正直驚いたというか失望したというか、心の中で「宝塚は何を考えているのや?」「自分とこの演出家をそう簡単に切り捨てていいものではない」と怒り心頭。
他に退団してもいい演出家なんて一杯いるでしょう?うえだ違いの人とか、キムシンとか・・・・
よりによって宝塚を救ってる上田久美子を退団させてしまうとは。
本人が望んでも「1年に1度はこっちにも脚本を書いて」と契約すべきでした。
荻田浩一もそうですけど、OSKに書くくらいなら座付きでなくても何でもいいから宝塚に書かせなさいよと思う。
ただでさえ、宝塚の座付き演出家はちゃんとした脚本を書ける人が少ない。
上田久美子が消えたら生田大和くらいですか?
生田も作品に良し悪しがある過ぎるし、原田諒も同じ。
宝塚的豪華でいながら教養も高めてくれる演出家は上田久美子が一番だと思います。
上田久美子の印象
京都大学文学部フランス文学専修卒業という学歴です。
スカイステージで喋るのを見た時は、ものすごくインテリで頭が良くて教養がすごくあって、哲学的な事を普通に話す人だなと思いました。
頭の悪い私がついていけるか・・・とちょっと引いた部分もあるけど、でも一生懸命に理解しようとした記憶があります。
物語を書く時に、登場人物の裏の姿をちゃんと理解して1本芯を通すような感じの人。
当時は「宝塚には勿体ない」と思いました。矛盾してるけど宝塚の観客がついていけるのかなと思った事は確かなんです。
荻田浩一もそうですが、どんなにいい作品を作ってもそれが理解されなかったらダメじゃないですか。
荻田は「螺旋のオルフェ」以降、作る作品が暗くて暗示的なセリフをちりばめるので「オギーの作品は難しくてわかんない」という観客が多かったです。
それと同じような印象を受けるんじゃないかと思ったんですね。
脚本家として
起承転結がきちんとして、曖昧な結末がないのです。
作品に迷いがないというか、劇場の使い方をよく考えて脚本を書いており、登場人物が浮くこともないですし、あて書きも上手です。
宝塚では当たり前の事ですが、それが出来る脚本家というのが中々いないのです。いないから駄作が生まれる。それを再演して稼ぐ・・観客は作品ではなくスターを見たいから通うという現象が起きる。
「どんな作品だろうがいいの。ご贔屓が出てるから」って話です。
観客の数は増えても、作品を理解するお客は減っていると思います。
演劇って歴史の勉強でもあるわけで、その歴史を知らない、知りたくないと思う沢山の観客が演劇を通して知る前に「難しいからわかんない。でもあの人はかっこいいから見る」って現象は恐ろしいですよ。
上田久美子の脚本は、古代の日本からヨーロッパの音楽家など私達が知らない世界に連れて行ってくれる非常に稀有な脚本家でした。
演出家として
私は初演の「月雲の皇子」は見ていなくて、最初は「翼ある人々」でした。
予備知識なく見たのですが、ブラームスってこんな感じの人なのかとものすごく関心を持ち、以後ブラームスの曲をがんがん聞いた覚えがあります。
どんなにブラームスを研究しても、ブラームスとクララ・シューマンの隠れた恋を描くまで想像を書き立てることが出来るか?と言われたらそれは無理かなと思います。
「月雲の皇子」も実の兄と妹の恋物物語で、だからタブー視されていたと思うのですが、それをさらっと「兄妹のように育った」に置き換えて矛盾を見せないというのがすごいと。
「翼ある人々」に関しては1幕の幕切れが銃声で終わります。
これが本当驚きで、心臓がどきどきして姫と一緒に顔を見合わせました。
ラストは2幕最後はもう涙涙で、それもこれも朝夏まなとと伶美うららをブラームスとクララにあてた見事さに感動しました。
「月雲の皇子」は後にスカイステージで見たのですが、珠城りょうと鳳月杏へのあて書きが見事なのと1幕と2幕をがらりと変えた事、そんな勇気があるって事に驚いたものです。
それぞれの心の動きがはっきりわかる演出をしてくれますから、演じていて面白いだろうしやりがいもある。
