Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

赤い月

2011-06-20 | 日本映画(あ行)
★★☆ 2003年/日本 監督/降旗康男

「一皮剥けたい主演女優への演出にしてはぬるすぎる」

<小樽で生活を営んでいた森田波子は、夫・勇太郎とともに満州へ移住し、造り酒屋“森田酒造”を開業。やがてこの商売で成功を収めた彼らは3人の子供を育てながら幸せに暮らしていた。また、自由奔放な愛を貫く波子は、かつての恋人で軍人の大杉との再会に胸躍らせ、関東軍秘密情報機関諜報員の氷室へ淡い想いを寄せていた。だが1945年8月、ソ連軍の満州侵攻で状況が一変。勇太郎の留守中に酒屋は崩壊するのだった…>

伊勢谷友介が見たくて鑑賞。彼はいつでもカッコイイのですけども。それはさておき。

本作は、満州における日本人の苦悩とか、戦争の悲惨さとか、そんなものはどうでもよくて、とどのつまり「森田波子とその男たち」の物語なんですよね。なのに、波子を演じる常盤貴子が全く魅力的に描かれていない。作品の根幹がすっぽり抜け落ちているから、これはもうどうしようもない。残念だけど。

満州で苦労しながら出世する夫がいるというのに、昔の男に会うのに浮き足だったり、家に出入りする若い男にときめいたり。そんな波子の自由奔放さは、夫の目の前で別の男をダンスに誘うようなシーンで表現されているわけですが、何とまあベタな演出。

波子というオンナは、瀕死の男に生きていくエネルギーを与えるために自らまたがるようなオンナなわけです。それが、是か非かはおいておいて、そういうオンナであるということの納得感を、このクライマックスシーンまでに観客に受け付けなくてどうする、と思ってしまう。常盤貴子はどこまでも、ただのいきがったお嬢様にしか見えない。

寺島しのぶや中谷美紀のように、「一皮剥けた女優」になるための企画だったんだろうけどね。常盤貴子よ、どこへ行く。未だに、これと言った代表作もなく、袋小路な気がするのは私だけでしょうか。