Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

口裂け女

2008-10-11 | 日本映画(か行)
★★★★ 2006年/日本 監督/白石晃士
「私も乗りうつられないようにしなければ」




あれは、まだ息子が1歳前後の頃でしょうか。離乳食の皿をそこいらにぶちまけ、机の上でぐずりまくり、ぎゃあぎゃあと泣きやまない彼をぶったことがあります。おそらく締め切り前で私もイライラしていたんでしょう。ぶった直後に自分自身が情けなくなり、涙が止まりませんでした。母親なら誰しもこんな苦々しい記憶があるはずです。

ですから、この作品。子育て経験のある女性は、薄ら寒いものを感じるに違いありません。それは、口裂け女が「どんな母親にも」乗り移ってしまうからです。映像としての恐ろしい描写よりも、どんな母親でも口裂け女になりうる、ということの方が恐ろしかった。乗り移られること=自分の手で我が子を殺すことになるわけですからね。最後に首を落とされた母親なんぞ、それまでの虐待のために罰を受けたかのようです。心を入れ替えたにも関わらず。

口を裂かれたり、殺されたり、子供たちが酷い目にあいますので、人にお勧めする類の作品ではありません。ただ「口裂け女」という都市伝説は、ポマードと言えば消えるとか、猛スピードで走るとか、ギャク漫画のキャラクターのような存在になりつつあったと思います。それが、児童虐待という社会問題を絡めて、これほど陰鬱な作品にしあげた、その発想の転換ぶりには感心します。例えば、松本清張の「鬼畜」とか、貴志祐介の「黒い家」なんかも、見せようによってはホラーになりるということですね。(と思って今調べたら「黒い家」は韓国でホラーになってました。森田作品しか観てませんが、これは原作を変えているんでしょうか)

児童虐待をホラー仕立てにすれば、問題作になるのは必然です。しかし、映画を凌駕するような事件が現実に起きていることを考えれば、この手の作品は全くの作り話としてのホラーとはまた違った新ジャンルのようなものなのか、という気もします。日頃ホラーはあまり見ませんのでわかりませんが、そういうジャンルがあるとしたら、気が滅入りますので続けて何本も見られませんね。いずれにしろ子役たちが心配なので、撮影後のケアは十分にお願いします。