Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

レッスン!

2009-02-08 | 外国映画(や・ら・わ行)
★★★☆ 2006年/アメリカ 監督/アントニオ・バンデラス リズ・フリードランダー
「ちょっとうまくまとまり過ぎかな」

不良高校生を社交ダンスを通じて更正させるという実話に基づいた作品。アントニオ・バンデラスの颯爽としたダンスぶりは確かに素敵だし、ヒップホップダンスの高校生がどんどん社交ダンスがうなくなるのは、見ていて楽しかった。でも、ちょっと私にはうまくまとまり過ぎなのが物足りない。

洋画で言うと「リトル・ダンサー」「サルサ!」邦画では「フラガール」「Shall we ダンス?」など、好きなダンス映画はたくさんある。これらの作品が好きなのは、主人公たちはダンスと引き替えに何かを失ってしまう、ということ。つまり、物語の中で何かを捨ててまでダンスを選択する、という葛藤があるのね。「リトル・ダンサー」は炭坑の街を捨てるし、「サルサ!」では白人のアイデンティティを捨てる。「フラガール」では、しずちゃんが父を看取ることよりも舞台を選択する。彼らの「それでも私は踊りたい!」という決意が見事な踊りと相まって、感極まる瞬間を呼び起こす。

この「レッスン!」でも悪い仲間を捨てて、ダンス会場に駆けつけるというくだりがあるんだけども、その前の葛藤の部分の描き方がとても弱いので、沸き立つような感情があまり起こってこない。本作が自分自身に価値を見いだせない少年少女がダンスを通じて自信を取り戻すという成長物語だと言うのはわかるんです。でも、それならなおさらもっと生徒1人ひとりの生活ぶりや心情を丁寧に描き出して欲しかったなあというのが私の実感。

教師であるデュレイン自身についてもしかりで、彼らに打ち込むあまりに本業であるスクール生が全員辞めてしまうとか、好きな女性の理解が得られなくて別れてしまうとかそんなことはないのね。あったとしても、フロアで踊る黒人たちを偏見の目で見つめる白人のおぼっちゃまたちがいざこざを起こすくらいなもんで。私はこの対立関係を中途半端に入れてしまったことが、生徒1人ひとりの心情に迫れなかった要因ではなかろうかと思う。

デュレイン自身も彼らとの交流を通じて何かを乗り越えるという展開になれば、相乗効果でもっと面白くなったと思うのです。ラストの大団円もダンス映画としては王道でしょうね。でも、この大団円の宴の後に、心に何かがチクリと残る。そういう余韻のあるダンス映画の方が私は好きかな。