Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

フリージア

2008-10-26 | 日本映画(は行)
★★★★ 2006年/日本 監督/熊切和嘉
「いつ、どこか、わからない場所」


犯罪被害者が加害者を処刑することができる“敵討ち法”が存在する近未来の日本を舞台に、感情を失い機械のように任務を果たすプロの執行代理人が、過去のある事件でつながった宿命の相手と対決するさまを描く。

近未来の日本という設定ですが、全然未来っぽくないんですよね。昔ながらの建物もあるし、すごい車やロボットが出てくるとか、一切なし。片や、映像は一貫してセピアトーンで、銃で撃たれた時にぶしゅっと飛ぶ血にデジタル処理がされていたりして、スタイリッシュです。この無国籍で不思議な感じ、私は好きですね。

それに仇討ちが始まる前に周辺住民に一時避難を勧告するアナウンスが流れるのですが、これが小学校のグランドに流れる校内放送みたいでね。人殺しがあるから、よい子の皆さんは逃げなさい、とでもいいたげな感じ。不気味です。この避難勧告シーンが私は気に入りました。

ひどいトラウマによって痛みを感じなくなってしまった男が主人公ですが、人間ドラマとしてのうねりみたいなものは、熊切監督は敢えてそんなにフォーカスさせようしていないのではないか、と私は感じました。2時間の物語の集結として、トラウマを乗り越えるという結論にはしているけれどもね。仇討ち、凍る子供、痛みを感じない、狂ったように銃を撃つ…。これらの漫画から想起されるイメージを熊切監督流に料理したと言う感じでしょうか。冷たくて、暗くて、感情のない世界、私たちがすぐにイメージすることの難しい、日本のどこでもない場所。この舞台こそが主人公に思えましたし、甘っちょろさ皆無の無慈悲な感じが、熊切監督らしくて好きです。これは、感覚的な好き嫌いが別れる映画かも。