夢見るババアの雑談室

たまに読んだ本や観た映画やドラマの感想も入ります
ほぼ身辺雑記です

知念実希人著「密室のパラノイア」 〈実業之日本社文庫〉

2024-04-16 21:19:40 | 本と雑誌

 

 

男を振った女が観たら呪われるーなんて呪いの動画があるという

双子の姉の真夏に誘われて観た真冬は 自分でも気づかぬうちに線路の上に落ちていて

危なく轢かれるところだった

断じて自殺をはかったのではない

 

不可解なこと 不思議なことにはのめりこむ謎解き得意の天久鷹央は早速首をつっこむ

再び動画を見た真夏も階段から落ちて・・・・・

呪いの動画そのものは稚拙なものだが 何故これが姉妹に影響を与えたのか

例によって周囲には多少の迷惑かけながら 鷹央の導きだした解は

 

鷹央が下僕のようにも扱う小鳥遊

ところが彼がいなくなるということは

 

小鳥遊の異動を阻止すべく鷹央の取り組んだ謎は

 

密室で溺死した男

誰かが殺したのか

ならば犯人は

それとも

 

このシリーズでは様々な病名と出会うことができます

ちゃんと診断できるものでもあったりするのです

 

 

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火坂雅志著「黒衣の宰相」上・下巻 〈朝日文庫〉

2024-04-13 14:41:58 | 本と雑誌

 

 

 

徳川家康の懐刀・金地院崇伝ーとある

一体 何者か?

豊臣秀吉の死後 淀君と秀頼を死に導くいちゃもんづけをした坊主 僧侶と書けばいいだろうか

 

あの鐘に刻まれた碑文「国家安康」の言葉が 家康の名を切り離して呪いをかけている・・・などと

 

これはその崇伝が没するまでを まるでそこにその人が生きているように書き上げられた物語

 

戦いの中で家を身分をうしない 幼児の頃に禅寺で育った青年には野望があった

己の学識で世に出るのだと

世界を知ろうと海を渡ろうとして果たせず

 

やがては己が敢えて憎まれ役 悪役を引き受け

戦いのない世の中をこそ目指した

数奇な人生と言えるだろう

 

ひとりの人間として息づかせた作者の力量 すごしーと思う

数々の資料も読み解いて

 

作者のあとがき

文芸評論家にして国文学者の島内景二氏と文芸評論家・末国善巳氏の解説があります

 

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アンソニー・ホロヴィッツ著「モリアーティ」〈角川文庫〉

2024-04-11 19:53:25 | 本と雑誌

 

 

 

 

「絹の家」に続く アンソニー・ホロヴィッツによるシャーロック・ホームズ関連小説

シャーロック・ホームズはコナン・ドイルの小説の登場人物にして有名な探偵

後世の他の作家たちも好んでホームズ物のパロデイを書く

 

いまだ愛され続けている名探偵

モリアーティというのは そのホームズも恐れた犯罪王

けれどホームズと格闘し 滝に落ちて死んだ

ーことになっていた

そこを逆手にとったのが本作品

 

ホームズが生きていたのなら 同様にモリアーティが生きていても不思議はあるまい

何の不都合ありしやと

ほぼ情け容赦なく他人の生命を奪う

友人と呼びつつ 不都合となれば 簡単に消せる

 

読みながら 読者が煙に巻かれませんように

 

訳者は駒月雅子さん

 

解説は・・・作家の有栖川有栖さん

 

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愛川晶〈あいかわ あきら〉著 「化身」 〈創元推理文庫〉

2024-04-10 17:51:46 | 本と雑誌

 

両親とも鬼籍の人となり 天涯孤独で親戚も居ない身の上の女子大生の操

届いた封筒の中には 覚えないはずなのに気にかかる写真が入っていた

写真に写されたものから 大学の先輩の坂崎が調べて その場所を突き止める

その保育園では過去に預けられた子供が誘拐される事件が起きていた

しだいに自分の過去が信じられなくなる操

両親は誘拐犯人で 自分は誘拐された子供だったのか?!

