恒川光太郎「弥勒節」
現在は沖縄に住むという作者が 島の雰囲気漂わせる言葉を巧みにこなし 不気味さより 島の美しさ不思議さを印象に残す
恐さより その島へ行き 不思議を体験したくなる
長島槇子「聖婚の海」
兄妹で愛し合いーそれを罪として流され 命を絶った貴人
島に末裔は残り 時代は流れ連綿とひそかに その血筋は続いていた
第二次世界大戦終戦後ー
父親の名は分からぬ馨に 母の死後 島から手紙が届く
恨みの一つも言ってやろうと島を訪れた馨は 自分によく似た人間から 思い掛けぬ出生の秘密と 自分と相手の血筋を教えられ ある行為を求められる
「遊郭(さと)のはなし」で鮮やかな吉原怪談を創りあげた作者の妖美な世界
水沫流人「層」
重なった広島焼きを見ていてサトシは気持ち悪くなる
サトシは母子家庭だった
病気になった美しい母
母へいやらしい視線を向ける男
悪意ある噂
いじめられること
サトシはタブーとされることをしてしまう
その結果はー
有栖川有栖「清水坂」
柔らかい大阪弁で大阪を舞台に語られる思い出
幼なじみの女の子の死にまつわるある出来事
赤い花は哀れな想いが見せた幻想だろうか
雀野日名子「きたぐに母子歌」 北陸トンネルの中で起きる怪異
そのワケあり車両にこだわるやり手の女性上司
繰り返される亡霊達の死の再現
だが それも見られなくなるかもしれないーらしい
黒 史郎 「山北飢談」 祖父の家から見える山には入ってはいけないーそう言われていたのに僕は入ってしまう
奇妙な赤い実
食べてはいけなかった
山から何かがついてくる
加門七海「日本橋観光ー附四万六千日」 友の為に買った酸漿の鉢植え
その赤い実を欲しがる者達
川にかかる橋が 水が 関わるモノが 江戸へ異界へ導く
赤い赤い酸漿は亡者の提灯
流れ行く
勝山海百合「熊のほうがおっかない」 昔物語を聞いた夜 風呂に向かうと思いがけず沢山の客
本当におっかないものはー
宇差美まこと「湿原の女神」 失業した卓也はバイクで北海道へ
途中誰もいないはずの後ろに気をとられ事故で足を失う
事故現場に居合わせた若い男は見舞いに来て 今は行方不明の願いを叶える力を持った女友達の話をする
やりようによってはどろどろした話にできただろうけれど 若者の心の成長
爽やかな終わり方になっています
鳥肌立つ恐怖はありません
怪しい話 恐さから三歩手前にとどまっております