試験三日目は開始を1時間遅らせて、金環食を見やすくした。
教員は通常どおりの勤務だが、7時過ぎに学校につくと、いつもその時間に来てない人もけっこう来てて、体育館と校舎の間にアウトドア用のイスを置いている方までいる。
みんなメガネ用意してるし。どんだけ盛り上がっているのかと思いながら、自分もZOFFでもらった観測用のメガネを取り出した。どちらかというとこれがほしくてZOFFで黒縁眼鏡一つ作ってしまった。
太陽がかけるにつれて暗くなっていくのが、なんかすごい。
7時半過ぎには、ほんとに絵に描いたようにリングができあがる。
チャリではやばやと登校して、渡り廊下で観測している生徒諸君が拍手をしている。
あとで知ったが、雲がかかって数秒しか見えなかったところも多かったようだ。
埼玉県はずいぶん恵まれた。人生最初で最後の体験ができてよかった。
先週出かけた劇団子「恋するロビンソン」は、「かぐや姫の里」と呼ばれる日本の一地方を舞台にしたお芝居だった。
その山里には古くからかぐや姫伝説が言い伝えられ、観光資源にもなっていたが、今は観光客も減り、過疎化もすすんでいる。
その村に、数年前にある製薬会社の研究所が建設された。
その研究所から流れる排水への違和感や、薬の治験にためそこに寝泊まりする人たちの奇行を目にしたりし、村人は不審の念をいだきながらも、村の税収にはかえられないと目をつむっている。
あるとき、治験に来ている若者の一人が、かぐや姫をほんとうに見たと騒ぎ出す。
一方、40年前にその村を訪れていたある旅の一座の様子が描かれる。
一座を離れて自由になりたい、都会暮らしをしたいと言う若い男の役者さん。
座の一番人気の女優さんと恋におちている。
二人は一緒に逃げようとするが、女優さんは世話になった親方一座を捨てるわけにはいかないと悩む。
そんなとき、一座に起こった悲劇。
過去と現在が一つにつながる最後のシーンでは、空にうかびあがった金環食のリングが重要な役割を果たしていた。
二時間のお芝居を3本かけるぐらいの内容を、笑いをとりながら感動的にまとめていくのは、さすが劇団子さんだと感じた。
数十年に一度しかない金環食。
たまたま太陽と月とが見た目が同じくらいに見える距離感のところに、たまたま生命体が存在してて、観測メガネを手にしてきゃあきゃあ言っている。
これほどの奇跡は、よく考えるとあり得ないことのような気がする。