坂崎の助言で自分の戸籍を調べてみると・・・・・

 

操を護るために両親のはらった犠牲

その尊い愛

 

その行動につけこむ犯人の狡い行動

彼らはついに殺人も犯した

 

混乱のただ中にある操を救う坂崎の登場

 

やがて迎える結末は かつての2時間ドラマにも似た

 ほっとさせる終わり方

 

解説は大矢博子さんです

 

 

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柴田よしき著「ねこまち日々便り」上・下巻 〈祥伝社文庫〉

2024-04-06 07:52:40 | 本と雑誌

 

 

 

 

 

廃線近いと噂される柴山電鉄根古万知〈ねこまんち〉線

終着駅の根古万知駅

ここの駅長が不在になるという

駅前商店街も開いている店は数えるほど

ほぼシャッターが下りている

寂しい限りだ

それでも この町で育った想い出を胸に戻って来る人もいる

かつては賑やかな時代もあった町なのだ

炭鉱で暮らす人々もいた

時代によって栄える場所も移り変わるものだけれど

諦めたように生きている住人も多い

 

老人が若い頃に命を救われた猫だと連れ帰った猫

しかし 老人の妻は猫アレルギー とても飼えない

老人は猫を追い出すくらいなら お前が実家に帰れ

なんてね夫婦喧嘩

見かねた孫娘は猫の貰い手を捜す

離婚して実家に戻り 商店街の中の喫茶店で働く女性・・・愛美が引き受けることに

 

駅で働く愛猫家の恵子も 愛美が働いている間は その猫を駅に置いておくといいと言ってくれる

誰に触られても嫌がらず車も平気な猫

人をひきつける不思議な猫

 

招き猫のように 駅にいる猫は人を集める

もっと人が居続ける場所にしたい

何かできないだろうか 愛美をはじめとし幾人かがその「何か」を考えるようになる

人が来たい できれば住み続けたいと思えるような そういう場所にできないだろうか

生まれ育った町を かつてのように人が行きかう場所へと

こうして・・・挑戦が始まる

できることを 今できることは何なのか

商店街再生 町再生に向けて 事は動き出した

人々は思い出す

商売とは儲けるものなのだと

日々生きられればいいと過ごしてきたけれど

かつては夢があったのだ

客を呼ぶための工夫

そうした努力をいつしか捨ててしまっていたかもしれない

 

夢を見て それを実現するための努力

「何かすること」

何かやってみなければ始まらない

もしも失敗しても 誰かがその夢を引き継いで いつかは成功してくれるかもしれない

とにかく動きださなければ

 

・・・・・なんてね 思わせてくれる あったかい物語です

失敗しても 生きている限り 人はやりなおせる 生きなおせるものだから

 

 

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堂場瞬一著「ラットトラップ」〈講談社文庫〉

2024-04-05 08:37:06 | 本と雑誌

 

 

 

本作「ラットトラップ」の10年前の前日譚が「ピットフォール」になります

この「ピットフォール」は 「ラットトラップ」文庫本の帯による紹介文には

ー10年前の前日譚

 

1959年、NY〈ニューヨーク〉。

華やかな成功の陰で、暗い落とし穴〈ピットフォール〉が口を開ける街。

元刑事の探偵のジョーは、役者志望の女性の行方を捜してほしいと依頼を受ける。

だがその矢先、黒人の探偵仲間ウィリーが殺されたとの報せが。

残忍な手口は、女性ばかりを狙う連続殺人事件と同じで・・・・・。-

 

それから10年ぶん 年を重ねたジョー・スナイダー

探偵志願で自分の家のことは話したがらない・・・若いリズ・ギブソンが仕事を手伝っている

そのリズの近所に住む娘メアリが 姉を捜してほしいと相談にやってくる

若者たちが集まる音楽の祭典に出かけた姉が行方不明

姉のジェーンは家出した可能性も否めない

雲をつかむような話

それでも手がかりを求めて 探し始めたジョーだが

 

