自然科学の最先端と色即是空 平成25年12月23日
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科学と一口に書いても、自然科学、人文科学と大きく
分かれ、扱われる範囲は多岐にわたるのは周知のと
おり。
生命を扱う科学が医学であると定義するならば、その
生命科学は西洋医学が主流を占めているのも周知の
事実である。
ところで、その西洋医学に最も影響を与えている科学
といえば、自然科学だろう。
物理・化学・生物を 理科 という科目でくくるが、
それらを扱う領域が自然科学というようだ。
その自然科学で重視されることといえば、”事象を
客観的に観察して”得られた情報を ”分析”すること、
次に、言語や数式による仮説をたてて、”実験で実証”
しながら“一般的法則”を発見していく過程だろう。
近年の、精密な観測機器の発達にともない、我々の
学生時代で習った自然科学の範囲は今や、拡大して、
素粒子など超ミクロの世界から無限大の宇宙まで、
拡がっている。
この西洋的科学と対照的な、東洋的一元論を踏まえて、
自然科学の最先端といえる、量子論を展開させて
いくとどういう結果が引き出されるのだろうか?~
というのが今日のお話。
先回、カプラ博士の量子論のところでもご紹介したが、
東洋的一元論で述べる真実と科学の法則が、限りなく
一致しそうだというのが、今日のテーマだ。
長堀教授は 著書の中で、“摩訶不思議なミクロの世界”
と称して以下のような次の論を展開させている。
“私が高校時代に物理で習った原子の構成はラザフォード
の古典的なモデルに準じ、’中心に原子核があり、その
周囲を電子が衛星のように回る’というものでしたが、
これをとことん突き詰めていけば、’原子はほとんどが
空間になってしまう’と言ったら信じていただけるで
しょうか?
当時の参考書に ’中心にある原子核を野球のボールに
喩えると、原子核よりも小さな電子が周囲する軌道
は 野球場の外周に匹敵するほど離れている。’と
説明されていたので、驚いたのはもちろんですが、
と同時に なんでそんなにスカスカな原子で固い物体
ができるのだろうという疑問が、当然のように湧いてき
たのでした。”
さて、現在ではそれがどのように観察されて実質が
明らかになっているかというと・・・
”かつては、原始の質料の大部分を占める原子核は、
原子全体の10満分の壱と言われていたのですが、
養子、クウォーク、へと素粒子がさらに詳細に分析
されるに従い、原子核の実質はますます、微小化され
現在では 原子全体の一兆分の一にしかならないと
まで言われている”
さらに、たびたびブログでも登場する、フリチョフ・
カプラ氏は ”原子をローマのサンピエトロ寺院のドーム
(直径34m、周囲100m)に置き換えると、中心の
原子核は塩粒程度であり、周りを巡る電子は 埃(ほこり)
にしか過ぎない”と言い切っている。
こうした空間の中において、物質が生成されるすると
したら、まさに、色即是空 の 空(間)=眞(空)
の中に 色[物質)が 存在すると説く仏教の教えの
真髄は、実に科学的ということもできるのではないか?
