楽に見える道こそ地雷だらけ
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大学を出たものの、未だ人生の方向性が定まらず、
アニーは公園でたまたまであったセレブ主婦に請われるまま、
ナニー(子守)を務めることになってしまった。
ニューヨークのアッパーイーストに住むセレブなX家。
ミセスXは毎日エステやら社会活動に忙しく、子どものことなどお構いなし。
ミスターXは仕事仕事でほとんど家にいない。・・・実のところ、浮気もお盛んのようで・・・。
セレブな高級アパートに住み込んで、子どもの世話をするだけで、給料もいい。
ルンルン気分でいたアニーでしたが・・・。
さてその一人息子5歳のグレイヤーは、わがままいっぱい。
おまけに、ミセスXは、雑用まで言いつけるので、アニーは振り回されっぱなし。
でも、グレイヤーは次第にアニーに打ち解け、寂しい本心をさらして、なついてくる。
また、毎日忙しげに出歩くミセスXは、夫にかまってもらえず、実は非常に孤独であることが見えてくるのですね。
もともと、人類学を専攻していたアニーなので、
はじめはこのセレブ一家を観察しているつもりだったのが、次第にのめりこんでいく。
皆があこがれるセレブな生活なのに、皆ちっとも幸せそうではない。
いくら生活が豊かでも、本当に必要なものは他にある。
格差が広がっている今、贅沢な悩みなんですけどね・・・。
作品中、そんなところをちょっぴり意識した部分があって、
アニーのナニー仲間が言うのです。
「私は自分の子どもを置き去りにして、他人の子どもの面倒を見ているのよ。」・・・と。
実際、ナニーをしているのは、英語も話せない、移民の女性が大変多いようです。
それで、生活の苦しさも知らない若いオンナノコが、趣味みたいにしてナニーをしているアニーをちょっぴり皮肉ったりもする。
セレブが遊び歩くのは、貧乏人のための救済措置なのか?
なんて、思えてきちゃいますね。
あ、でも、これはそういう社会問題をえぐる作品では全然ありませんので、ご心配なく。
でも、そういうことに少し、触れているのは良心的だとおもいます・・・。
スカーレット・ヨハンソンは、意外とこういう等身大の現代女性の役ってなかったですね。
すごくキュートでステキでした。
アニーが赤い傘につかまって空を飛ぶシーンがあるのですが、
あれはメリー・ポピンズを意識しているのでしょう。
現代版メリー・ポピンズというわけです。
黒じゃなく、赤い傘というのが、彼女に似合っています。
アメリカの自然史博物館のジオラマ風に、現代の生活風景を並べてみせるという斬新な映像にも惹かれました。
最後に、アニーは熊のぬいぐるみに仕込まれた隠し撮りカメラに向かって、
思いのすべてを吐き出します。
これが題名の由来。
原題は「ナニーの日記」となっていましたね。
ベストセラーになった原作本の題名は「ティファニーで子育てを」。
どうせなら、これにすればよかったのに。
やはりこの題名が一番おしゃれです。
アニーの親友リネットのセリフがよかった。
「楽に見える道こそ地雷だらけ」・・・肝に銘じたいと思います!
2007年/アメリカ/106分
監督・脚本:シャリ・スプリンガー・バーマン、ロバート・プルチーニ
出演:スカーレット・ヨハンソン、ローラ・リニー、アリシア・キーズ、クリス・エヴァンス、ポール・ジアマッティー
「私がクマにキレた理由」公式サイト