ジェーンは殺されて見つかった

おかしな男

中年女

バイク強盗

別の行方不明の娘

一つのロープを作るように ばらばらの要素が一本にまとまっていく

野球が好き

音楽が好き

これまでの人脈を武器として 体当たりも辞さず

 

カルト宗教詐欺のような男がいる

それに仕えているのか もしや操っているのか そんな女も

食い物にされるのは純粋な心持つ若者たち

 

事件解決後 意外なリズの素性も

リズはジョーがよく知る人物につながる娘だった

 

 

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五十嵐貴久著「リベンジ」〈幻冬舎文庫〉

2024-04-04 11:01:22 | 本と雑誌

 

「リカ」シリーズ第八弾

 

 

「リバース」

「リセット」

「リフレイン」

「リハーサル」

「リカ」

「リターン」

「リベンジ」

「リメンバー」

「リカ」シリーズはクロニクル形式になっているので・・・この順番で読んでいただけたらーと著者からのお言葉があります

どの本から読んでも独立した物語としても楽しめますが

クロニクル形式とは 年代記を意味するので 時系列に沿って読むもよし と

 

ところで この「リベンジ」を著者が書くまでに 少し嫌なことも起きたようです

大きな事件があれば 似た作品を捜し この作品の影響があるのではーなんて

こじつけた偏見で 煽るようなコトを書かれたりします

映画 漫画 小説 そういう被害にあってしまった作品もかなりあります

記者さんはネタを見つけるのがお仕事

無ければ作ってでも 自分の書いたものがカネになれば良いお仕事ですから

人の言葉もゆがめて書いたり・・・ね

 

一つの物語を書き上げること

世に出た時点で それは著者の手を離れます

その物語を読む人が どう解釈するか それは読む人それぞれ

感想は一人ひとり異なるでしょう

そこまで著者に責任を求めるのは間違っている どうかしていると思います

感想に正しい答えーなんてありません

 

さて物語は 

リカという女がいます

身長170センチほど ひどく痩せている

肌の色も美しくない 泥のような・・・

感情が激するとその体から凄まじい悪臭を放つ

自身の夢〈妄想〉の生活にそぐわないものは排除する

自分の人生からデリートするためには 放火 刺殺 

殺人は正当な行為なのです

これまでもかなりな人間が惨殺されてきました

リカを撃ち 「射殺した」と思われている女性刑事の青木孝子は懲戒免職

現在は主に不倫調査の仕事が多い興信所で調査員として働いています

けれど青木は安心していませんでした

リカが生きていて自分の命を狙っている

その不安から逃れられないのです

リカの死体は見つかっていません

運ばれた場所から消えたのです

また 落ち目の男は報道に戻るために リカが関わった事件に目をつけます

これまでも色々と「やらかしている」男・佐藤は その肉体を手に入れたいと思う女性を連れて リカの行方を追って大阪へと乗り込む

青木は別の伝手で京都へリカを捜しに

 

ところがリカは東京に現れます

佐藤は これまでやらかしたことの「報い」を受けることに

青木と警察

それでも死なないリカ

プチ・リカも登場

血もざくざく流れるので 気の弱い方にはおすすめできません

 

 

「リカ」との最初の出会いは 2003年のドラマでした

リカに出逢う本間を阿部寛さんが演じています

リカ役は浅野ゆう子さんでした

 

高岡早紀さんがリカを演じたドラマや映画もありましたね

 

 

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知念実希人著「白銀の逃亡者」〈光文社文庫〉

2024-03-31 19:23:44 | 本と雑誌

 

 

