愛しの座敷わらし 荻原 浩 朝日新聞出版 このアイテムの詳細を見る |
高橋一家は晃一の転勤のため、東京からとある田舎町へ引っ越してきます。
駅からもかなり遠い、ある古民家(築103年!)を借り受けて住むことに・・・。
一家の家族構成は夫晃一、妻文子、長女中学生梓美、長男小4智也。
そして、晃一の母澄代。
それから、コーギー犬クッキー。
そして・・・。
なんとその家には「座敷わらし」が住み着いていたのです。
紺色の着物。
おかっぱ頭で、頭のてっぺんで髪を結んでいる。
丸っこいほっぺた。
けれど意外とやせっぽちで、女の子のように見えるけれど、男の子らしい。
いつでも誰にでも見えるわけではない。
悪さをするわけでもないし、特別、何かいいことをしてくれるわけでもない。
幽霊のように不意に現れたり、手鏡の中に写ったりするので、
はじめの内は怖がっていた一家ですが、
次第に気にならなくなってきて、むしろ現れるのを待ち望む。
目を寄せるようにして、つまんださくらんぼをじっとみつめたり、
背中に負ぶさったまま鼻ちょうちんを出して寝ていたり、
智也のけん玉に目を見張って「ふわあ・・・」と感心。
なんだか、小さな子の愛らしい描写がとても生き生きしていて、
読んでいても、この子が大好きになってしまいます。
民話でもよく語られる「座敷わらし」。
そもそもこれは何なのかというと、これがつらく悲しい由来があるのです。
この子達は、生まれてすぐに間引きされた子どもたちだというのです。
貧しい農村では生まれた子をすべて育てるだけの余裕がない。
やむなく、せっかく生を受けたその赤子を、
親の手でまた神様に返すことがそう珍しくはなかった。
その子どもがお乳とおんぶの要らない年になってから、この世へ戻される。
今度は悲しい思いをしないように、住み着く家を裕福にする力を備えて。
それで、座敷わらしのいる家は栄る、という言い伝えがあるのですね。
さてこの高橋一家は、実のところ、家族ばらばら。
いつも帰りが遅く、家の中では存在感のない晃一。
あてにならない夫、認知症になりかけの姑に不満いっぱいの史子。
周りの空気を読むことばかりに気を使い、そのくせ友達がいない梓美。
喘息の持病がある智也。ちょっと気が小さいけど、心はやさしい。
息子夫婦との同居を始めてから認知症になりかけている澄代。
ところがこの家に越してきてから、どんどん絆を取り戻していくのです。
座敷わらしが魔法を使うわけではありません。
座敷わらしはただそこにいるだけ。
周りの人たちが勝手に新しい気づきをして、家族の結束を強めていくのです。
この、内部をちょっと近代的に改装した古民家の様子がステキです。
あまりに広くて掃除は大変そうですけど。
・・・そしてやっぱり夜は怖そう・・・。
私は、この作品を宮崎アニメで見たいと思ってしまいました。
きっと飛び切り愛らしく、いたずらっぽくもある「座敷わらし」になるだろうなあ・・・。
話し好きで人の良い米子おばあさんの様子も目に浮かぶようです。
こんな風に、時々、これは絶対宮崎アニメ向き!と思える作品を見つけるんですが、実現したためしはありません・・・。
宮崎アニメで見たい小説。
皆さんにはありませんか?
満足度★★★★★