サンタクロースになった娘たち
まだ娘たちが小学生だった頃の、クリスマスの夜のことだった。
娘たちが寝静まったころにプレゼントを枕元に置こうかと思い、早めにケーキとお茶を切り上げて布団に入った。
あの頃のクリスマスケーキは、妻が手作りしていたように思う。
お金の事もさることながら、お菓子作りが大好きな妻は、台になるスポンジケーキから、
クリームまでのすべてをこだわって、娘たちにも手伝わせ、手作りしていたのである。
二人がまだ、寝付かない間に、寝室の引き戸が静かに開き始めた。
そして、忍び笑いを飲み込みながら寝室に入る娘たちの声が耳に入る。
寝たふりをしていると、私たち夫婦の枕元に何かを置いて、
また、そっと戸を閉めて忍び足で自分たちの部屋へと去って行った。
部屋のドアが閉まる音が聞こえてからしばらくの間我慢した後、部屋の明かりを点けた。
二人の枕元には、それぞれ大きな紙包みが置いてある。
そっと開いてみると、タオルで作った枕カバーが入っていたのだった。
いつの間に二人で作ったのであろうか、親に隠れ、作り方を聞く事も無く二人で作り上げていたのです。
子供たちはサンタクロースが親だと言う事をいつの間にか知り、
そして今度は自分たちがサンタクロースになって親にプレゼントをくれたのだ。
ことさらサンタクロースの存在を信じさせようともしなかった。
そして、特別その存在を否定するようなことも言ってはいなかった。
でも、二人ともとっくにサンタクロースの正体を知り、今度は自分たちがサンタクロースになったのだ。
娘たちの成長を知り二人で喜び感激した。そして、今度は二人が完全に眠ったことを確認して、
そっと二人の枕元にプレゼントを置いた。
今でもクリスマスになるとその事を昨日の出来事のように思い出す。
そして、娘たちから私たち親へのプレゼントは今も続く。