アインシュタインは 公式 E=mc 2 (E=エネルギー、
m=質料、c=光速)を発表した。
それは、”すべての質料(電子のような埃のような小さな
ものでも)はすべて、エネルギーに変換されることを
示した。”ことであり、スカスカの空間を持つ原子が
どのように固い物体を構成しているかという疑問に対して、
次のように言う。
”素粒子は、位置と運動量を同時に知ることはできず、
粒子は確率波としてあらわされるという 不確性原理
が当てはまる”。
そのことを 長堀博士は ”思い切った比喩を使えば、
電子の激しい’回転’が’あやふやな原子’をあたかも剛体の
ようにしている”と 言い換えて表現する。
回転というエネルギーに変化させること広大な空間に
物質のような剛体を生み出す。だから、”空が実は物質
である”~という解釈が成り立つというのだ。
実際 最新科学において、”(非情な力と勢いを持った]
竜巻と(静かで無のような)空気とが、互いに分かち
がたい存在であるのと同様、超ミクロの世界では、
エネルギーである波動が’激しく振動し’、固体と考えら
れてきた粒子と分かちがたい状態を保っている”
と量子論で説明されるようになった。
“われわれが普段目にする世界からは全く想像が
つかない世界ですが、このエネルギーに満ちあふれた
真空から粒子が創生され、さらには、その粒子が消滅
して再び 波動であるエネルギーに戻る場、こうした
エネルギーと粒子が互いに渾然一体となった極微の場
を、‘量子真空’と呼んでいる“
と長堀博士は記している。さらに、ノーベル物理学賞
を受賞した量子物理学者ヴェルナー・ハイゼンベル
グは次のように語る。
“原子や素粒子そのものは、形を持っていません。
それらは、物とか事実というより、潜在性や可能性の
世界を形成しているのです。“
もし、この量子論が最前線の現代自然科学として医学界
に影響を与え始めてくれば、第一に身体は個体でがちがち
に剛体物質であること、身体は物質でできているという
概念、が 覆されることだろう。
これまでの物質という観念が、実は波動体としての
ェネルギー体であるとういことが もっと明確に理解
されると、これまでの医学の常識が崩れ、“医学の
よりどころを失ったと言っても過言でありません“
と長堀医師をして言わしめる影響が出てくるかも
しれない。
ここで、般若心経を見ると、色即是空=物質はこれ、
空なり。しかし、物質は 空と言い切って空中には
物質はない、という。
空中無色無受想行識空=空の中(間)には 物質は
無い、感覚器官から受ける想い、行い、識別なども
無い~と矛盾めいた説き方をしている。
空(実存のエネルギー)、そのエネルギーの間に
位置する空間に モノがあるように見えるがほんとう
に 存在しているのではないという意味として捉え
られるだろう。
まさに私たちの肉体も空間だらけの中にある。
なぜなら、私たちの体は本来、隙間だらけなのだから。
こんな風に考えていくと、般若心経の一元論は、科学
の最先端の観方と重なり合うような気がしてならない。
2012年7月にピーター・ヒッグス博士は ヒッグス粒子
の存在を提唱して翌年のノーベル物理学賞を受けた。
これは素粒子を加速して衝突させ、小規模のビッグバン
を創りだして解明される。
欧州原子核研究所が 大型のハドロン加速器を使い
実験し“宇宙の起源に迫る素粒子”として注目された。
エネルギーと粒子(物質)と渾然一体になっている
極微の世界が、さらに無限大に広がってこの宇宙を創
りあげているという。
極微の世界を構成するエネルギーも 無限大の宇宙を
構成するエネルギーも同質であるから、量子の世界
の探求が宇宙の探究にと繋がるというのだ。
私たちは “宇宙的想念”とか “宇宙の意思”とか、
“肉体は小宇宙”という言葉を今まで直観的に使って
いたが、科学的根拠がそれらの言葉の裏にあること
がわかってきた。
つまり、私たちが自然とつながり、宇宙とつらなって
いるということ。
想念がエネルギー態として存在し、素粒子が或る
ときは波動のエネルギー体にと姿を変え、世界の
物質を生み出しているということ。
人間の体を構成する最微粒子も、宇宙ができたとき
の最微粒子も 同じ微粒子の動きから始まった。
こうして考えていくと、宇宙の意思を 私たちの体
は細胞レベルで知っているということになる。
調和、完全、進化、回転、前進、深淵、沈黙、無限
というような言葉で宇宙を描写してきた詩人の直観は
空想だけではないだろう。
私たちが宇宙の意思の一部であること、宇宙と響き
あう存在ゆえの表現なのだろう。
まさに、私たちの身体も心も 小宇宙に匹敵するほど
壮大無辺のものなのかもしれない。
長堀 優(ゆたか)氏について)
日本外科学指導医、日本消化器外科科学指導医、
日本がん治療認定医
機構癌治療認定、財団法人船員保険会横浜船員保険病院
副院長・外科部長
参考図書)”見えない世界の科学が医療を変える”
長堀 優著 でくのぼう出版 2013年
”タオ自然学” フリチョフ・カプラ著 工作舎 1979