Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

花様年華

2011-06-26 | 外国映画(か行)
★★★★★ 2000年/香港 監督/ウォン・カーウァイ

「すれ違うたびに薫り立つ」



1962年、香港。新聞社の編集者であるチャウ夫妻がアパートに引っ越してきた日、隣の部屋にもチャンが夫と引っ越してきた。チャンは商社で秘書として働いている。ふたりとも忙しく、夫や妻とはすれ違いが多かった。やがて、チャウは妻がチャンの夫と不倫していることに気づく。怒るチャウは復讐心からチャンに接近するのだが……。

抱擁もキスもないのに、こんなにエロティックな作品はないと思う。アパートの隣人であるチャウとチャン。それぞれの思いを抱えたふたりが廊下ですれ違うたびに、まるでスクリーンの向こうから薫りが沸き立ってこちらに届いてくるようで、その芳香にうっとりとしてしまう。媚薬のような映像。

トニー・レオンもマギー・チャンも大人の色気たっぷりでこの雰囲気を出せるカップルは彼ら以外にしかないよね。マギー・チャンが次々と美しく着こなすチャイナドレスの美しいこと。体のラインがくっきりと浮き上がり、腰をくねらせながらチャウの横を通り過ぎる、その姿の艶やかなこと。とにかく、溜息の連続。

不倫された夫婦の片割れ同士の愛。結ばれることはない2人の恋愛模様に切ないという言葉は似つかわしくない。その想いは燃え上がるというよりも、蝋燭の炎のようにゆらめき、惑わす。あと一歩でその境界を越えそうな肉欲が互いの体にくすぶっている。

ウォン・カーウァイ監督自身を見ると、とてもこんな色っぽい映像を作るセンスの持ち主には全く見えないんだよね。映画界の七不思議のひとつだと思ってるんだけど(笑)。ウォン・カーウァイ作品では本作か「ブエノスアイレス」が私にとってのベストです。