Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

色即ぜねれいしょん

2011-06-29 | 日本映画(さ行)
★★★★☆ 2008年/日本 監督/田口トモロヲ

「法然!法然!法然!」

「アイデン&ティティ」に引き続き田口トモロヲ監督、映画ファンのツボをガッツリ抑えてますなあ。これは、おもしろかったぁ。

前作「アイデン&ティティ」は原作みうらじゅん、脚本宮藤官九郎だったわけです。これで、面白くないワケがなかろうと思っていたら、予想通り楽しい作品で。ところが、今度は同じ原作みうらじゅんでも、脚本を変えてきた。山下敦弘監督の長年の相棒、向井康介。青春の痛み、やるせなさ、エロさを書かせたら右に出る者なしの強者ですよ。これまた、面白くないワケがない。そうしたら、これまた予想通りとても楽しい作品でした。

むさくるしい男子高校生が叫ぶ法然コールが幕開けで、つかみはバッチリ。体育館舞台の裏から現れるあのきらびやかな法然像は、本当に東山高校にあるらしいですね。それから続く、仏教系男子高校生たちが繰り広げる、アホ丸出しの青春ストーリー。フリーセックスの島があると信じて疑わないバカ男3人組、オバチャンの目から見たら微笑ましいの、なんの。はいはい、アンタらの頭の中にあるのは、それだけやな。

バカはバカなりに切ない。それがきちんと伝わってくるところが、この映画のいいところでね。主演の若手俳優3人がのびのびと自然に演技していることに加えて、脇役のミュージシャン俳優がとてもいい演技をしている。ひとりは、家庭教師役を演じる「くるり」の岸田繁。もう一人が、前作「アイデン&ティティ」から引き続きの出演、民宿のオーナーを演じる「銀杏BOYS」の峯田和伸。まあ、このふたりがいい味出してる。演技は決してうまくないけど、見ているものを引き込む絶妙な間や雰囲気があって。この辺は長年脇役をやってきた田口トモロヲ監督の演出の腕、なんでしょうかねえ。主演の渡辺大和くんも本業はミュージシャンらしいしね。田口トモロヲだって、「ばちかぶり」のボーカルなワケで、そういうミュージシャンつながりのあ・うんの呼吸が作品に満ちていて、とても心地いい。

主人公の両親もリリー・フランキーと堀ちえみで、いわば俳優が本業ではないふたり。でも、ひとり息子がかわいくてしょうがない優しくてのんびりした夫婦を自然に演じていてとても微笑ましい。田口トモロヲ監督の素人俳優に対するの演出が抜群に光る1本です。