Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

女系家族

2009-02-04 | 日本映画(な行)
★★★★☆ 1963年/日本 監督/三隅研次
「えげつないわぁー」

じぇにや、なにがなんでもじぇにもらいまっせえ~。って、あんたら、みんな、ほんまにえげつないわぁ。

財産相続をめぐるどろどろ絵巻。なんだけど、もう可笑しくて、可笑しくて。大阪人特有のねちゃこい丁々発止を見ながら、これは「世界遺産」に認定。ってのは、大げさかもしんないけど、この文化はのこさんとあかんでしょう、と。

舞台となった船場のすぐそばで生まれ育ったものですから、昨今の南船場&北堀江の開発ぶりには、正直大阪文化壊滅の危機を感じています。美容院が乱立し、見渡せば気取ったカフェばかり。プチ表参道か?プチ自由が丘か?こんな街、大阪やない。とどめを刺したのがなんば高島屋の前にマルイができたこと。あのスクランブル歩道になんで「○I○I」のイルミネーション?ここはどこやねん?だからとまでは、断言しないけど、東京の真似しいの結果が、ミナミの街を追い詰めている。ついにそごう本店も売却の動き。ミナミの火は消したらアカンよ。大阪人のド根性は、どこへ行ったんや。どあつかましさは、どこへ行ったんや。

と、私の大阪人魂に火をつけてくれましたよ、この作品。やっぱ、鴈治郎さんが最高。「へ?なんだす?」の聞こえないフリに、飲んでたコーヒー吹きました。これだけでも見る価値あります。鴈治郎さんはともかく、他の俳優陣もみんなうまいです。京マチ子、田宮二郎、若尾文子、北林谷栄。豪華な布陣ですわ。そして、計算高いおばちゃん、浪速知恵子。浪速の人間国宝と言っていいでしょう。

えげつない話なんですけど、眉をひそめるような毒々しさじゃないんですね。人間の滑稽さ、浅はかさ、そして逞しさを感じさせてくれます。そして、撮影が宮川一夫ですので、船場の旧家をうまく活かした美しい映像も堪能できます。白くむきだしになった若尾文子のうなじを北林谷栄が手ぬぐいでふいているシーンなんて、思わず拝みたくなるようなありがたいショットでした。