ステージおきたま

無農薬百姓33年
舞台作り続けて22年
がむしゃら走り6年
コントとランとご飯パンにうつつを抜かす老いの輝き

冬だけ読書人!

2018-12-28 08:56:29 | 暮らし

 知人がフェイスブックで呼び掛けてる、「あなたが今年一番心惹かれた本を教えてください。」だって。

 で、つらつら考えてみたんだが、さっぱり思い当たらない。心動かされた本、なんてあったか?まっ、大して読んじゃいないってこともあるが、机の上にはそこそこ読了済みの本が積まれている。ざっと見渡してみて、思い当たった。これ、ほとんど台本書きの資料として読んだものじゃないか。そりゃ、感動はしないわさ、なんか使える題材ないかって聞き込みデカの目で見回したものなんだから。

 それでも、たしかに、新しい発見がないわけじゃなかった。大正モダンをすっ飛んでた本荘幽蘭って女を知ったこととか、吉原から足抜けした遊女の書いた手記とか、魔女の宅急便とか、これおおらかなナンセンス本だって気付いたり、それなりに読書体験は豊かだった。でもなぁ、感動とか考えされられた、てのはないんだよなぁ。

 それでもなんかあんだろ?って記憶の糸をたぐり寄せてみたら、あった、あった、2冊もあった。

 一冊は、中西礼の『長崎ぶらぶら節』。古っ!たしかに古い。平成11年初刷りだもの。アマゾンの古本屋で買ったのか?って?違うね、フレンドリープラザ遅筆堂で毎冬恒例の、「もってけ!ただだぜ、10冊以内!」(もちろん、そんな名前じゃない)って古本コーナーからかっさらって来た本なんだ。冬ごもりの読書月間はこの時もらった本で大いに楽しませてもらった。音曲に秀でた芸者の一代記、地域と時代をしっかり踏みしめてグイグイと引きずり込んでくれた。

 もう一冊は、カズオイシグロの『忘れられた巨人』。これは正規の値段で買った。10冊に1冊くらいはこういうこともある。どうしてこの本を読もうと思ったのか、そこがも一つ思い出せないのだが、新聞の読書欄で引っ掛かったのかもしれない。カズオイシグロは代表作と言われる『わたしを忘れないで』があまりに馬鹿々々しくて、臓器提供用人体の話しなら、おいらの書いた台本『Motherless Child』の方がましだぜ、なんて不遜な思いを抱いていたので、へん!ってそっぽ向いていたんだが、ノーベル文学賞もらうほどの人だもの、あるいはもっと素晴らしいもの書いてるのかもしれない、っ手に取ってみたってことだった。中世騎士の遍歴物語だが、随所に今の時代に通ずる深い卓見があり、ストーリーも手に汗握るサスペンスものに成っていて、これはもう一気読みだった。詳しくは、このブログに別稿があるので読んで欲しい。

 と、感動の名著2冊を思いついて、さらにその共通項にも思い至った。どっちも冬の間に読んでたんだよ。そうか、そういうことなんだ。自分の勝手気ままに本を手に取る、なんてこと、冬の1,2か月しかできないってそんな知的に貧しい暮らしを続けているってことなんだぜ。まったく、もう!2月になりゃ新しい台本書きが始まるし、書き上げた頃からは農作業も本格化してくる。もちろん、舞台の稽古にも出掛けにゃならん。公演と公演の合間、役者たちは休養期間も、こちとら次回作に呻いているってわけだ。台本準備・執筆、稽古・公演、台本準備・執筆、稽古・公演、これ繰り返して、気付けばもうクリスマス!ってその間、農作業やら薪割りなど暮らしのあれこれ。教養身に付かなかったわけだぜ。書く台本に深みがないわけだぜ。この忙しさじゃ。

 でも、そいつが、自分で選んだ生き方なんだ。本よりパン作り!読書より農作業!思索より薪割り!勉強不足の分、暮らしを楽しむあの手この手は身につけられた。そう、言い聞かせてつつ、さっ、数少ない読書の機会・1月を大切にしようぜ。

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