マンガ「俺物語」は10巻まで発売されているが、こんなに巻数を重ねることを業界の人はいざ知らず、われわれは(て誰?)は予想もしなかった。
主人公の剛田猛男はあまりにも衝撃的なキャラクターであり、第一巻を読み終わった時の号泣度は、業田義家『自虐の詩』にも匹敵すると思ったほどのマイ名作だったけど、旬の漫画家さんお二人の合作でもあり、企画ものとして2巻ぐらいで終わるのかなと思っていた。話自体も広がりを見せるとも思えなかった。
それが今や10巻。猛男をとりまく様々な人物が登場し、それぞれにキャラが立っている。
そして、今回の映画化。
実写化できるのか … 。あの超高校生級のがたいと、昭和のナイスガイキャラの猛男を演じる役者さんが存在するのか。可憐な大和凜乎さんに、ぴたっとはまる女優さんはいるのか。猛男の親友、砂川誠は、佐藤健くんと百%重ねて読んでる人が多いが、ほんとに健君が出ると主人公をくってしまう … 。
そこに名乗りをあげてくれたのが、というか誰がキャスティングしたんだろう、われらが変態仮面、鈴木亮平氏が、自らの体重を三十キロ増量し、見事に猛男になりきってくれた。
今となっては、猛男は鈴木涼平のイメージでしか思い浮かばないくらいだ。
それに、大和役の永野芽郁さん、やばいです。猛男でなくても「好きだーーっ」と叫びたくなる。
この作品は役者さんさえはまってしまえば、このキャラクターたちが織りなす典型的な青春ラブストーリーをストレートに作り上げるだけで、もう号泣作品になる。
メールやラインですぐにやりとりできる現代において、「君の名は」にも劣らないすれ違いと勘違いがここまで成立するのか驚きながら、好きな人への思いが伝わらないせつなさが押し寄せてきた。
猛男の名字の「剛田」は、由来があるのだろうか。昭和の青春ドラマ感とギャグ感は、どうしても業田義家作品を連想する。困った人を見ると助けずにはいられない猛男自身が、そのまま『ヨシイエ童話』に出てきそうだ。
今回映画化された部分は、コミック第一巻の中身のはずだ。
個人的には大変心惹かれている、実は猛男のことが好きな砂のお姉さんとかも出てくる、実写版の「俺物語2」を見てみたい。永野芽郁さんが超うれっこになってしまわないうちに作ってくれないかなあ。ということで、シエナウインドオーケストラ「バーンズ交響曲3番」@文京シビック、宅間孝行FESTIVAL「くちづけ」@サンシャイン劇場、映画版「俺物語」@南古谷ウニクスを、今年の三大号泣作品に認定しておきたい。