渡辺源四郎商店という劇団の「クリスマス解放戦線」を観た。
青森中央高校の畑澤聖悟先生が主宰する劇団で、演劇の世界では全国に名をとどろかす青森中央高校OBがその主体となっている(と思う)。
たとえば埼玉栄高校吹奏楽部さんのOBがバンドを作ってセミプロとして活動する、みたいななものだろう。
三年前に、参宮橋のオリンピックセンターで、青森中央高校演劇部の「もし高校野球の女子マネージャーが青森の「イタコ」を呼んだら」、通称「もしイタ」という演目を見た。それにしても青森の高校生が東京公演をするなんて … 。
そのときに印象に残っていた役者さん(生徒さん)が、立派な女優さんになられているではないか。
これって、ひょっとして研究生時代から応援し続ける宝塚ファンとか、ジュニアから応援しているジャニーズファンとかと同じ感覚ではないか。
あと、そうやって芝居を続けている若い役者さんを見ると、「案の定」という感覚ももつ。
高校時代に演劇と出会い、どっぷりつかってしまい、芝居のない人生は想定できなくなる。
仕事と両立しながら、地元の劇団員として精進を積んでいる分にはいいかもしれないが、中にはそれで食べていきたい、東京に出たいと思う子もいるだろう。
しかし、楽器もそうだけど、食べていける人はほんのひとにぎりだ。
お芝居の世界は、音大のようなシステムもほとんどないから、プロとアマの差が音楽の世界以上に曖昧なのではないか。いや、同じか。自称ミュージシャンも山ほどいるから(おれも気持ちの上ではミュージシャンだけど、仕事はちゃんとしてる。ああ、歌を作る時間がほしい)。
作品の舞台は、「クリスマス禁止条例」が施行されている近未来の日本。
クリスマスをこっそり楽しもうとする若者たちが集う、あるアパートの一室という設定の、表面的にはシチュエーションコメディぽい作品だ。
しかし、設定の一つ一つ、セリフ、装飾など、舞台上のすべてのものに込められた寓意の総量はたぶん莫大だ。
「クリスマスにどんちゃん騒ぎをする姿は、美しい日本にふさわしくない」という理由で、あれよあれよと法案が国会を通過してしまうと、その後はどんどん弾圧が激しくなっていく … という状況が徐々に伝わってくる。もろ今の政治状況を風刺している。
そこに、都会と地方や、富裕層とそうでない人、若者と大人の格差の様相などを重ね合わせて、笑わせられながら、いつしか笑い顔がひきつっていくドラマだった。
国語の先生らしく、掘れば掘るほど理屈と毒がわいてくるような作品で、今まで観たなかで一番畑澤先生ぽいと自分的に思う。
こまばアゴラ劇場は小さいハコだが、通路も埋める超満員。当日券で最後に入って来たお客さんを、畑澤先生自ら手際よく席に導く。
きっと学校でもいろんなイベントをしきってらっしゃるのだろう。
部活で全国的な成果をあげている先生に対し、学校では部活しかやってないのではないかと批判する声を時折見かけるが、自分が知っているかぎりでは、校務も高いレベルでこなしてる方ばかりな気がする。
そうか、うちの先生もそうだものなあ。
その昔、西部地区の吹奏楽連盟がお招きして、市立柏高校の石田修一先生のお話をうかがった。
部活の運営よりも、当時学年主任としての日々の取り組みをご紹介されていて、あとは大阪音大時代にどうやって効率よく稼いでいたかの話も興味深く、部活運営の原理も同じだというお話に感銘を受けたものだ。
自分なりに参考にして働けたせいか、その後学年主任にはなった。全国常連への道は遠い。