別マ6月号では、イケメンすな(砂川くん)の比重がますます小さくなっていく。
コミック1巻を読んだあとは、バディもので続いていくのかなと思った。
イケメンと豪傑のコンビが、高校でおこるいろいろな問題を解決していくような展開で。
もしくは、少女漫画らしく、三角関係の方面にすすんでいく可能性もあるかと思った。
今は猛男一途の大和さんだが、猛男がたとえば何かで忙しくなって、うまくコミュニケーションできなくなって、すなに相談してるうちに惹かれてしまうみたいな、ありがちな流れ。
それから、いつか猛男と大和さんがチューしたりする展開もあるのかななんて想像もした。
ああ、自分の不純さが情けない。
自分の小ささが腹立たしい。
そんな程度のお話を書こうとしてるわけがないではないか。
そうしたいなら、剛田猛男なんてストレートすぎる名前をつけるわけがないではない。
彼女は大和凜子だし。凜とたたずむ大和撫子だ。(でも「砂川」ってどこから?)
今月は、3年の先輩から、一ヶ月だけ柔道部員になってほしいと頼まれるところからはじまる。
ていうか、「頼む」と先輩が頭を下げた時点で、猛男は「わかりました」と応えている。
すなが「用件聞いてないじゃん」というと、先輩に頭下げられて断る可能性はないと応じる猛男。
丈夫だ。
「大和さんとしばらくあえないかもしれないよ」とすなが言う。
「うちは平気。たけお君、がんばって!」という大和。
大和撫子だ。
試合の日、すなと大和が応援にくる。
対戦校には、小学校のとき町の道場で競い合ったライバルがいた。
高校に入ってからは全国大会にも出場している。
彼女連れできた猛男にこう告げる。
「昔はおまえに勝てなかったが、いまはおれの方が強い。彼女をつくってチャラチャラしてるやつには負けるはずがない」。
猛男は「彼女はいいぞ」と答える。まったく動じることはない。
試合が始まる。猛男の大きな構えには、揺るぎない自信と、決してあとにひかない強さがあった。
それは、たんに試合に勝つということへの自信や執念ではない。
先輩の信頼に応え、応援してくれた大和、すなの気持ちにこたえたいという想いだ。
自分を信じてくれる人を絶対に裏切らない、たとえ腕がおれても、命を失ってでも大切なものを守りきるという意志だ。
自分が勝っていいかっこしたいとか、いい気分になりたいなどと言う利己の願いはいっさいない。
そこにあるのは完全なる利他。
それを人は愛とよぶかもしれない。
それを人は力とよぶかもしれない。
「強さとはなんだ」
猛男が自問する。
組み手争いを制するや豪快に一本勝ちをおさめてさらに自問する。
「強さとはなんだ」
そして言う。
「おれはどこまでも大きくなりたい」と。
かつて業田良家が『自虐の詩』で「生きるとは何だ」と問うた。
『俺物語』は、同じスケールに発展していこうとしている。
「高校教師なら読むべきだ」などのレベルの作品ではない。
すべての日本人が、韋編三絶、熟読玩味して、猛男のハートを感じるべきだ。
生きる指針を失いかけているわれわれに与えられた天啓、一筋の光だ。