Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

サン・ジャックへの道

2008-10-20 | 外国映画(さ行)
★★★★☆ 2005年/フランス 監督/コリーヌ・セロー
「旅、ときどき夢想」


信仰心のない仲の悪い3人兄弟が母の遺産目当てに巡礼の旅に参加する。こう聞いただけで、全ての方が、ケンカしながら仲直りする話だろ?と思われるに違いありません。そして、まさしくその通りなのです。激しくネタバレですね。でも、言っちゃっても構わないんです。だって、それでも、とても面白いですから。これを見た数日前に「口裂け女」を見てかなりヘコんでいましたので、すっかり心が清められたような気分になりました(笑)。

予測できる展開ながらも面白いのは、自分も巡礼路のツアー参加者になったような気分にさせられるからです。ヨーロッパの田舎町の美しい風景に目を奪われ、宿が決まらないいざこざにハラハラし、帰りたがるワガママな人にうんざりし。そして、旅が進むに連れ、少しずつ打ち解けあい、距離が近づき、互いの不安を癒し合う。「明日へのチケット」もそうですが、旅って、なんて素敵なんだろうと思わずにはいられません。

そして、本作をより豊かにしているのは、夢のシーン。旅に参加する人々のトラウマを顕在化させた美しい幻覚または夢想と言った方が良いでしょうか。フランス語のできないアラブの少年が巨大なアルファベットの「A」と言う文字に押しつぶされるユーモアにあふれたものから、美しく幻想的なものまで。この様々な夢想のシークエンスが、本作を単純なロードムービーに止まらない、個性的な逸品にしています。思い描く人生の道からちょっぴり外れた3人兄弟の行く末は、どうなるのでしょうか?その結末を想像しながら共に旅すれば、人生捨てたもんじゃないって、心がほんわり温かくなること受け合いです。