Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

黄泉がえり

2008-10-04 | 日本映画(や・ら・わ行)
★★★★ 2002年/日本 監督/塩田明彦
「したたかな塩田監督」



本作は、純愛だとか、ファンタジーとか、そういうカテゴリーのものでしょうか。多分にそれは、主演が竹内結子であったり、柴崎コウのライブシーンと共に無数の光が夜空を流れるようなシーンがラストを飾るためであり、正直私はこれはホラーだな、と強く感じたのです。だって、実に気味の悪い演出がそこかしこに見受けられますから。まず主演の草薙剛の存在がとても不気味です。死んだ人が蘇ると言う現象に対して何の驚きも見せず、淡々と調査を続けます。色白で頬のこけた草薙剛が焦点の合わない目線でぼんやりを何かを見つめるようなカットが多々あり、まるで彼が幽霊のように見えます。スクリーンに誰もいないというシーンも多いですし、カメラの並行移動もじっとりとしています。哀川翔が再び死後の世界に引きずられるCGでも、顔がぐにゃりと変形する様にぞっとしました。

また、音楽が少ないことで、ラストの柴崎コウのライブシーンが生きているわけですが、それが本来の目的ではないような気がします。やはり、前半部の気味悪さは、圧倒的な物語の省略から生まれているのですが、音楽を入れないことも、その省略の一環だと思えるのです。

ゆえに、これだけミーハーな俳優陣を集めてもなお、自分らしい演出を貫いた塩田監督に映画監督の気骨を感じました。ジャニーズ絡みで、テレビ局資本の大作で、おそらく妥協しなければならない部分は多かったと思いますが、それでもなお、しっかりと監督の個性が生きていますし、一方以前の塩田作品なんぞ見ていない人々にとっても「ファンタジー感動作」としてのカタルシスはちゃんと与えられているのですからね。これは、凄いことだと思います。この辺のファンタジーテイストのうまい取り込み方は、脚本が犬童一心ということも大きいのかも知れません。自分の撮りたい作品と、ヒットさせねばならない大作物。その両者の間をうまく泳いでいますね。「ありがとう」を撮った万田監督もしかりでしょう。