コンクールで演奏する曲というと、前はオーケストラのアレンジ作品や、吹奏楽オリジナルの名曲、現代曲といったイメージだった。ジャズっぽい曲とか、ミュージカル音楽とかはあまり演奏されなかった、というか避けられてきた。
市立柏高校さんを始めいくつかの学校が様々な曲を開拓してきたが、そういう方面では、埼玉県のトップランナーたちの貢献は多大なものがある。
「こういう曲はコンクールには向かない」というようなしばりは今やすっかりなくなったような気がする。
要は上手ければいいのだし、いいサウンドなら評価されるのだ。音楽的な内容うんぬんはそれほど問題とならない。
大体、クラシック音楽は拡張が高くて、ポップスは芸術性が低いという価値観自体に意味がない。
ジャンルそのものに貴賤はないのだから。
もちろん、そのジャンルが未成熟か、すでに峠はこえているものなのか、といった段階はある。
それぞれのジャンルの内部は、玉石混交でできている。
そして、既成のジャンルをこえたものが時代とともに絶えず生まれている。
今年のコンクールで聴いた伊奈学園さんの「レミゼラブル」などはまさにそれだった。
昔ながらの吹奏楽のサウンド感では作り得ない響きと、「しょせん」ミュージカル音楽を、オケものの古典的名作に比してなんら遜色ない格調の高さに昇華している点で、当然吹奏楽の最先端であり、いまの音楽の最先端といってもいい。
今年の結果からすっかり立ち直ってコンクールを思い出してみると、伊奈学園さんの「レミゼラブル」、花咲徳栄さんの「マインドスケープ」、松伏さんの「鼓響Ⅱ」が、最も心ふるわされた演奏だった。