水持先生の顧問日誌

我が部の顧問、水持先生による日誌です。

ブルーピリオド(2)

2020年06月19日 | 学年だよりなど
  3学年だより「ブルーピリオド(2)」


 八虎は、東京藝術大学を目指すことにした。
 一般的な美大の学費を聞いて耳を疑い、それならば国立の「藝大」しかないと八虎は考えた。藝大の油絵一本で受験しようと。
 その難しさを少しでも知っている人間であれば、できない考え方だろう。
 美術や音楽を志したなら、あわよくば芸大に入れればいいとは誰もが思うだろうが、大変な難関
であることを誰もが知っている。
1学年の定員は、美術学部、音楽学部あわせて約500人弱(ちなみに東大は約3000人)。
 スポーツでいえば、例えばサッカーとかバスケットとかで、全国の高校3年生のうち最も上手な数人のみが入学できるレベルと言えば、イメージがわくだろうか。インターハイに「出た」レベルでは話にならない。
 美術学部の場合、絵画科(油絵・日本画)、彫刻科、デザイン科などに分かれ、科によっては現役生が一人も通らない年もあるという。
 油絵科の倍率は毎年20倍を越える。
 知らないがゆえの「怖い物知らず」だといえよう。
 いくら頭がよくて才能があっても、高校2年で目覚めて芸大に入れるものだろうか。
 しかし考えてみると、本校でも高校で初めて手にした楽器で芸大ではないものの音大に入り、プロになった先輩はいる。芸大の美術学部に受かった先輩もいるし、映画監督になった先輩もいる。
 『ブルーピリオド』の作者、山口つばささん自身が芸大出身の漫画家さんだから、いろいろな実例を目にしているのだろう。
 高校2年で目覚めて芸大を目指すことに比べるなら、偏差値40台から難関大学への挑戦など、ふつうに何でもないことだ。
 難関大、たとえば東大であっても二次試験では半分ちょっととれればいいのだ。
 早稲田や慶応ならたった3科目で合格最低点をとればいい。
 芸大の二次試験とはちがい、どんな問題が出るのかは、ほぼ事前に知らされている。
 芸術分野にはおそらく必要な、人並み外れた才能のようなものは関係ない。
 八虎は、お小遣いをはたいて、美大を目指す予備校に通い始める。
 そこで課される課題は、想像を絶するものだった。
 眠る時間を削り、試験前はストレスからのじんましんに悩まされながらも、充実した日々を過ごしていく。
コメント
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