オーストラリアのアボット首相が来日され、安倍首相と会談し、日豪EPAの大筋合意がなされました。今回の両国の首脳会談は、両国関係で大きな節目となる会談で、内容の濃い成果があったと歓迎します。
先ずひとつは、両国の安全保障に対する絆が、一段強化されたこと。もうひとつは、TPP交渉が停滞する中で、両国のEPAが先行したことです。
前者では、日米豪の連携が強まることで、低下した米国のリーダーシップを補完しアジアの平和に強い楔が撃ち込まれたこと。後者では、米国が独断専行するTPPに、日豪の存在感を示したことですね。
問題は日豪EPAの先行が、頑強に関税ゼロに拘る米国への牽制となるのか、記事で指摘されているように、「米国は日豪の合意を意に介さない」、「(米の反発を呼んで)TPP交渉には逆効果」となるのかですね。
米議会では、日本抜きでTPP交渉をまとめようという声も出ているのだそうですね。
米議会、TPP交渉に悲観的見方―日本抜きの合意も - WSJ.com
今後の成り行きに注目です。
# 会談に臨む安倍首相とアボット首相
この花の名前は、時計草
↓よろしかったら、お願いします。
先ずひとつは、両国の安全保障に対する絆が、一段強化されたこと。もうひとつは、TPP交渉が停滞する中で、両国のEPAが先行したことです。
前者では、日米豪の連携が強まることで、低下した米国のリーダーシップを補完しアジアの平和に強い楔が撃ち込まれたこと。後者では、米国が独断専行するTPPに、日豪の存在感を示したことですね。
日豪安保協力を強化 首脳会談で合意 (4/8 読売朝刊)
7日に行われた日豪首脳会談で、安倍首相はオーストラリアのアボット首相を「特別なパートナー」と位置づけ、安全保障面での協力を強化していくことで合意した。両国が同盟関係を結ぶ米国のアジア太平洋重視政策(リバランス)を支持することでも一致し、アジア太平洋地域の安全保障に、「日米豪」の枠組みで対応していく方針を確認した。
米のアジア重視支持
首脳会談に先立ち、昨年12月に発足した国家安全保障会議(日本版NSC)4大臣会合の「特別会合」が首相官邸で開かれた。アボット氏は外国首脳としては初めて、NSCの会合にゲストとして招かれた。
安倍首相「日本と豪州は自由や民主主義などの普遍的価値、アジア太平洋地域の平和と安定に戦略的利益を共有している」
アボット氏「NSCに出席する最初の外国首脳に選ばれて光栄だ。日本との協力関係をさらに強化していきたい」
約1時間の会合で、アボット氏は、安倍首相と麻生副総理、菅官房長官、岸田外相、小野寺防衛相とアジア太平洋地域の情勢について意見交換した。
日豪両国は、第1次安倍内閣時代の2007年、日豪安保共同宣言に署名し、安全保障面での協力強化で合意した。その後も、外務・防衛閣僚協議(2プラス2)を定期的に開き、関係を深めている。背景には、東シナ海や南シナ海で海洋進出の動きを強める中国への警戒感がある。
貿易立国の日豪両国にとって、「航行の自由」の確保は死活的に重要な共通の利益であり、中国の挑発行為は見過ごせない問題だ。昨年11月に中国が突然、東シナ海上空に防空識別圏を設定すると発表した際も、豪州政府はいち早く非難の声を上げている。
首脳会談では、中国を念頭に「航行と上空飛行の自由の確保は地域共通の関心である」と確認した。地域の紛争についても、「力ではなく、国際法に従って解決するべきだ」との認識で一致した。
防衛装備品 共同で研究
日豪首脳会談では、安全保障面での協力の具体策として、防衛装備品の共同研究を進めていくことで合意した。当面の研究課題としては、船舶の流体力学分野が決まった。
政府関係者によると、研究対象には艦船のプロペラ音を低減し、敵に探知されにくくする方法の開発が候補に挙がっている。
安全保障面の協力強化では、自衛隊と豪州軍の共同訓練を拡大していくことでも合意した。
首脳会談では議題にならなかったが、豪政府が提訴し、オランダ・ハーグの国際司法裁判所(ICJ)が中止を言い渡した南極海での日本の調査捕鯨に関し、安倍首相は、ICJ判決を受けた国内の反発についてアボット氏に説明した。両氏は、この問題が2国間関係全体に影響を及ぼさないよう努めることで一致した。
7日に行われた日豪首脳会談で、安倍首相はオーストラリアのアボット首相を「特別なパートナー」と位置づけ、安全保障面での協力を強化していくことで合意した。両国が同盟関係を結ぶ米国のアジア太平洋重視政策(リバランス)を支持することでも一致し、アジア太平洋地域の安全保障に、「日米豪」の枠組みで対応していく方針を確認した。