連続して夜勤を希望する医師の岬純也

彼には秘密があった

ある病気の後遺症の副作用でドラキュラもどきに 昼間は怠く動きづらい

外見の特徴は・・・瞳が・・・白銀色に輝く

だから彼は黒のコンタクトレンズを使用して ごく普通の人間のふりをして生きてきた

病気の後遺症で ドラキュラもどきの怪力を得た人間たちは・・・ヴァリアントと呼ばれ恐れられ 忌み嫌われている

ヴァリアントの青年の行為により 感染した娘が病死したから

この青年は捕らえられている

ヴァリアントとなった人々の隔離場所から ある目的をもって脱走した少女は 純也に同族の匂いをかぎつけ 囚われの身の兄を自由の身にするための協力を乞う

しかし娘を殺されている父親は彼らを追ってきて

 

ヴァリアントになりたい女性

政権を奪われた政治家たちの思惑も絡み 事は動いていく

いやいや巻き込まれたはずの純也もいつしか戦うはめに

 

 

読み始めた時に これはいやな暗い終わり方をしないかーと思いましたが

うんうん まあ いろいろ うまくいって良かったねーなどと

そんな割かし明るい終わり方をしてくれました

 

 

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畠中恵〈はたけなか めぐみ〉著「わが殿」上・下巻 〈文春文庫〉

2024-03-28 14:01:06 | 本と雑誌

 

 

 

幕末 小さな大野藩も借財にあえいでいた

15歳の若殿の利忠が目をつけたのは・・・まだ19歳の内山七郎右衛門

後年 利忠は七郎右衛門のことを「打出の小槌」と呼ぶことになる

あまりにも多額すぎる借財返済の為に 七郎右衛門が手をつけたのは銅山だったが

「誰かに」背中を押され負傷する

江戸から明治へ世の中は大きく変わり 最後まで利忠との約束を果たし 大野藩の為に生きた七郎右衛門

75歳で没するまでの奮闘ぶりを十章に分けて描かれている

 

 

「しゃばけ」で世に出てシリーズ化し 他にも「まんまこと」など人気シリーズを抱える著者が これは初めて書いた歴史小説

実在の人物をとても魅力的に書いておられます

 

解説は文芸評論家の細谷正充さん

 

 

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マイクル・コナリー著「正義の弧」上・下巻 〈講談社文庫〉

2024-03-23 10:22:05 | 本と雑誌

 

 

 

長年 警察官を続けてきたが 私立探偵として生きようとするハリー・ボッシュを かつて同じ事件で組んだレネイ・バラードが立ち上げた未解決事件班に参加してくれと話しをもちかける

ボッシュが現役時代に犯人を逮捕できなかった事件を捜査しなおしてくれていいからーという条件で

ボッシュが気がかりだった事件とは 一家四人が行方不明となり その死体が埋められた砂漠で発見されたというもの

 

そしてレネイが新しく未解決事件を捜査する班を立ち上げる条件は 市会議員のジェイク・バールマンの若くして殺された妹・・・・・彼女を殺した犯人を見つけてほしい・・・・・

長年警察官として生きてきたボッシュには それなりの人脈もある

何よりも刑事としての勘

殺された 被害にあった人たちへの真摯な思い

だが・・・もうボッシュの体はぼろぼろだ

若い時とは違う

それでも不屈の精神で事件に 犯人に立ち向かう

今回もボッシュは幾度も危機にあう

銃口を向けられ 負傷もする

それでも・・・怯まない

 

一つの大きな事件が解決した後 ボッシュは姿を消す

一家四人殺しの犯人の逃亡先の手がかりを得て・・・単身そこへ向かう

当初 ボッシュには別な目的もあったが・・・・・

一方 連絡がとれなくなったボッシュを案じるレネイとボッシュの娘は 二人してボッシュの家に行き・・・・・そこでなんとも心配な薬を見つけてしまった

 

人の生命は永遠ではない

死ぬが運命 此の世に生まれてきた限り

消える時は やってくる

 

そうした寂しさ 或る種の苦さも

いつかマイクル・コナリーの作品からボッシュの名が消えてしまう日も訪れるかもしれません

 

 

古沢嘉通さん「訳者あとがき」では いつもマイクル・コナリーの作品や今後の翻訳予定についても書いて下さっています

 

