近年の若手学者は、「近代的な個人が存在しないからこそ容易にファシズムに流された」と簡単に丸山真男の言説を引用する。それは日本の戦争理由を前近代性に置いているのか。それなら、戦前は清沢洌が何人いれば戦争が避けれたのか、と問いたい。
戦争の理由は人口構成で決定されないだろう。1936年の2・26事件の6日前の2・20は総選挙だった。天皇機関説を支持した政友会は敗れ、消極の民政党が勝ったが、振り戻れば、既に普通選挙が実施されていた日本であるにも関わらず、ドイツと同じようにファシズムに転がり込んで行った。
ただ単に前近代性に戦争理由を帰結することはできない。もっと深いところで、長い時間をかけて、臣民たちに遮眼帯をかけた無責任な権力者たちが、卵を抱いた鶏のようにゆっくりと孵化させたのではないか。
湘南・晩秋・小出川にて