私が台所に入る訳(その1)
若い頃、線路の除雪を主な仕事にした時代があった。
仕事の性質上、土曜、日曜が休みなどとは言ってはいられない。お天気任せ、空任せで休みが決まる。
子供たちとスキーに行くなどと言う事も中々適わない、不自由な日々だった。
皮肉な事に、土曜日曜、祭日と言うと雪が降る。
人々がスキーで遊びに行く列車の運行も確保しなければならないのだ。
当然、休みは平日となる。一人で遊んでいてもつまらない。
そうだ妻と子供達が帰宅するまでに、料理をして驚かせてやろう。
生来の食べ物好き、悪戯好きに、そんな動機も加わり料理に精出す事となった。
NHKのあのリズム感溢れるテーマ音楽に乗って始まる「今日の料理」も決まって見た。
番組を見終わってから買出しに出かける。
帰って来た家族の驚く顔と、喜んで食べてくれる様子が嬉しかった。
妻の家事量の低減と、健康を考えた食事作り。
私も賭け事には人に負けずに手を出していたのだが、そんな事に現を抜かすより料理は余程ましではないか、
と考えるようになった。
(続く)
(地元紙「越南タイムス」への連載もとうとう132回目となりました。なんと今回からは食べ物のおはなしです。
食べ物の事を美味しそうに書けるかどうかで、書き手の力量も問われると言います。少し緊張ですね。)