きてしまう殺人事件。
殺されたのは瑞人の父親。
まあ、犯人の察しはすぐについてしまうのですが。
このストーリーは誰が犯人かというよりは、
どのように犯行が解き明かされるのかがテーマとなります。
前作同様、この事件発生後から本のイメージがガラッと変わってしまいます。
これは厚生労働省の変人役人白鳥圭輔の責任なのですが・・・。
どうもね、私はあえて彼を登場させなくても、田口先生だけで十分のような気がする。
私は田口先生、好きですけどねえ。
どこかボーっとしていて、見た目もぱっとしなくて、頼りなさそうで、
でも、実は結構キレて、人望もある。
探偵役は、彼だけの方が、物語全体もしっとりと仕上がるのになあ・・・。
あえて、ドタバタ調にしなくても・・・。
看護師小夜の歌声は人の脳の視覚神経を刺激し、
聞く者にくっきりとしたイメージを映像として浮かび上がらせる・・という、SFまがいの設定が出てきます。
まあ、奇想天外ですが、こういうのは嫌いじゃない。
ただ、どうも、わざわざバラバラ死体になっていた意味があまりないような気がします。
そこの説明が弱いのが残念。
満足度★★★★☆