さらに昨日、松岡修造『人生を強く生きる83の言葉』も手にとってみた。
「この一球は絶対無二の一球なり」
てっきり宗方コーチのオリジナルかと思っていたが、日本のテニスの草分け的存在である福田雅之助氏の詞だと知った。松岡氏がウィンブルドンでベスト8に入ったとき、この詞を何度も叫んだと言う。
ここで「絶対無二の一球」がそんなに何度もあるのだろうか、という素朴な疑問がうかぶ。
冷静に見るとよくわからない言葉もある。
「大丈夫、きみは太陽だから」
「大丈夫。大丈夫って文字には、全部に人って文字が入ってるんだよ」
「今日からおまえは富士山だ」「みんな竹になろうよ」 …
またくすくす笑いながらとりあえず立ち読みし続ける。
「心の底から好きなことに本気で取り組めるなら、それは幸せ」
「何かができない理由は、年齢じゃない」
「予想外の人生になっても、そのとき、幸せだったら、いいんじゃないかな」 … 。
やっぱ、買ってじっくり読もう。
『偏差値70の野球部』『宇宙小説』と手に持って並んだレジ待ちの列で読んでたら、ちょっと胸があつくなってきた。
「上海見てみろ、上海になってみろ」
「上を見ろ! 上には空と星だけだ」
突然叫ばれてもきょとんとしてしまう言葉に見えるが、でも試合の苦しいときに、修造氏にあのいきおいで言われたら、「ほんとだ!」と目の前の霧がはれるかもしれない。
言葉の力は論理だけではない面もある。
何年か前、出口汪先生の「現代文は現代を論じた文章です」という一文を読んだ瞬間に、現代文で何を教えたらいいか、すうっとわかった気がした経験がある。
「卒業式に先生がかけてくれた言葉、今も大事にしてます」というはがきをOBからもらったことがあって、でもその時には、その子になんて言ったか、自分ではすっかり忘れていた。
誰のどの言葉が、そのあとの人生の支えとなるかわからない。
言葉をかけ続けるのは、教員の一番大事な仕事かもしれない。