「月雲の皇子」は東上する予定がなかったのに、後に東上しました。
そしてこれが珠城りょうと鳳月杏の出世作となったわけですよね。
大劇場デビューの「星遭一夜」は架空の藩の幼馴染が成長して立場が変わったことで敵対していくお話ですが、子供時代からそれぞれに演じさせたことが斬新でした。
ただ一連の上田作品の中ではあまり好きな方じゃないんですね。
舞台の美しさ、しつらえの素晴らしさは本当にわかるんですけど、すちーりーが今一つ好きじゃない・・・かなあ。
賞を取った作品ですから「素晴らしい」と絶賛しなくちゃいけないんですけどね。
「金色の砂漠」も斬新な作品でした。
架空の中東の国を舞台に、姫と召使のドSな関係が本当に面白くてきゅんきゅんする場面が沢山ありました。
実は召使は王の子で突如復讐を誓って、姫との立場が逆になり、二人で滅びの道を行くというのも「こんな愛もあるのか」と思った次第です。
砂漠のシーンの素晴らしい事といったらなかったし、フィナーレの花乃まりあへの最大の贈り物、明日海りおと手つなぎで大階段を上っていくシーンは一番好きです。主題歌も大好きで・・・
でもこれは脚本を随分削った分、仙名彩世演じる母の心情がうまく描けなかったのが残念です。
「神々の土地~ロマノフ達の黄昏」は私の中では最高傑作だと思います。
やっぱり朝夏まなとと伶美うららのコンビが最も似合っている。演出家上田久美子の作品を最も光らせる役者たちだったのだと思います。
ここでは舞台の広さと大階段の使い方が本当に「うまいっ!」と思わず手を叩いてしまう程の名演出家ぶりを発揮しました。
何となく見ててわからないかもしれないけど、背景の冬のシーンの見事さとか、ラスプーチンが死ぬ場面の凄さは宝塚傑出の名シーンだと思います。
ロマノフ家を舞台で描くと言う事は思いついても、ラスプーチンを殺した人を主人公に据え、育ての母との恋を描くなんて誰も思いつかないですよね。
実際の彼との剥離は大きいけど、本当に感動の1作でした。
「BADDEY」は女性演出家初のショーという事で、上田久美子自身プレッシャーを感じながらも「これを成功させないと次の女性のショー作家が育たない」と思って頑張ったそうです。
私はこの作品も大傑作と思っています。
「善悪」をテーマにしたショーなんて見たことありますか?ないでしょ?
「悪いことがしたい いい人でいたい」というのは人間の本音ですよね。
煙草も喧嘩もしちゃいけない完全なる「善」の世界と、「悪」の世界の対立が面白く描かれていました。
最初に月から宇宙服で登場する珠城りょうに驚かされたのと、愛希れいか演じるグッディが怒り心頭でロケット達と踊るシーンが圧巻。
さらに大階段で火事になって二人が怒りながらも愛情を感じて踊るデュエットダンスが本当に素晴らしかったし、シャンシャンも扇が煙草に変わるっていうのも面白かったです。
こんな斬新なショーは見た事ないと拍手喝采だったのですが、「これは宝塚的じゃない」という評価も一方ではある。
でもたまにはこういうショーが斬新でいいんだよ~~と心の中で思ってます。
残念ながら「フライングサパ」は見てないので何とも書けません。
望海風斗のさよなら公演になった[fff」はベートーベンが主人公で、これが望海風斗のピッタリだったことは事実です。
ただ、結構理屈っぽい作品に見えるのでどれだけの人が理解したかってのはわかりません。ナポレオンやゲーテまで登場させたのは仕方ないとしても、本当はいらなかったんじゃないか?と思ったり。
また女性関係まったくなしだったゆえに、真彩希帆を架空の女性にして恋愛ではなく心情を描かせた部分が難しかったかも。
それでも、第九の所は素晴らしかったなあと思います。
珠城りょうのさよなら公演になった「桜嵐記」は非常に好評で、これが一番と思う人も多かったでしょう。
最後はとにかく涙の連続で私もファンじゃないけど泣きました。
そもそも楠木正成は知っているけど、その息子達を知っている人がどれだけいるでしょうか?
