マンネリ打破にゃ、思い切ったメンバー交代が必要だ。野球やサッカーだけの話しじゃない。田んぼだって同じさ。
4人のメンバーで分担して作ってる小さな田んぼ7枚、今年は一部担当替えがあった。比較的小さな田を作っていたTさん、上の娘さんも海外から戻ったからもう少し大きな田で収量アップを目指したい、って。だったら、我が家で作っていた1枚と交換しましょ、ということになった。
これまでTさんが作ってきた田、何でも創意工夫のTさん、蛇腹ホース(洗濯機の排水ホース)を使って用水を取り入れるって斬新なアイディアを実践してくれた。水路のU字管に重石を投入して流れを止め、その下部からホースで水を田に引っ張るって方法だ。うーん、なるほど用水路と田とのの落差を利用した上手いやり方だ。これだと、上の田を気にせず、独自に水の出し入れができる。さすが、Tさん!今年はこの田を我が家が作る、と、なりゃこのT方式、踏襲するのが一番だな。
ただ、問題もあった。ホースが細いので、せっかくのダムに溜まった水を短時間に取水できないことと、流れてきたゴミで詰まることがちょくちょくあることだった。だったら、もう一工夫してあげようじゃないの。
細いホースの代わりに塩ビ管を利用する。これなら太さも選り取り見取り、適度な径のものを使えばいい。今回だったら、内径70mmあたりかな。水を止めるにはネジキャップがいる。水路の傾斜に合わせU字ジョインその他もいるな。予め考えた設計に合わせて、2mの直管2本、ネジキャプ1式、L字ジョイン2個、への字ジョイント1個、それと直管ジョイン1個。これと接着剤。たぶん、これでなんとかなるはずだ。
現場でしっかり測量?をしてから組み立てりゃいいのに、ざっと見ただけで適当にはめ込んでみた。そう、当然、上手く行きっこないさ。への字の開き具合が水路の傾斜に合わない。傾けたり、横にしたりしてどうにかここをしのぐ。次の難問は、この取水管をはめ込んだダム?をどう築くかってこと。Tさんは大きな角石と木片で上手に水を堰き止めていたが、今度はなんせ70mmのぶっとい塩ビ管だ。上を石で押さえだって、どうしたって、管の両側に大きな隙間ができてだだ漏れダムにしかならない。さて、この管の両側の隙間をどう埋めるか?
小さめの石を幾つも放り込む?うーん、水流で流されちまいそうだよな。間隙もできるし。四角い板の下部に管の入る穴を開けて、それをはめ込み前後を重石で押さえる?ダメだ!板が浮いちまう。うーん、こういうところに新企画の盲点が潜んでいたか。
かなりの水流にも耐え、しかも管の周囲をぴたりと塞ぐ、そんな上手い具合の隙間材があるか?あった、あったよ!土嚢だよ!これなら管にそって形を変えられるじゃないか!俺って、頭、いい!
これで、最大の難関は突破。さっ、接続して、どうだ、U字溝の壁を越えて田に水を落とせるか?ちょろちょろ水が、一気にポンプアップしたようにどっどとした水流に変わった。やったぜぇ!折からの雨水をたっぷり貯めて、水はどんどん田んぼに溜まっていく。これなら、数時間あれば、満水状態にできる。いつまでも冷や水かかりにしなくても済む。新工夫、大成功!
だが待てよ。どっどと入るだけじゃ上手くねえだろ。時にはちょろちょろ水だって欲しいじゃないか。いっつもこの大水量じゃ、しょっちゅう止めに来なくっちゃならん。夜通し出しておいたら、溢れるばかりだ。適度に入る仕組みはできんもんか?
なんか、ゆるい蓋とか、穴あきのキャップとかあればいいんじゃないか。そう言やぁ、塩ビ管の付属品に開閉型の蓋もあった気がする。が、もうこれ以上、金はかけたくない。買いにでかる手間ももう結構だ。なんとか手持ちのもので代用できないか?
ある!海苔の缶の蓋!!これを取水部にかぱっとはめりゃいい。その蓋に適当に穴開けておけば、お好み次第の水量が得られるわけじゃないか。さっそく、家に戻り、缶の蓋を探して釘で穴を開け、舞い戻って取水口へ。おおっ!お見事、全開放時の1/10程度の優しい水流が流れ出たじゃないか!俺って、頭、いい!!
これで、この田の水の駆け引きは自由自在、いい米取れるぞ、きっと。そうか、それじゃ、ここはモチ米にしよう。水が自由になるから、刈り取りが遅い晩生にもぴったりだ。
なっ、て、ことで、時にはメンバー交代で思考全開、ってことも大切なことなのさ。うーん、企業経営なんかにも役立つ教えじゃねえか?