剛田猛男(ごうだたけお)、集英高校1年生。身長推定2m、体重推定120kg。柔道部。
砂川誠(すながわまこと)、猛男の隣人。3歳の頃からの幼なじみ。誰もが認めるイケメン。
話題のマンガ『俺物語』の中心人物だ。
この二人が描かれたとき、女子はやはりイケメンとブサメンという対立を見るだろうか。
第一印象はまちがいなくそうだろう。
でも男子はちがう。たぶん。
この二人の絵を見たら、もしくはそういう二人連れを実際に目にしたなら、イケメン・ブサメンという対立軸よりも、ナヨナヨ系とガッチリ系という見方になるんじゃないだろうか。
物理的にナヨじゃなくてもガッチリじゃなくてもいいのだ。
男子を二分化しようとするとき、イケメンかどうかの度合いが占める比率はそんなに高くない。
むしろ、どれくらい押しが強いか、身体能力が高そうかの方が上位にくる可能性が高い。
もっといえばケンカが強そうかどうか。
もちろんこれも、物理的にほんとに強いかどうかはどうでもよくて、その人のもつ雰囲気の話なのだ。
そのへんが、男子が男子を見るのと、女子から男子をみるときの違いになるような気がする。
『俺物語』でも、そのへんはうまくふまえられていて、女の子がぱっと見てちやほやするのは、当然砂川くん通称「すな」の方だ。
しかし、猛男(このいかにもなネーミングはストレートすぎるけど)は、男子からやたら人気があり、慕われている。
もちろん身体能力の高さのうえに、性格のよさがあるのは言うまでもない。
「別マ」に載っているマンガだけど、男子(おれのこと)が読んで心から感動しているのは、そういうベースがあるからだろう。
幼なじみの猛男とすなが二人でいて、そこに女の子が登場すると、必ずすなを好きになる。
それくらいかっこいいのだ。
もし映画化するなら、佐藤健くんにやってほしいなあ。
すなに告白する女子はたくさんいたが、どの子も猛男の悪口を言ったという理由で、断られている。
ある日、電車で痴漢にあった女子高生の大和凜子を猛男が助ける。
大和さんは、猛男に一目惚れしアピールするのだが、猛男は自分にそうやって接触してくるのは、連れのすなに対する好意だと信じて疑わない。
過去の様々な事例がそうであったから。
大和の本当の気持ちに早々と気付いていたすなは、そんな二人を結びつけさせ、猛男に春が来たというお話が、コミック『俺物語』第1巻だった。
妻も娘も読んで爆笑していた。
あははじゃねえよ。
泣けてしょうがなかったぜ、男のおれは。
こんなにお互いを思い合う友情があるだろうかと。
こんなにお互いのことをわかりあって信頼しあえるだろうかと。
まるでメロスとセリヌンティウス。管仲と鮑叔。
このマンガを読まずして友情を語るべからず、愛を語るべからず、高校教員をやるべからず。
コミックの続きが読めるというので、「別マ」の五月号を買ってしまった。
「あ、いや、娘に頼まれたんで」という顔でレジに並んだ。
五月号は、大和の通う女子校のクラスメイトと、砂、猛男ほか数名が合コンをする話だった。
やってきたJKたちは、一瞬ですなに心奪われる。
いっぽう猛男のことは「何あれ? 怪獣よね」と悪口を言うのを大和が耳にしてしまい、「そんなんじゃないよ」と涙を流す場面がある。
大和は、「武士道シックスティーン」のときの北乃きいちゃんがいいなあ。
そしてそのあと、ある事件をきっかけに、JKたちが猛男に胸きゅんとなる結果になる。
ああ猛男役が思い浮かばない。
イケメン・ブサメンの対立軸しかもっていなかった女子高生が、新しい見方を身につけるのは、大人の女への階段を一歩上るということでもある。
そういうところが女子の心もつかんでいるかもしれない。
う~ん、なんとよく出来た作品だろう。
考えてみると、イケメンのすなの方が、猛男のひきたて役になっているではないか。
見た目だけじゃないんだよ。男の値打ちは。あと、若さだけじゃないんだよ。
なんぞ読まざるべけんや。