Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

ゲルマニウムの夜

2011-06-16 | 日本映画(か行)
★★★★☆ 2005年/日本 監督/大森立嗣

「神を試す男」


花村萬月の小説ってのは、映画向きなのかも知れないですね。私は読んだことないので偉そうなことは言えないんだけど、まあ映画作品を見ればもの凄くどんよりした暗い小説なんだろうなってことは想像が付きます。で、いざ映像になると、その暗さの振り切れ具合がいいんでしょうね。凄く芯の通った作品になる。

冒涜に冒涜を重ねる男が主人公。神父からは性的いやがらせを受け、殺人はするわ、獣姦はするわで、観る方によっては、気分が悪くなること間違いなし。私自身はその手の作品には拒否反応ないし、大丈夫だと思ってはいた。むしろ、もっと哲学的で主題をはぐらかされるタイプの作品かと思って構えていたんだけど、それは見事に裏切られる。これは、実にわかりやすい作品なのですよ。神をとことん疑い、神を試すお話。

「こんなに冒涜を重ねる私に、なぜ神は罰を与えないのですか」

うん、なんか胸がすくよね。神は等しく試練を与え、神は等しく恩恵を与える。そんなの嘘っぱちじゃねえか。

何といっても主演を務める新井浩文がすばらしい。これまで見てきた彼の出演作の中でベスト1です。特典映像の中で監督が「立ち姿で存在感を出せる役者として彼を選んだ」と言っていますが、まさにそう。家畜の排泄物と肥料と精液の匂いが漂ってきそうな教会の荒れた泥地で、ただただでくの坊のように突っ立っている。その姿が時に神々しくさえ映るのです。