のぼうの城 和田 竜 小学館 このアイテムの詳細を見る |
今、ベストセラーとなっている歴史小説。
時は乱世。
天下統一を目指す秀吉の配下、石田三成の軍勢にも落ちなかった城、忍(おし)城。これはその総大将、成田長親の物語。
成田長親は周りの人々からは「のぼう様」と呼ばれています。
「のぼう」とは、すなわち「でくのぼう」の略。
武術もダメ、馬にも乗れない。
農作業は大好きなので田植えや麦踏を手伝おうとするけれど、
何しろ不器用なので農民たちにとっては迷惑でしかない。
手伝いを農民に断られ、しょんぼり落ちこんだりする、なんとも情けないお侍・・・。
しかし、人々はこの、のぼう様が大好きなんですね。
決して威張らず、何をやっても不器用、しかし、その善意だけは伝わる。
みなすごく親しみを感じてしまうのです。
また、その城を守る他の面々もまた、ユニーク。
彼らの会話が、もうこれまでのいかめしい歴史小説の枠を超え、
活き活きとかっこよい。
長親の穴を埋めるかのように彼らは頭が良く、そして強いのであります!
これがまた心地よい。
戦に巻き込まれたくないはずの農民たちもが、力を貸そうとやってくる。
石田三成の立てた作戦は水攻め。
長大な堤防をめぐらせ城を水没せしめようというもの。
人気だけがとりえのこの男は、果たしてどのように立ち向かうのか・・・!
戦国時代を生き抜く各地の武将たちも大変だったようですね。
誰の味方につき、誰を敵とするのか。
判断を誤れば、すなわち一族の滅亡。
だからこそいろいろなドラマがあって、
このあたりの歴史は様々な本やTVドラマになったりするわけです。
そんな中でもこの本は格別現代人の感覚にマッチし、テンポ良くユニークで面白い。
長親の幼馴染であり、またこの城の参謀的存在でもある丹波は思うのです。
こいつは、バカのフリをしているだけなのか、
それとも天然のバカなんだけど、たまたま言うことがハマっているだけなのか・・・。
彼にしても計り知れないのですが、結局読者にもわかりません。
バカを装うだけの利口さはない。
そのようには思えますが。
何はともあれ「将器」という意味では、確かにそれはあるのでしょう。
欲を言えばその辺、
つまり、のぼう様の本心を垣間見せるような部分がちょっとあると良いと思いました・・・。
次の作品もぜひ読みたい気がします。
満足度★★★★☆