米のアジア重視支持
首脳会談に先立ち、昨年12月に発足した国家安全保障会議(日本版NSC)4大臣会合の「特別会合」が首相官邸で開かれた。アボット氏は外国首脳としては初めて、NSCの会合にゲストとして招かれた。
安倍首相「日本と豪州は自由や民主主義などの普遍的価値、アジア太平洋地域の平和と安定に戦略的利益を共有している」
アボット氏「NSCに出席する最初の外国首脳に選ばれて光栄だ。日本との協力関係をさらに強化していきたい」
約1時間の会合で、アボット氏は、安倍首相と麻生副総理、菅官房長官、岸田外相、小野寺防衛相とアジア太平洋地域の情勢について意見交換した。
日豪両国は、第1次安倍内閣時代の2007年、日豪安保共同宣言に署名し、安全保障面での協力強化で合意した。その後も、外務・防衛閣僚協議(2プラス2)を定期的に開き、関係を深めている。背景には、東シナ海や南シナ海で海洋進出の動きを強める中国への警戒感がある。
貿易立国の日豪両国にとって、「航行の自由」の確保は死活的に重要な共通の利益であり、中国の挑発行為は見過ごせない問題だ。昨年11月に中国が突然、東シナ海上空に防空識別圏を設定すると発表した際も、豪州政府はいち早く非難の声を上げている。
首脳会談では、中国を念頭に「航行と上空飛行の自由の確保は地域共通の関心である」と確認した。地域の紛争についても、「力ではなく、国際法に従って解決するべきだ」との認識で一致した。
防衛装備品 共同で研究
日豪首脳会談では、安全保障面での協力の具体策として、防衛装備品の共同研究を進めていくことで合意した。当面の研究課題としては、船舶の流体力学分野が決まった。
政府関係者によると、研究対象には艦船のプロペラ音を低減し、敵に探知されにくくする方法の開発が候補に挙がっている。
安全保障面の協力強化では、自衛隊と豪州軍の共同訓練を拡大していくことでも合意した。
首脳会談では議題にならなかったが、豪政府が提訴し、オランダ・ハーグの国際司法裁判所(ICJ)が中止を言い渡した南極海での日本の調査捕鯨に関し、安倍首相は、ICJ判決を受けた国内の反発についてアボット氏に説明した。両氏は、この問題が2国間関係全体に影響を及ぼさないよう努めることで一致した。
日本が安全保障に関して、同盟や同盟に近い取り交わしをしているのは、「日米安全保障条約」と、「日豪安保共同宣言」のふたつです。
東アジア、太平洋地域では、この三国のつながりがあれば、中国の台頭には十分抑止力となりえます。
オーストラリアは、資源輸出大国でもあり、中国が大きな需要を抱える顧客であることから、ケビン・ラッド首相が登場した当初は、日本より中国に傾斜した姿勢がみられた時もありました。
トニー・アボット首相となった現在は、ジョン・ハワード首相時代の様な、緊密な関係が期待できるのではと、願っていますし可能性がありそうですね。
中国の力を背景とした覇権拡大策が、逆に日豪関係を近づけたともいえるでしょう。
日豪EPAについては、両国がかたくなに原則を主張しあったり、国益を最大限に追求したりせずに、現実をみつめ実現を優先した成果だと言えます。
豪州は、対韓国より譲ってくれていますし、日本も農業保護優先の過去の交渉から、譲歩して実現させることで利益も得る方向への転換をしたことは、歴史的な転換といえ、評価すべきですね。
日豪 対米で思惑一致 EPA大筋合意 日 TPP譲歩誘う材料 豪 牛肉輸出猛追受ける (4/8 読売 スキャナー)
日豪EPA(経済連携協定)が大筋合意した。焦点となっていた豪産牛肉の関税は「撤廃」ではなく、「引き下げ」で決着。こうした実績を作れたことは、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉で、日本に対し、かたくなに重要農産物の関税撤廃を求めている米国へのけん制材料になると日本政府はみている。米国をにらんだ日豪の思惑の一致が、約7年にも及ぶ交渉を大筋合意に向かわせた。(政治部 田島大志、経済部 吉岡みゆき)
日豪EPA交渉が大筋合意に至った背景には、早期決着を求める安倍首相の強い意向があった。
<中略>
首相が日豪EPAを重視したのは、日米などが参加するTPP交渉にも影響を与えるとみたためだ。
