水持先生の顧問日誌

我が部の顧問、水持先生による日誌です。

対話の害

2015年11月14日 | おすすめの本・CD

 

 君は路面電車の運転手で、時速100キロの猛スピードで走っている。前を見ると働いている人が5人いるが、ブレーキはきかない。しかし先に引き込み線があることに気づくが、そこにも働いている人が1人いる。
 さあ、君が運転手ならどうする? ブレーキはきかないがハンドルはきく。脇の線路に入れば一人は殺してしまうけれど、5人は助けることができる … 。

 

  有名な「サンデル教授の講義」で投げかけられる問題だ。
 問いが発せられると、学生達はどちらを選ぶか挙手を求められる。そして教授と学生たちとの問答を積み重ねられながら「正義とは何か」について考察を深めていく。
 「ハーバードの白熱教室講義」としてテレビで紹介され、DVDにもなり、書籍化もされた。
 さすがハーバードのサンデル教授と、多くの人が讃え話題になった講義だ。

 このときに、「ちょっと待って。その質問自体がおかしくないか?」
と発想できる人を、国語力である人と言う。
 たとえば路面電車は100㎞では走れないはずだという当然の疑問をもつこと。
 または、なぜすぐに答えないといけないのですか? と問えること。
 なぜ二者択一なのか。
 こんな不十分な情報をもとにして、人間の命に関わる決定をすぐに下さねばならないのはおかしい、と。

 メディアが賛成と言えば賛成、反対と言えば反対。
 えらい人が言うことはただしい、もしくはウソだ。
 お上の言うことは正しい、もしくはすべてが陰謀だ。

 若いときほど、人の思考は一面的なのかもしれないと最近思う。
 やはり経験値が少ないから。
 だから、文章を読むとはどういうことか、文章が書かれるとはどういうことかを、きちんと教えたい。
 だまされないために。


 ~ サンデル氏は、自分が設定した二者択一しか考えさせず、学生の思考を狭く不自由にする「不正」を実行している。この人に〈正義〉について教える資格があるのか。 (宇佐美寛・池田久美子『対話の害』さくら社) ~


 自分自身もまだまだだから、まだ読んでなかった師匠のご本を虚心坦懐に読もうと思う。

コメント
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