Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

ブラック・スワン

2011-06-17 | 外国映画(は行)
★★★★☆ 2010年/アメリカ 監督/ダーレン・アロノフスキー
<TOHOシネマズ梅田にて鑑賞>

「最優秀主演女優賞を獲るために」

ナタリー・ポートマンがオスカーを獲るために作られた作品、と言っても言い過ぎではないんではなかろうか。昨今、オスカーを獲るのはモノマネ演技ばかりだったけど、こちらは、彼女がどれほど努力して役に近づこうとしたかがひしひしと伝わってきた。もちろん、役者の演技っていろんな面で評価することができるだろう。何の苦もなく自然体でその役柄になってしまう、センスありきの人もいるだろうし、そういう演技が好きってこともある。私だって、ぼうっと立っているだけで様になるよな俳優がすごく好きだ。でも、一方で役になりきる努力が見えることは、それはそれで快感だ。

この映画の面白さはナタリーの演技だけでそれ以上でもそれ以下でもない、と断ずるのは簡単だけど、彼女の努力にそんな言葉を浴びせることは私には絶対できないな。ニナが黒鳥を踊るために極限にまで追い詰められていることと、ナタリーがこの役を演じるために極限までに自分を追い込んだことが見事にオーバーラップしているんだもの。ニナが作品内で現実と妄想の境界がつかなくなるように、おそらくナタリーは自分とニナの境界が付かない境地にいたんだと思う。その二重構造が面白いのです。

見どころはナタリーの演技だけ、とも決して思えないのは、ダーレンの偏執的な演出。ニナが妄想の世界を行ったり来たりする様、これこそが監督の腕の見せどころ。最も彼のらしさが出ていたのは、クライマックスのブラック・スワンを踊る時のナタリーの身体的な変容だろう。黒い羽根が生えてくるってのは、誰でも思いつくんだろうけど、先端部が皮膚の間を突き破って出てくるあの気持ち悪さね。背筋がぞぞーっとなるよな、気味悪さ。あれがダーレンの持ち味でしょう。だって、バレエの話なんだけど、作品全体を通して、バレエの美しさなんてこれっぽっちも表現されてないんだもん。

その偏執的な演出が、本作をホラーとも言わしめてしまう個性を生んでいる。DVDが出たらぜひもう一度見てみたいです。