水持先生の顧問日誌

我が部の顧問、水持先生による日誌です。

俺物語

2012年05月10日 | おすすめの本・CD

 剛田猛男(ごうだたけお)、集英高校1年生。身長推定2m、体重推定120kg。柔道部。
 砂川誠(すながわまこと)、猛男の隣人。3歳の頃からの幼なじみ。誰もが認めるイケメン。
 話題のマンガ『俺物語』の中心人物だ。
 この二人が描かれたとき、女子はやはりイケメンとブサメンという対立を見るだろうか。
 第一印象はまちがいなくそうだろう。
 でも男子はちがう。たぶん。
 この二人の絵を見たら、もしくはそういう二人連れを実際に目にしたなら、イケメン・ブサメンという対立軸よりも、ナヨナヨ系とガッチリ系という見方になるんじゃないだろうか。
 物理的にナヨじゃなくてもガッチリじゃなくてもいいのだ。
 男子を二分化しようとするとき、イケメンかどうかの度合いが占める比率はそんなに高くない。
 むしろ、どれくらい押しが強いか、身体能力が高そうかの方が上位にくる可能性が高い。
 もっといえばケンカが強そうかどうか。
 もちろんこれも、物理的にほんとに強いかどうかはどうでもよくて、その人のもつ雰囲気の話なのだ。
 そのへんが、男子が男子を見るのと、女子から男子をみるときの違いになるような気がする。
 『俺物語』でも、そのへんはうまくふまえられていて、女の子がぱっと見てちやほやするのは、当然砂川くん通称「すな」の方だ。
 しかし、猛男(このいかにもなネーミングはストレートすぎるけど)は、男子からやたら人気があり、慕われている。
 もちろん身体能力の高さのうえに、性格のよさがあるのは言うまでもない。
 「別マ」に載っているマンガだけど、男子(おれのこと)が読んで心から感動しているのは、そういうベースがあるからだろう。
 幼なじみの猛男とすなが二人でいて、そこに女の子が登場すると、必ずすなを好きになる。
 それくらいかっこいいのだ。
 もし映画化するなら、佐藤健くんにやってほしいなあ。
 すなに告白する女子はたくさんいたが、どの子も猛男の悪口を言ったという理由で、断られている。
 ある日、電車で痴漢にあった女子高生の大和凜子を猛男が助ける。
 大和さんは、猛男に一目惚れしアピールするのだが、猛男は自分にそうやって接触してくるのは、連れのすなに対する好意だと信じて疑わない。
 過去の様々な事例がそうであったから。
 大和の本当の気持ちに早々と気付いていたすなは、そんな二人を結びつけさせ、猛男に春が来たというお話が、コミック『俺物語』第1巻だった。
 妻も娘も読んで爆笑していた。
 あははじゃねえよ。
 泣けてしょうがなかったぜ、男のおれは。
 こんなにお互いを思い合う友情があるだろうかと。
 こんなにお互いのことをわかりあって信頼しあえるだろうかと。
 まるでメロスとセリヌンティウス。管仲と鮑叔。
 このマンガを読まずして友情を語るべからず、愛を語るべからず、高校教員をやるべからず。
 コミックの続きが読めるというので、「別マ」の五月号を買ってしまった。
 「あ、いや、娘に頼まれたんで」という顔でレジに並んだ。
 五月号は、大和の通う女子校のクラスメイトと、砂、猛男ほか数名が合コンをする話だった。
 やってきたJKたちは、一瞬ですなに心奪われる。
 いっぽう猛男のことは「何あれ? 怪獣よね」と悪口を言うのを大和が耳にしてしまい、「そんなんじゃないよ」と涙を流す場面がある。
 大和は、「武士道シックスティーン」のときの北乃きいちゃんがいいなあ。
 そしてそのあと、ある事件をきっかけに、JKたちが猛男に胸きゅんとなる結果になる。
 ああ猛男役が思い浮かばない。
 イケメン・ブサメンの対立軸しかもっていなかった女子高生が、新しい見方を身につけるのは、大人の女への階段を一歩上るということでもある。
 そういうところが女子の心もつかんでいるかもしれない。
 う~ん、なんとよく出来た作品だろう。
 考えてみると、イケメンのすなの方が、猛男のひきたて役になっているではないか。
 見た目だけじゃないんだよ。男の値打ちは。あと、若さだけじゃないんだよ。
 なんぞ読まざるべけんや。

コメント
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