局の道楽日記

食道楽、着道楽、読書道楽  etc
生活色々を楽しんで暮らしている日々の記録です

2010-04-22 22:16:58 | 着る
今週の着物の会の講義は 紫についてだった。

前回のに引き続き 色にまつわる文化史である。

青って言うのは一般的に好まれやすい色だと思うけど、紫というのは好みが分かれる色だと思う。

イメージとしては 神秘的 高貴 都会的 という+のイメージのかたわら ちょっと不気味でエロチック、ケバケバしいイメージもある。

古くは前漢時代の武帝が愛した色であり、エジプト女王クレオパトラも自分の乗る船の帆を貝の分泌液で染まる紫に染めたそうである。
日本では聖徳太子の定めた冠位十二階で 一番高貴な色とされている。
平安時代にも一位の者(天皇関係者)だけに許された いわゆる禁色となる。

禁色といえば三島由紀夫のホモ小説が有名で、私は女子高生時代怖いもの見たさって感じでワクワクしながら読んだものだが、確か新潮文庫の三島由紀夫の背表紙の色はみんなオレンジであった。あの小説の背表紙は特別に紫にしたらよろしいかと思ったわ。

って話がそれた。

代表的な染料は 植物染料の紫根 貝の分泌液である貝紫 また 紫根染がぜいたく品として禁じられた時代(江戸時代)には蘇芳と藍をかけて染めた似せ紫という安価な染めの技法も考え出されたそうな。

そして世界初の人造染料はマラリアの特効薬であるキニーネを作る際にコールタールから作られたのがモーブと命名された紫の染料である。発明した科学者パーキンはこの染料の工場生産も始めたそうだ。  なかなかしたたかな科学者ですね。
 
紫系統の日本の伝統色をあげると

本紫(古代紫) 紫根で染めた紫(やや赤味がかっている)

似紫 蘇芳と藍をかけて染めた紫 江戸時代御高祖頭巾 病鉢巻などにつかわれた

濃色 濃い紫 平安時代の天皇の色

薄色 浅紫  これは一般的にも許された

滅紫 灰色を帯びた紫    (このように色という名称が紫につかわれた 濃 薄 灰)

京紫 赤味の紫

江戸紫 桔梗の色 助六の鉢巻の色

葡萄色(えびいろ) 山葡萄の色

藤紫 濃い目の藤色 大正時代に流行ったらしい


先日観劇した助六でも国侍利金太は緑色の衣装だった。田舎侍とか地方の大名とか田舎者とされる登場人物は緑の衣装を着て、伊達オトコ助六のシンボルの鉢巻は江戸紫。やはりナチュラルで癒される色の代表格の緑はともすればダサいイメージがあり、ちょっと使うのに勇気がいって気難しい色の紫は都会っぽい色の代表なのであろう。

そう言えばおととしくらいだったか、妙に紫が流行った年があって私も何枚かセーターやカットソーなどを購入したのだけど、合わせようによっては面白い組み合わせができたと思う。普段はベージュとかアースカラーが多い私のコーディネートだけどいい加減飽きてきたのである。
その経験から今年の冬の最終バーゲンでは真紫のコートを買って(7割引きだったもんで)着ていると珍しい色ね、似合うね と案外褒められてうれしかった。(1シーズンで毛玉だらけになったが)

最後に文学にみる紫 今回は先生は主に和歌をあげられた

* あかねさす紫野ゆき標野ゆき
  野守は見ずや君が袖ふる  額田王

* 紫の匂える妹を憎くあらば
  人妻ゆえに吾恋めやも   大海の皇子

ご存知のように天智天皇のツマであった額田王がオットの弟の元彼大海皇子と交わした歌である。まったく古代日本人っておおらかだったのね。人妻ゆえに~恋めやもって 兄ちゃんとはいえ天皇の妻に言っちゃって良かったわけね。

源氏物語では 光の君はこんなこと歌ってる

* 手に摘みて いつしかも見む紫の
   根にかよひける野辺の若紫

手に摘みて見むって いつしか我が手に摘んでみたいってのが若紫
根にかよひけるってのは 義母の藤壺と紫の上が姻戚関係にあるということの例え。
紫式部(あっこれも紫だ)の作り上げた人格だけど よく考えるとインモラルでロリコンでしょうもないオトコだと思う(魅力的ではあるが)

* 濃く深きわが帯揚げの紅を
   その夜のやみは紫と見せし  与謝野晶子

これは鉄幹と初めて契ったあとの歌だそうだ。鉄幹と略奪愛で後に結婚したんじゃなかったっけ? これも読みようによっては情熱的で意味深な恋の歌。この二人の末裔が立ち枯れじゃない立ち上がれ日本の人なのよね~


そして 清少納言はきっぱり主張する

* 花も糸も紙も すべてなにもなにも 紫なるものはめでたくこそあれ

また話は飛ぶけど 紫を染める代表的染料紫草の根 紫根は染料としてとても強いものらしい。根を袋に入れておくと周りのものを紫に染める。紫草が生える土までも紫に染めるらしい。
そこで 縁の色として紫のことを ゆかり と読むことがあるそうだ。

ゆかりっていう紫のふりかけもあるし 紫と書いてゆかりと呼ぶ女の子もいますよね。

ちょっと読みにくい名前ではあるけど 奥ゆかしくてよいではないか・・・

同じ読みにくい名前でも今の若いカップルがわが子につける名前 例えば 天使と書いてアンジュと呼ばせるのとは路線が違いますものね。













コメント (4)
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