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染井為人著「海神〈わたつみ〉」 〈光文社文庫〉

2024-03-22 06:44:02 | 本と雑誌

 

 

著者によるあとがきのタイトルは「3.11を死なせてはならない」だ

著者は東日本震災の被害者ではないが 震災後しばらく無気力状態が続いたという

そんな著者の耳に飛び込んできたのが 歌手の泉谷しげる氏が震災後の復興支援活動をしている際に 飛び交う揶揄に対して発した造語「一日一偽善」

著者はこれをいい言葉だなと思ったとか

当時イベンターだった著者は 〈この言葉に背中を押されたのかわからないけれど〉復興支援のビジネスに能動的に関わるようになったが

あくまでビジネスとしてであり ボランティアではないので 無償で復興に貢献していた方々とは一線を画すのだと

しかも震災時の現地の混乱に乗じて 詐欺横領 窃盗 性暴力など人ならざる行為を働く者たちも少なからずいたようだ

 

この小説「海神」を執筆しながら それらの悪をもれなくつめこんだが 書いていて自分の心に澱みのようなものがたまり書けなくなった

それを完成させるべく再起させてくれた一冊の本

それが読売新聞社・著「記者は何を見たのか」

記者たちが心血を注いで紡ぎあげたルポルタージュ

記者たちの矜持と覚悟

自分たちが見たものを 人々に後世の人々にも伝えるのだという

 

著者は「死」は二度訪れると記します

肉体が滅びた時

人々の記憶から忘れ去られた時

 

であるならば 3.11に二度目の死を与えてはなりません

この物語が3.11の生に貢献できることを願って

 

ー書かれた物語・・・なのだそうです

 

 

さて「海神」は 震災の被災地に「何かできることはないだろうか」と身一つで駆け付けた女子大生の椎名姫乃が 天ノ島で献身的に働いている様子

その彼女が島で金儲けを企む男を知らずに騙され やがてその悪事を知り

知ってしまったことで その肉体まで汚されてしまう

 

また島を大切に思う 震災で両親を失った記者

島の助産婦を長く続け孤児たちの世話もしている女性

震災の日に生まれた少女

島の救世主と信じた男が詐欺師に過ぎず 騙されたことに責任を感じ 切腹自殺した村長

島の人々をあくどく騙し 巨額を奪った男の行状 言動

この男により ぼろぼろの人でなしの人生を歩まされた青年

この青年に「何か」を取り戻させることができたような姫乃

 

救いは震災の日に生まれた少女の無邪気な言葉と笑顔

 

 

2024年 1月1日

石川県 能登

大きな地震がありました

多くの方が亡くなられ 家は壊れ 道路も・・・・・

もうどうしよう 明日からどうすればいい

これからどこで生きていけばいいんだ

うずくまりたくなるような もう動けない・・・

そういう方々をリフォーム詐欺とか早々に食い物にしようとする輩もそうそうに出現

ビニールシートを高額で売りつける

困っている方々をさらにカモにしようとする輩たち

親切ごかしに近づいて

こういう輩たちに 相応の天罰がありますように

 

 

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染井為人〈そめい ためひと〉著「悪い夏」〈角川文庫〉

2024-03-21 14:39:16 | 本と雑誌

 

 

26歳の佐々木守は公務員だ

生活福祉課・保護担当課に籍を置いている

親切で心優しく真面目な人間・・・・・のはずだった

それなのにー

 

生活保護の受給者にも様々な人間がいる

ずうっと貰い続けて当然・・と開き直ったり

佐々木の仕事は人間の嫌な面を見なければいけない仕事ではあった

あったのだが 女性経験が無い まともな恋愛経験がない佐々木は・・・ある女に出逢ってしまった

生活保護の不正受給者を増やし そのピンハネで金を荒稼ぎ

かつてはばをきかせた街へ戻ろうとする金本

金本の情婦でレディース上がりの暴力女

生活保護受給者で金本から仕事をもらって麻薬販売にいそしむ山田

生活保護受給者なのに水商売している弱みにつけこみ その女の肉体で己の欲望処理している公務員の高野

その高野と不倫していた宮田

 

