夢見るババアの雑談室

たまに読んだ本や観た映画やドラマの感想も入ります
ほぼ身辺雑記です

「よたばなし」ー33-

2021-07-23 20:02:15 | 自作の小説

検査の結果は何の異状も見つからないのに深春野真夜(みはるの しんや)は眠り続けている

何故か 目覚めない

それは自分が解決するように言った 一度は解決したはずの例の黒い女の問題の為なのか

多少の責任を木面衣都子( きづら いとこ)は感じている

 

長い銀の髪 黒銀の長い爪 異形の姿の夢鬼は衣都子の夢に現れ言ったものだ

真夜は眠っていはいるが夢は見ていない

入ろうとすると夢鬼は弾かれるのだと

そんなことを言う夢鬼は少し寂しそうに見えた

 

夢鬼が言うには衣都子と真夜の血は遠い昔の何かでつながっていると

二人が出会ったのは その血が呼びあったからだと

眠っていない起きている衣都子と夢鬼が語り合えるのはそのためだと

 

衣都子が逢魔が時を選んで夢集めを始めた時 手伝わされる羽目になった夢鬼は呆れた

自分を使おうなどと考える人間がいたことに

もともと衣都子は本人に自覚がないだけで周囲から見ればズイブン変わった人間なのだ

「あたしは夢を呼ぶことはできない 真夜のように他人の夢にも入れない

どうにか変わった話を拾うことくらいしかできない 

夢の中に真夜を起こす手がかりがあるかもしれないでしょ

夢に始まった話だというなら

他人の夢など あたしにはお手上げよ

夢鬼なら夢は得意領域でしょう

真夜に起きてほしいなら そちらが頑張ることね」

 

一つの夢を片付けた夢鬼に 衣都子が尋ねる「どうだった」

「散らばった闇の一つ」

 

ある日 ばったり倒れて動かなくなった真夜

真夜の中に居る夢鬼にも理由が分からない

真夜が何にとっつかまったのか

 

もしくは何か 大化けする前の蛹状態に入ったのか

生まれる前に持つ能力を封じられたという真夜

闇のモノが欲しがる血の持ち主


「よたばなし」ー32-

2021-07-23 16:05:48 | 自作の小説

ー夢の残像・2・真夜(しんや)-

自分の存在を脅かすような才能溢れるーこれから世に出ようという人間を幾人も潰し
もっとも美しい若い娘は事故にみせかけて焼き殺した
そんな女優がいた
しぶとく芸能界を生き残り 長く芸能界を生き抜いた 
それだけで大物女優と呼ばれた

年老いて心弱り自分の罪を夢に見てうなされるようになり
やがて夢にとらえられるようにして死んだ

死んだ女の悪意が夢に残り ばかりか怨霊化して伝染する夢となった

誰かの見る夢の中に現れる黒い心の女

夢から悪意を抜き取り そのよくないモノを夢鬼の夢檻に閉じ込めて
事は終わったと僕は思っていた


だが その夢檻が破られたという

てんでばらばらに逃げだした悪意の群れ
小さな点となり 滴にふくらみ人の心の黒い部分を吸い取って 別の悪夢をうみだす

無邪気に心の悪を拡げていく

人は夢に影響される

起きて忘れて思い出せない形の無い夢に

「かように夢はタチが悪いのだ」
と夢鬼が言う

「誰の心にも黒い部分はあるものだ」とも


それはそうなのだろう

 

 

 

 

 

 

 

ー夢占(ゆめうら)の女・客ー

人は不眠が続くとおかしくなる

常の自分ならぬ行動をしてしまう

多分 その時の私はおかしくなっていたのだ

それは夕暮れ 昼と夜とが入れ替わる刻(とき)

 

易者が座るような台の後ろにいたのは黒いヴェールを顔にかけた女

看板は何も出していない

 

なのに私はふらふらと吸い寄せられた

その女が何者で何の商売をしているかも分からないのに・・・・・

 

それだけ私は眠れずに切羽詰まっていたということか

簡素な台の間に置かれた椅子に私はへたりこんだ

視線すらこちらに向けず 女は問うてきた

「どういうご用件でしょう」

 

通りかかる人間がひっかかるのを待つ商売ではないのか

濃いヴェール越し 女の表情は読めない

見えるのは形は良いが薄い唇ばかり

 

それなのに私は話しだしていた

「眠れないんだ」

女は何も言わない

「同じ夢を見る その夢を見たくない 夢に捕まりたくない

ずうっと追いかけられていて

とうとう何処かのトイレに 個室に逃げ込みドアを閉めようとする

すると閉めさせまいと 手がかかる

それが入ってきたら おしまいという気がしている」

 

初めて女が言う「どういふうに おしまいだと」

 

「わからない ただ 恐ろしいんだ」

 

「いつも逃げてばかり 逃げ続けているんですか 何故?」

ひどく不思議そうに女が訊く

「だって 恐ろしいから」

 

「何故でしょう それに捕まるのが  それに向き合うのが」

 

「全部」と私は答える

 

「なるほど そういうものですか」と女

そして「あたしならー」と女は続けた

「あたしなら それと向きあいます でもって危害を加えてくるようなら先制一番

ぶん殴ってやります」

 

楚々とした見かけに反し 女は随分と攻撃的な性格らしい

「追いかけてくる相手と向き合っては いかがですか

それはあなた自身かもしれません あなたの中にある何か

その恐怖に勝てるものなら この拳でぶん殴ってみてはいかがでしょう」

 

更に言う「いずれにせよ それはあなたの夢 あなた自身で解決しないことには ずうっと眠れずに気が狂ってしまうのではありませんか」

 

「まずは立ち向かってみて下さい」

こうも言った「天は自らたすくものをたすくーです」

 

「あの見料は」と言えば

「そんなものは要りません ここにこうして座っているのは ただの気まぐれです」

商売ではないーと

 

どうにも不思議な女だった

 

やがて女の姿は闇に沈む

 

その夜 私は早々と眠りについた

 

ああ まただ 誰かが何かが追いかけて来る

閉めようとするドアを手が掴む

見覚えある指

そうだ あれは私の手だ

 

思わず その手を掴む

 

手の先に居たのは 私だった

私が私を脅かしていたのか

 

何故 

しかし それは随分と邪悪な表情をしていた

 

ーそれが悪 闇だからだよー

私と邪悪な私の前に現れたのは額に角ある とても美しい鬼

その鬼を見て 邪悪な私が怯えている

鬼は邪悪な私を引き裂いた

闇が消える

 

ー柄ではないが 安心して眠れー

 

鬼も姿を消した