渡まち子さんという映画評論家のブログをよく読ませてもらっている。
昨年のワースト映画日本編で、このおれさまがベストに掲げた「篤姫ナンバー1」が入っているではないか。最高のB級作品だったのに。
渡さんが高評価だった「砂漠にサーモンフィシング」を先日新都心で観たが、よかった。
イエメンの大富豪が、砂漠で鮭釣りをしたいという突飛な望みを実現しようとするところから話は始まる。
エージェントを通じて依頼を受けたイギリスの水産学者フレッドは「不可能!」と一蹴するのだが、中東情勢の悪化に伴う国家戦略との関係で取り組まざるを得なくなったり、間に入ったコンサルタントのお姉さん(エミリーブラント・ちょー魅力的)の働きやらで、あとにひけなくなり、また大富豪の財力もあいまってかぎりなく実現に近づいていく。
大富豪のシャイフ(ほりの深い、いかにも中東のイケメンさん。しぶい)は、決して酔狂でこの計画を企てたのではないことがだんだんとわかってくる。
学者フレッドに、シャイフが語る。
「われわれは神をたたえて生きている。しかし私は人を称えたい。砂漠の多いこの国で、これだけのことがやれると人々に知らしめたい」
「人を称える?」
「そう、その傲慢さをね」
かっこよかった。
人の傲慢さ。たしかにそれこそが、この世をつくっているのだ。
その傲慢さを自覚しながら、何事かを成し遂げようとするのが人間の姿だ。
思えば、傲慢であることの自覚を失っているのが、今の日本人といえるのかもしれない。
フレッドとエミリーブラントの関係が仕事のパートナー以上のものに発展しはじめると、ストーリーにせつなさも加わっていく。
終わり方には不満もあるけど、こういう作品をしみじみ楽しめるくらいには大人になったなと思えた。