Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

俺たちに明日はないッス

2011-06-30 | 日本映画(あ行)
★★★★ 2008年/アメリカ 監督/タナダ・ユキ

「タナダ・ユキの狙い」


「色即ぜねれいしょん」と同じ向井康介が脚本。主題も同じ青春もので主人公がアレしか頭にない男子高校生と、とことん酷似な設定なのですが、この2作、見比べるとその違いが非常に面白いワケです。

「色即」がバカでマヌケで微笑ましいのに対して、本作は驚くほどじめじめしていて、暗い。そのムードを成すのは、男子高生よりも、彼らを受け止める女子高生にあります。担任教師と付き合っている友野、投げやりにバージンを与えるちづ、デブ専の秋恵。この時期、男子よりも女子が大人であるというのは誰もがわかるところだけれども、彼女たちの人生に対する驚くほどの醒めようはどうだろう。

童貞は「捨てる」と表されるけれども、彼らは捨てないと前に進めないと思っているし、もしかしたら捨てた後にはいいことが待っているかも、という期待感すらある。でも、女子は違う。童貞を捨てるという事柄に対して、それがナンボのもんじゃいという冷たい視線を送る。そして、現実にそうなんである。「男の子ってカワイイわねえ」という視点はここには全くない。

原作漫画は読んでいないのですが、人物造形に大きく手を加えるわけはないでしょうから、このどんよりとしたムードは漫画にもあるのでしょう。
いずれにしろ、この手の作品は捨てたい男の子ばかりに焦点が行くのに対して、本作ではそんな彼らを見つめる女子たちがとても印象深く描かれている。「童貞を捨てること」がイベント化され人生の突破口のようにすら感じられる男子たちは、彼女たちによってみなどん底に突き落とされる。でも、まあ人生ってこんなもんだよな。