このぐずぐずの人間関係が 一番まともに見えた佐々木をも転落させる

惚れたと思っていた女に騙されヤク中にされて どんどん壊れていく

壊れた佐々木が生活保護申請に来たある母子〈この人間こそ 一番まっとうに生活保護を受けさせてあげるべきであった〉に わけわからない言葉を投げかけ

この母子は命を絶つ

刃物振り回して・・・乱闘・・・・・

それから 数年後

職も失った佐々木は・・・・・生活保護受給者になっていた

 

「悲劇と喜劇」と題して 著者のあとがきがあります

 

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遠田潤子著「紅蓮の雪」〈集英社文庫〉

2024-03-20 15:35:52 | 本と雑誌

 

両親から愛されず育った男女の双子

結婚が決まっていた姉の朱里は・・・婚約破棄し 二十歳の誕生日に死んだ

弟の伊吹に「ごめん」とだけ書き残して

姉の遺品を整理していて伊吹は 旅芝居の一座の半券があることに気づく

姉からこうしたものが好きだ 趣味だとは聞いたことがなかった

姉の突然の自殺の真相があるのかと この一座の舞台を観劇に出向く

そこで目を奪われたのは一人の女形 鉢木慈丹

伊吹より僅かに年上に思うが 彼には妻も舞台で子役として出る娘もいた

何故か幼少より母から剣道と日舞を習いにいかされていた伊吹

観客として来ていた伊吹に慈丹は 一座に加わらないかと熱心に誘ってきた

姉と一座との接点は見つからないまま 伊吹は一座に入る

 

父親からは冷たい心が凍り付くような言葉しかかけられなかった伊吹

自分は汚いのだ そう思い 人から触れられることも耐えられず

姉の朱里と二人寄り添い守りあってきた

しかし 姉はもう居ない

馴れぬ舞台に立つうちに・・・一座の人々とも打ち解けることが少しずつできてくる

 

かつて一方的に伊吹にしつこいほどの思いを寄せ 叶わぬとなると 逆恨みもした幼馴染の娘の和香が 自分をこんなにしたのは伊吹だと刃物持ち傷つけようとし 慈丹の顔が傷つけられる

いくら告白しようが 拒否され続けているのだから 自分には脈がないーと素直に諦める賢さもなかった娘

また娘の母親も逆恨み体質で・・・まず自分の娘が悪いのだと反省とかそういうこともできない人間

娘がこうなったのは相手のせいだと 他人が悪いと文句を言いにいく

恥をかくのは自分だと思うのだが

まずそういう娘に育てたのは自分なのだと そこが反省できない

まず他人を傷つけたなら まして刃物まで振り回しているのだから 謝罪あってしかるべきだが

というかね この物語の母子は人柄 性格的にもそっくりで

まさしくこの母にしてこの子あり

でも現実にもこういう親子は多い

なるほど この親なら ああいう子も育つよねーと

 

自分の出生の秘密を知り 両親と一座の深い関わりも知って・・・・・一座を抜け出し 母親と向き合う伊吹

父親も苦しんでいた そして 首を吊って死んだのだ

 

朱里もどうして自分たちが生まれたのか どうして両親から愛されないのか知ってしまった

この秘密から伊吹を護ろうとして 独りで死んだ

秘密を知った朱里が向き合った母親は・・・・・朱里を救う言葉などかける女ではなかった

同じ地獄へと・・・・・・

どこか狂いながら生きてきた人間なのかもしれない

 

伊吹は慈丹によって死の淵から引き戻された

これからは両親の子供としてではなく 慈丹の従弟として 舞台に立ち続けるのだろう

 

 

解説は書評家の三宅香帆さん

 

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中山七里著「テロリストの家」〈双葉文庫〉

2024-03-19 19:59:44 | 本と雑誌

 

