Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

害虫

2008-10-01 | 日本映画(か行)
★★★★ 2002年/日本 監督/塩田明彦
「苦手なテーマだけど、映画としては面白い」




作品としては決して悪くないけど、暗い話だなあ。中学生が主人公で、暗い話と言うのが、私は苦手なのだ。高校生ならいい。この差は私の中でかなり明確になっている。気が滅入るようなストーリィでも惹きつけられる作品はたくさんあるが、中学生の場合、なぜかいたたまれない気持ちになる。高校生になったら、世の中なんてこんなものさ、人間なんてみんな孤独なものだよ、と言ってみせても大丈夫だろうが、中学生にはまだそのセリフは早い、それが私の考えだ。

誰とのやりとりかわからない手紙の文面が黒いスクリーンの中央、白ヌキ文字で入る。即座に「リリイ・シュシュ」で味わった嫌な気持ちが蘇る。あの映画が私にとって、いかに酷いトラウマになっているかがこの作品を見てよくわかった。そう言えば、あれにも蒼井優は出ていたっけ。

棒っきれのような細い生足を包む白いソックス。宮崎あおいの足元を映すショットが幾度となく繰り返される。まあ、何なりと読み取れるシーンではあるのだろうが、最終的に彼女が救われないということにおいて、思考も停止する。なぜか、男どもが心惹かれる女。学校の教師も、コンビニで出会った男も、友人が思いを寄せる同級生も、ひいては母親の愛人までもがサチ子の虜となってしまう。13歳のファム・ファタール。害虫とは、まさしく彼女のことなのか。そこにポイントを絞れば、宮崎あおいの魅力もふんだんに表現され、面白い作品かも知れない。しかし、元に戻るが、彼女を取り巻く環境の無責任さにいたたまれなくなり、まともにサチ子という女に向き合えなかった。どう転んでも、うまくいかない人生ならば、いっそのことエンディングはサチ子を地獄に突き落とせば良かった。いや、あの展開は地獄の入口に入ったことのしるしか。そう考えれば、余韻の残るエンディングではある。

映画とはあまり関係ない話。ヒッチハイクをするサチ子が最初に乗せてもらうトラックの運転手、木下ほうか。「遠慮せんと、リンゴ食べや」。彼の柔らかい関西弁が、まるで暗い森の中にひと筋きらめく光のように心を満たした。関西弁のまろやかなイントネーションに、物語は一気に希望に向かうのだと言うイメージすら湧き起こされたのだ。何だかおかしなところで、関西弁の良さを確認した。