水持先生の顧問日誌

我が部の顧問、水持先生による日誌です。

部活紹介

2010年04月08日 | 日々のあれこれ
 午前中に始業式とホームルーム、そして午後は、新入生対象の部活紹介で、ルパンを演奏する。正直大丈夫だろうかと不安になった部分もあるにはあるのだが、ビジュアル的には、こんなに大勢いるんだという好意的な驚きをもって受け止められていたと思う。そのせいか、放課後は多数の見学者が訪れていた。ありがたいことである。
 3Fの書道室の前に、さだまさし「風に立つライオン」の歌詞をしたため額に入れて飾ってあるのに気づいた。顧問のかわかみ先生自らの手による作品だ。
 読んでいたら突然こみあげるものあって、さだまさしの歌そのものでは過去何回となく泣いてるので、きっと書の力に心うごかされてしまったのだろう。みごとな作品だった。


 ~ 風に立つライオン ~

 突然の手紙には驚いたけど嬉しかった
 何より君が僕を怨んでいなかったということが
 これから此処で過ごす僕の毎日の大切な
 よりどころになります  ありがとう  ありがとう

 ナイロビで迎える三度目の四月が来て今更
 千鳥ヶ渕で昔君と見た夜桜が恋しくて
 故郷ではなく東京の桜が恋しいということが
 自分でもおかしい位です おかしい位です

 三年の間あちらこちらを廻り
 その感動を君と分けたいと思ったことが沢山ありました

 ビクトリア湖の朝焼け 100万羽のフラミンゴが
 一斉に翔び発つ時 暗くなる空や
 キリマンジャロの白い雪 草原の象のシルエット
 何より僕の患者たちの 瞳の美しさ

 この偉大な自然の中で病と向かい合えば
 神様について ヒトについて 考えるものですね
 やはり僕たちの国は残念だけれど何か
 大切な処で道を間違えたようですね

 去年のクリスマスは国境近くの村で過ごしました
 こんな処にもサンタクロースはやって来ます 去年は僕でした
 闇の中ではじける彼等の祈りと激しいリズム
 南十字星 満天の星 そして天の川

 診療所に集まる人々は病気だけれど
 少なくとも心は僕より健康なのですよ
 僕はやはり来てよかったと思っています
 辛くないと言えば嘘になるけど しあわせです

 あなたや日本を捨てた訳ではなく
 僕は「現在」を生きることに思い上がりたくないのです

 空を切り裂いて落下する滝のように
 僕はよどみない生命を生きたい
 キリマンジャロの白い雪 それを支える紺碧の空
 僕は風に向かって立つライオンでありたい

 くれぐれも皆さんによろしく伝えて下さい
 最后になりましたが あなたの幸福を
 心から遠くから いつも祈っています
 おめでとう  さよなら


 唄いたいなあ、ひさしぶりに。
 しかし、よく出来た作品だ。さだまさしさん(思わず師匠と書きそうになった)の友人である、柴田医師の実体験に基づいて作られた楽曲である。
 この曲は、中学校の道徳授業の資料として用いられていることもあるようで、いくつかのサイトでその指導案をチラ見してみたら、同じ教員として授業者に成り代わり師匠におわびしようかなという気持ちになった。
 
 この人生を、ある指導案(福岡県の中学校)では「つらいことを乗り越えて」「理想を実現し」た人生ととらえている。
 「真理を愛し、真実を求め、理想の実現を目指して自己の人生を切り拓いていく」ことを教える教材として扱われているのだ。
 学校の先生というのは、なぜ文学を道徳にしてしまうのだろう。
 この歌を一回聴けば、歌詞を一読すれば、小説や映画のように、ひとつの人生がうかびあがってくる。
 そこにあるのは、困難を乗り越えて夢を実現した男のさわやかな前向きさだろうか。
 別の人との結婚が決まったことを知らせる手紙をアフリカに送った彼女の側から見れば、この主人公は「自分を捨てて自分のやりたいことを選んだ男」である。
 夢を追う男。
 そんな男をひたすら支え続け、あたしはどんな目にあってもいい、あなたを信じ続けると唄うのは演歌の方向性だ。
 信念に生きる男はいえばかっこいいが、まわりが迷惑をしている場合だって現実にはたくさんある。
 アフリカで多くの人の命を救いたい。
 崇高な使命である。
 では、なぜアフリカなのか。
 もしそう問われたなら、この歌のモデルになった柴田医師にも、ほんとうのところは説明できないのではないか。
 説明できないほどの思いに突き動かされて自分のやりたい道を突き進める人は幸せだ。
 その道は、必ずしもすべての人を幸せにするとは限らない。
 人生とは、そんなに思うようになるものではない。
 だからこそ人生はせつなく、しかし愛おしく、それを描くのが文学のはずで、この歌を聴いて涙を流す人は、そんな文学チックなところに心動かされるのだと思うのだが、どうだろう。
コメント
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