TPP参加12か国の中では、日米が国内総生産(GDP)合計の約9割を占める。圧倒的な経済力を持つ日米の協議の行き詰まりが、TPP交渉を停滞させる主な原因となってきた。
米側がコメや牛・豚肉など農産品の「重要5項目」について関税撤廃を主張し、日本が猛反発するという足踏み状態が続いている。
日豪EPAでは、牛肉の関税は引き下げるものの、一定程度残すことで合意した。一定の関税維持という実績を作ったことで、政府筋は、「米側も日米協議で無理な要求を突きつけるのは難しくなるだろう」と自信を深めている。
日豪EPAは来年中にも発効する見通しだ。農林水産省は、関税率は初年度から大幅引き下げになると発表しており、豪州産牛肉の輸入量は拡大しそうだ。一方、米国産牛肉はTPP交渉が妥結しない限り、従来通り38.5%の関税がかかる。米側が関税撤廃にこだわり続ければ、TPP交渉は長引き、豪州産牛肉に日本市場での占有率(シェア)を奪われかねない。
ただ、関係者の間には「米国は日豪の合意を意に介さない」、「(米の反発を呼んで)TPP交渉には逆効果」などの見方もある。
日本は4月下旬のオバマ米大統領の来日に合わせた大筋合意を目指し、農産品の関税維持につながる米側の譲歩を粘り強く引き出していく構えだ。
一方、ブラジルに次ぐ世界第2位の牛肉輸出国の豪州は、日本の牛肉市場での優位を維持・拡大するために、日本との妥協を急いだとみられる。
豪州と米国は日本の牛肉市場でライバル関係にある。かつては、シェアはほぼ互角だったが、2003年末に米国で発生したBSE(牛海綿状脳症)により、米国からの輸入が停止したことで豪州が一気にシェアを伸ばした。
しかし(05年末に輸入が再開されたうえ、13年2月には輸入できる牛の月齢も緩和されたことなどで、13年の米国の日本への牛肉輸出量は19万トンと、12年より6万トン増えた。これに対し、豪州の13年の輸出量は29万トンと米国を上回ったものの、前年より3万トン減った。
当初、豪州は日本に関税撤廃を求めていたが、米国産牛肉の猛追を受け、今年に入って現実的な妥協点を探る姿勢に転じた。米国に先んじて、日豪EPA交渉をまとめれば、米国産牛肉よりも有利な関税率で日本に牛肉を輸出できるという思惑が働いたとみられる。
農産物守り一辺倒から脱皮 日本の交渉 自動車譲歩引き出す
今回の日豪EPA交渉は、これまでの日本の交渉姿勢とは一線を画しており、今後のモデルとなる可能性もある。
日本はスイスやインドなど13の国・地域とEPAを結んでいるが、農産物関税を守ることを最優先し、自動車など工業品で相手国の譲歩を勝ち取れなかった。例えば、2009年に発効したベトナムとのEPAでは、牛・豚・鶏肉など農産物の関税維持を優先し、日本から輸出する自動車の関税は残ってしまった。
渡辺頼純・慶大教授(通商政策)は、今回の日豪EPAの大筋合意について、「牛肉関税の引き下げと引き換えに自動車で譲歩を引き出したのは成果だ」と評価する。
今年仮署名した韓豪FTA(自由貿易協定)では、韓国が牛肉関税を15年かけて撤廃する条件で、豪州の自動車関税を即時撤廃する内容になっており、これと比べても日豪EPAは好条件になった。今回の日豪EPAで日本の通商交渉は、「ひたすら農産物の関税を守るものから、攻めの姿勢へと一皮むけた」(経済官庁幹部)といえそうだ。
ただ、今回の大筋合意による直接的な効果は限定的だ。日本から豪州への主力輸出品は自動車で、総輸出額1兆4708億円(12年)のうち約5割を占める。ただ、日本から豪州への輸出台数は約36万台と最大市場の米国(約172万台)の5分の1に過ぎず、5%の関税が撤廃されても、日本全体として大きな伸びは見込めない。
日豪EPA(経済連携協定)が大筋合意した。焦点となっていた豪産牛肉の関税は「撤廃」ではなく、「引き下げ」で決着。こうした実績を作れたことは、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉で、日本に対し、かたくなに重要農産物の関税撤廃を求めている米国へのけん制材料になると日本政府はみている。米国をにらんだ日豪の思惑の一致が、約7年にも及ぶ交渉を大筋合意に向かわせた。(政治部 田島大志、経済部 吉岡みゆき)
日豪EPA交渉が大筋合意に至った背景には、早期決着を求める安倍首相の強い意向があった。
<中略>