真面目に真剣につとめてきた公安での仕事

ある日 取り組んでいた仕事から外され 怪訝に思ううち 就職活動中であった長男の秀樹が テロに関わる容疑で公安にひっぱられる

警察官ではあるが公安に所属することは家族にも言ってなかった幣原

取り調べの公安のやりかたは勿論熟知している

 

何故息子がそういう思想に染まってしまったのか

テロリストの家族ということで世間から攻撃を受け 家族からも責められ 職場では疑われる幣原

 

マスコミの取材攻勢 自分たちが正義 鉄槌を下すという上から目線の言葉たち

娘は妻の母親が騒ぎが落ち着くまで預かってくれることになる

幣原という珍しい姓から 連行された秀樹の身内と知られ 娘の可奈絵は学校ではいじめにあっていた

ところが公安が泳がすために自宅へ返した秀樹は 幣原の目を盗み 自室のベランダから脱出

死体となって見つかる

誰が秀樹を殺したのか

 

事件を捜査する刑事たちからは容疑者扱いされ 公安の仲間からは監視される幣原

息子を喪って混乱し悲しみのなか 精神崩壊すら心配される幣原の妻は ある行動に出る

家族を護り 息子を殺した犯人を見つけようと動く幣原

そして幣原は ある人物の言葉から「犯人」を見つけた

 

騒動もおさまりはじめ 娘の可奈絵が帰ってくる

けれど 幣原は娘のことを案じてかけてきてくれた娘の友人からの電話で気づいてしまった

誰がテロリスト志願であったのか

 

妹を庇いまもろうとして身代わりとなった兄

気づいてやれなかった幣原

 

 

どんでん返しを仕掛けるのが得意な作家さん

素直には終わってくれませぬ

 

解説は書評家の細谷正充さん

 

 

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日明恩〈たちもり めぐみ〉著「濁り水」 〈双葉文庫〉

2024-03-17 09:34:55 | 本と雑誌

 

 

 

 

 

 

 

 

成りたくてなったわけではない

続けたくて続けているわけでもないーそんなふうにぼやきながら やるべきことは必要以上にしている大山雄大

職業は消防士

彼を主人公とするシリーズ

今回は 母親が車の下に・・・・・そして水がたまっている

早く助けてくれー

駆け付けた消防士が奮戦するも 車の下から出された母親は既に死んでおり・・・・・

それでも必死に救助にあたった隊員に遺族から投げつけられた言葉は・・・

「どうして もっと早く来てくれなかったの」

 

間に合わなければ・・・それが不可抗力のことであっても 助けようとしている人間だって傷つく

消防隊員だって 救急車の乗員だって「おたすけまん」でも「便利屋」でもないのだ

出来ることとできないことがある

 

まして この場合は・・・・・

 

大山は 台風の時に守った老人とこの死んだ母親の葬儀の日の家の前で再会

するとこの老人は謎の言葉を呟く「助けようはなかったよ」

この言葉の意味を探るべく老人を捜す大山

 

災害にあって 家の安全性を心配する人々をカモろうとリフォーム詐欺をする人間もいる

この住居改悪により火事が起きる危険性もおおいにある

大山はある事に気づき 頼れる友人や守さんの力もおおいに借りて 解決すべくのぞむのだ

 

泥棒して生きてきた老人の決意

それは 孤独な人生のなかで 「ある優しさ」に打たれ その人物の為に力になろうとすること

いいことをしておきたいーそんな気持ちもあったのかもしれない

「いいんだ これでいいんだ」

 

性格の違いから親を恨み憎み殺す娘もいる

人は相手次第で鬼にも菩薩にもなれる生き物

自分の苦しみばかりに目がいき 周囲が見えなくなることもあるだろう

不満ばかりで「感謝する」ことを忘れてはいないだろうか

誰かに「有難う」といえただろうか

心の中でもいいから

 

同じ著者の作品で「それでも警官は微笑う」「そして、警官は奔る」「やがて、警官は微睡る」「ゆえに警官は、見護る」ー武本と潮崎シリーズも

 

 

 

 

 

 

 

 

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