私の友人に見せたら「こんなにこの時代の歴史がわかるとは思いませんでした。高校生の時に見たかった」と言いました。
まさしくその通りで誰もが理解に苦しむ南北朝が、ナレーターによってわかりやすく描かれていたんですね。
負けるとわかっている戦をしなければならない苦悩、それを飲みこんでいく人達の心情がよくわかります。
すごいなあと思ったのは出陣式をラストに持って来た事です。
銀橋にずらりと珠城りょうや鳳月杏や月城かなとらが並び、暁千星の後村上天皇が歌を詠む・・・そして「戻れよ」のセリフで一斉に涙がだ===って感じです。
まさにさよなら公演にふさわしい作品だったと思います。
このように上田久美子は、今まで脚本家が描かなかったような人を主人公に独自の世界観を描く稀有な脚本家であり演出家です。
それが3月31日付で退団し、今後は一般の舞台を手掛けたり欧州留学も予定しているとは。
何が彼女をそうさせたか。
私は上田久美子にも荻田浩一にも言いたいです。
外に出れば商業演劇の世界で、自分の好きな脚本を書くわけにはいかなくなります。
また舞台も縮小され、盆もセリも銀橋も大階段もない所で脚本を書かなくてはなりません。最も悩むのが場面転換。そして衣装もまた質素になります。
今まで凹凸をつけた舞台を作っていた人が平面で舞台を面白くするというのは難しい事なんですよ。宝塚にいたからこそ自分の「こだわり」を表現出来たというのはあるんじゃないでしょうか?
日本中にいるあまたの脚本家から見れば、宝塚で舞台を作れることが憧れです。予算も多いし、絶対に上演して貰えるし収入も安定している。
おまけに組子は80人。彼らを存分に使って豪華な舞台を作れるんですよ。
才能ある演出家が次々と退団していく背景には歌劇団の古い体質が悪影響を及ぼしているんじゃないですか?
とうとう星組には1作も上田作品はこなかった・・・それが悲しくて。
荻田浩一は今年、OSK100周年の演出を手がけました。
華やかな舞台を作るのにふさわしい人ですが、宝塚じゃなくてOSKって所が悔しいです。
歌劇団は今更座付きに戻す事は出来なくても、上田久美子と荻田浩一には、外部として作品を提供して貰う為に頭を下げるべきです。
日本にとって重要な演出家ですから。
どうして引き留めてくれなかった?歌劇団!
引き留めても本人が受け入れなかったのか?
私は星逢一夜のラスト、皆が子供に戻って幸せだった頃を再現したシーン
上田久美子さんは、ただ者ではない・・と思いました。
BADDYの「怒りのロケット」とか
神話から抜き取った月曇の皇子とか独自の視点を
もう新作は見られないと思うと ただただ無念です。
出る杭は打たれる?一所には納まりきれない才能?
憶測は空しいのでしませんが 本当に無念!(T_T)
意外とだけど、今現在ブロードウエイでラ・マンチャの男出来るか?松本白鴎さんより説得力の有る舞台出来る人居るんかな?と思ってみたり。
オフブロードウエイでも良いから荻田さん勝負してみたら。折角宝塚辞めたんだからSKDやるために宝塚退団するんじゃないよね、と思ってみたり。
他組ファンだった私を一瞬でまぁ様にはまらせた翼でこんな話を書く演出家がいたの❗️とびっくり。
金色のフィナーレの大階段、バッディの怒りのデュエダン、神々のロシアからの風、サパの夢白さんが素晴らしかった、他の作品も他に比べるべくもない良作ですが🥺
古い友達と宝塚はベルばら以降、エリザ以降、ウエクミ以降と進化と変化をして来てるよねーと話してたのです😿
生田くん、若谷、さっしー、(冬霞は世界感は期待通りですが脚本⁈)栗田さん(先行があれれ?)に頑張って貰うしかないですね。ショー作家もまんねり化して来てるし早急に
育てないと!内心、星の次作はかっしーの大劇デビューと予想してたのに、この調子だと来年辺りベルばら祭りだったりして😨
春なのに心がざわざわします。
長文失礼しました!!
上田さんや荻田さんが劇団でどんな立ち位置?の方だったのかわかりました。
ふぶき様の知性とご覧になってきた作品群、文章の構成やポスターでのビジュアルと全部贅沢だなと思いました。
すみません、文章力がなくて。
OSKのショーを荻田さんという方が、宝塚で演出をされていたからというので、興味を持ちまして先日新橋演舞場に見に行きました。
ふぶき様のご紹介の上田さんの作品を鑑賞したのは、3作品だけです。2作品は劇場で見ました。
スカステで放送される作品があったら、見たいです。
「宝塚」を「皇室」に変えれば、そのまま現在の眞子さんに当てはまるのでは?と感じました。