首相が日豪EPAを重視したのは、日米などが参加するTPP交渉にも影響を与えるとみたためだ。
TPP参加12か国の中では、日米が国内総生産(GDP)合計の約9割を占める。圧倒的な経済力を持つ日米の協議の行き詰まりが、TPP交渉を停滞させる主な原因となってきた。
米側がコメや牛・豚肉など農産品の「重要5項目」について関税撤廃を主張し、日本が猛反発するという足踏み状態が続いている。
日豪EPAでは、牛肉の関税は引き下げるものの、一定程度残すことで合意した。一定の関税維持という実績を作ったことで、政府筋は、「米側も日米協議で無理な要求を突きつけるのは難しくなるだろう」と自信を深めている。
日豪EPAは来年中にも発効する見通しだ。農林水産省は、関税率は初年度から大幅引き下げになると発表しており、豪州産牛肉の輸入量は拡大しそうだ。一方、米国産牛肉はTPP交渉が妥結しない限り、従来通り38.5%の関税がかかる。米側が関税撤廃にこだわり続ければ、TPP交渉は長引き、豪州産牛肉に日本市場での占有率(シェア)を奪われかねない。
ただ、関係者の間には「米国は日豪の合意を意に介さない」、「(米の反発を呼んで)TPP交渉には逆効果」などの見方もある。
日本は4月下旬のオバマ米大統領の来日に合わせた大筋合意を目指し、農産品の関税維持につながる米側の譲歩を粘り強く引き出していく構えだ。
一方、ブラジルに次ぐ世界第2位の牛肉輸出国の豪州は、日本の牛肉市場での優位を維持・拡大するために、日本との妥協を急いだとみられる。
豪州と米国は日本の牛肉市場でライバル関係にある。かつては、シェアはほぼ互角だったが、2003年末に米国で発生したBSE(牛海綿状脳症)により、米国からの輸入が停止したことで豪州が一気にシェアを伸ばした。
しかし(05年末に輸入が再開されたうえ、13年2月には輸入できる牛の月齢も緩和されたことなどで、13年の米国の日本への牛肉輸出量は19万トンと、12年より6万トン増えた。これに対し、豪州の13年の輸出量は29万トンと米国を上回ったものの、前年より3万トン減った。
当初、豪州は日本に関税撤廃を求めていたが、米国産牛肉の猛追を受け、今年に入って現実的な妥協点を探る姿勢に転じた。米国に先んじて、日豪EPA交渉をまとめれば、米国産牛肉よりも有利な関税率で日本に牛肉を輸出できるという思惑が働いたとみられる。
農産物守り一辺倒から脱皮 日本の交渉 自動車譲歩引き出す
今回の日豪EPA交渉は、これまでの日本の交渉姿勢とは一線を画しており、今後のモデルとなる可能性もある。
日本はスイスやインドなど13の国・地域とEPAを結んでいるが、農産物関税を守ることを最優先し、自動車など工業品で相手国の譲歩を勝ち取れなかった。例えば、2009年に発効したベトナムとのEPAでは、牛・豚・鶏肉など農産物の関税維持を優先し、日本から輸出する自動車の関税は残ってしまった。
渡辺頼純・慶大教授(通商政策)は、今回の日豪EPAの大筋合意について、「牛肉関税の引き下げと引き換えに自動車で譲歩を引き出したのは成果だ」と評価する。
今年仮署名した韓豪FTA(自由貿易協定)では、韓国が牛肉関税を15年かけて撤廃する条件で、豪州の自動車関税を即時撤廃する内容になっており、これと比べても日豪EPAは好条件になった。今回の日豪EPAで日本の通商交渉は、「ひたすら農産物の関税を守るものから、攻めの姿勢へと一皮むけた」(経済官庁幹部)といえそうだ。
ただ、今回の大筋合意による直接的な効果は限定的だ。日本から豪州への主力輸出品は自動車で、総輸出額1兆4708億円(12年)のうち約5割を占める。ただ、日本から豪州への輸出台数は約36万台と最大市場の米国(約172万台)の5分の1に過ぎず、5%の関税が撤廃されても、日本全体として大きな伸びは見込めない。
問題は日豪EPAの先行が、頑強に関税ゼロに拘る米国への牽制となるのか、記事で指摘されているように、「米国は日豪の合意を意に介さない」、「(米の反発を呼んで)TPP交渉には逆効果」となるのかですね。
米議会では、日本抜きでTPP交渉をまとめようという声も出ているのだそうですね。
米議会、TPP交渉に悲観的見方―日本抜きの合意も - WSJ.com
今後の成り行きに注目です。
# 会談に臨む安倍首相とアボット首相
この花の名前は、時計草
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