もう、ほんと!嫌なんだよ。トラクターのアタッチメント交換。金出すから、だれかやってくれ、って投げ出したい気持ち、いっぱいなんだが、そんなこともできねえのに、農業なんかすんな!ってどやされそうで。仕方ねえ、やるっきゃねえよな、代掻き用ローターの付け替え。
まず、畑耕耘用のロータリーを外す。これは、まあ、小屋の入り口にどかっと下ろして、アームをピンから外すだけなので、ちっとばっかし置き位置がずれたところで、いいさ、いいさ、外せたんだから。問題は、代掻きローターを取り付けること。畑の一隅に1年間放置してあったローターのところに必要な器具を運ぶ。ローター用ユニバーサルジョイントに支持棒?だろ、器具を留める鋼鉄ピン類、それと油さし。おっと、金づち、必需品だった。何度も小屋との間を往復、この時点でかなり苛ついてくる。
さて、どっちから繋ぐんだったかな?トラクターに作業機械を取り付けるには、3点接続せにゃならん。動力を伝えるジョイントと油圧でアタッチメントを上下動させるアーム左右2本、それと機械を固定する支持棒?正式名称わからん、だ。
で、いつも迷うんだ、どれから接続するんだっけ?記録しておく、ってしない奴だから。うーん、たしか、アームかな?トラクターをぴったり取り付け位置に移動させるのに何十回と微調整の車庫入れを繰り返す。これも苦手!機械と直角につけらない。ええい、この辺でなんとか無理やりやっちまえ!無い力を振り絞ってアームの端に機械のピンを差し込む。よしっ。
次に支持棒をつなぐ、のだが、長さが足りない!目いっぱい伸ばしても20センチは不足だ。わかった、わかった。たしか、トラクター動かして、ローターの位置を変えたんだぞ。えーっと、ひっぱりゃ、距離が近づくんじゃないか?だ、だめだ!かえって、離れちまった。て、ことは、油圧で持ち上げんのか?あっ、い、いかん!ローターの鉄製カバーが後輪に食い込んだ!!上がりも下がりもしない。トラクター本体も動かない!し、しまった!支持棒が先だったんだ。
って、遅いよ、気が付くのが。もしかして、アームの取り付け位置を変えたら?ダメだ。支持棒とトラクターの間にも一つ部品入れるんだったか?やってみる、ち、違う!
ああ、どうしよう?ローター、タイヤを噛んだまま動かない。トラクターもローターに絡まれて動けない!だ、ダメだ、にっちもさっちもいかん!素人の、いや俺様の対応限界を超えた緊急事態だ。機械屋さんを呼ぶしかない。
電話、出ない!20分後にリダイヤル、出ない!さらに10分ごとに掛けるも、留守のまま。な、なんだよ、なんだよ、日曜だからか?農繁期、機械屋にお休みなんてねえだろ!もう、完全な八つ当たり状態。
どうする?明日は代掻きさんなねんだぜ。途方にくれつつ、トラクターの周囲をうろつくこと数十分。そうか、もし、機械屋が来たとして、この金縛り状態から抜け出すには何をする?そ、そりゃ、初めからやり直すってことしかないだろ。ピンを抜いて、ローターを外す。いや、落とす。で、一からやり直す。プロだって、それしか方法はないはずだ。だったら、俺様だって。
恐る恐るピンを抜き、アームを外す。宙づりのローターが落下!うへっ、大丈夫か?わからん、取り付けて回してみないことにゃ、ひん曲がったかどうかわからん。
今度は、支持棒を先に接続し、それから前進してローターの角度を変え、アームを差し込む。うーん、ここは何度やってもきつい、苦しい、厄介だ。渾身の力を振り絞ってはめ込み、シノーって言う先の尖った金具で無理やり穴を押し広げ、ピンがぁぁぁぁ、入った!あとは、ユニバーサルジョイントで動力をつないで、と。
さあ、どうかな?ローター、回るかな?うん?ちょっと音大きい気がするが、多分大丈夫だろう。最後に車輪の外側に水かき用鉄車輪、これが重い!取り付けて、ようやく、ようやく、ようやくすべて終了した。
もう、もう、なんもする気しない。昼飯も夕飯も作る気なし。ただ、呆然とビールを飲んで、悪戦苦闘の一日が終わった。