3学年だより№39
卒業おめでとうございます。
この三年間が大変充実していて満足感でいっぱいの人、不本意な気分のまま今日を迎えている人、なんとなく過ごしてしまった人、いろいろだろうと思う。
どんな三年間であっても、これからの過ごし方次第で、三年間の意味は変わる。
過去とは客観的に動かし難いものとして存在するものではなく、現在の自分がどう受け止めるかで、その意味や価値が変わってくる(というような文章を現代文で学んできたはずだ)。
そして過去の価値を高めるためには、まずすべてを他の誰のせいでもない、自分に起こったこととして受け止めることが大事だ。
~ たくさんの出会いや 何気ない出来事が 大切なメッセージ 届けてくれる
みんなで笑い合う たわいない毎日も ひざを抱えて泣いた ひとりの夜も
そうやって僕らは知らない間に 少しずつ大人になっていく
キラキラ光る 夢はいつでも 自分を超える力をくれる
いらないものは何一つない だから信じて どこまでもいけるはずさ
(植村花菜「メッセージ」) ~
今日は、きっと、いろんな人から「卒業おめでとう」と祝福されるだろう。
聞いてるうち、高校を卒業するだけで何かすごいことをしたような気分になる可能性がある。
ただし冷静に考えたならば、そんなに大層なことはしていないという見方もできないことはない。
毎朝おうちの人に起こしてもらい、ご飯たべさせてもらって、バスに乗せてもらって、話聞いて、寝て…。衣食住は当然のように用意され、遅刻をくり返してもクビにならない暮らし。
だから本当に正直に言うと、みなさんに脳天気に「おめでとう」という気分になれない部分もあるのだ。どう考えても、これからの人生の方が大変だから。
ずいぶん前に進路講演会にお招きした大月隆寛先生(民俗学)が、こうおっしゃっていた。
「偏差値の高いヤツには責任がある」
どういう文脈だったのかは今忘れているのだが、「人の上に立つ可能性をもつ人間は、その能力を自分以外の人のために役立ててなければならない」という意味ではなかったかと思う。
みなさんは、「偏差値が高い」側の人間だ。
「いやあ、あんまり結果出なかったんですよ」という人も多いだろうが、そういうことではない。 同学年の日本人の中で、みんなはどういう位置を生きているのか、ということだ。
現時点で希望がどれほど叶っているかどうかは別にして、この一年みんなは自分の目標に向かって努力させてもらった。
複数の大学に入学金を納めている人もいるだろうし、浪人して再チャレンジを許されている人もいるだろう。
それなりの大学進学を果たせたならば、その先、それなりの会社に入れる可能性も、公務員としての働き場を手に入れられる可能性も、中学校時代の同級生と比べたら高いだろう。
将来、社会的地位が高いと言われる職業につける可能性が高い。
3学年だより№40
ただし、社会的地位の高さとは、職業ブランドや、年収や、人脈の華やかさで担保されるものではない。
どれだけ自分以外の人のために役に立っているかということなのだ。
大人として申し訳ないが、このことをわかっていない大人が今の日本にはたくさんいる。
無意味に高偏差値な人間が日本にこんなにいたのかと愕然とする思いを抱くこともある。
震災から一年経って、そうでなくてさえ世界的に経済状況が悪化しているにもかかわらず、我が身の既得権益を守ることだけを第一に考える大人たちがどれだけ多いか、みなさんも薄々感じていることだろう。
みんなには、できることなら、社会的地位の高い職業についてほしい。権力を手に入れてほしい。
そして、その力を本来の目的のために発揮して、世のため人のために働いてほしいと切に願う。
それこそが生き甲斐だと感じられるナイスガイになれれば、魅力的な女性も自然と身近にいるようになるだろう。
~ 時には迷ったり 挫けそうになったり 上手くいかないことも よくあるけれど
間違った道を進みそうな時は いつも君が気づかせてくれた
キラキラ光る 夢が僕らに 助け合うこと教えてくれる
一人じゃ出来ないことがあっても 心配ないよ 二人なら大丈夫さ
キラキラ光る 夢はいつでも 自分を超える力をくれる
いらないものは 何一つない だから信じて どこまでもいこう
僕らが出会うもの全て 明日へと続くメッセージ ~
でも、みんなだったら、きっとだいじょうぶだかな。
素直で、明るく、元気で、気合いがあれば、たいがいのことは乗り越えられるから。
こうして生きて3年間過ごせたことはほんとにすばらしい。
われわれ教員も、命を長らえつつ一緒に過ごせたことを感謝したい。楽しかったです。
とにかくみんなは、自分で稼いで自分で喰っていけるようになるまでは、まだまだ一人前ではないということを忘れずに、感謝の気持ちを忘れず、いろいろなことにチャレンジしてほしい。
失敗しても、恥ずかしい思いをしても、命まではとられないのだから。