落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

ビョーキな国

2009年02月14日 | lecture
続きまして。
ポラリスプロジェクト主催のセミナー「子どもの性の商品化を止められるか」第1回〜性の売買と、子どもの権利〜にも行って来た。
バレンタインの日にそんなことしててええんですかっちゅーツッコミはナシで。つかバレンタインって何よ?今さら?どーでもええっちゅーねん。
講師はポラリスプロジェクト日本事務所コーディネーター藤原志帆子さん。
ポラリスの勉強会は何回か出席しているが、今回の話はいつもとは少し違って、対象を子どもに限定している。今後このテーマで月1回のセミナーを続けていく予定だそうである。

*コンビニやビデオショップにあふれる性的娯楽メディア。
藤原さん個人はこうしたものがあるからわれわれの生活が豊かになるというのは事実だし、否定はしないという。
だがこうした商品の中に、レイプや女子高生もの、痴漢など犯罪に近いものを題材にしたものが多く、また過激なものほど売れているなかで、子どもがそうした分野の商品になりやすい土壌があるのは見過ごせない。

*グラビア雑誌やAVは主に男性向け。
女性向け、少女向けのコミックに表現されているセックスもまた非人道的である。
たとえば好きな人とはセックスをして当り前で男性は暴力的、女性は受け身でされるがままで、そこに描かれる女性像があまりにも無防備すぎる。

*このような環境の中で氾濫する児童ポルノと児童売春。
現実に被害に遭う子どもたちは後を絶たないのに、事件後の子どもたちを支援する制度が効果的に機能していないため、再発の危険性が高くなっている。
被害に遭った子どもにほんとうに求められているケアが何であるのか、誰もきちんと考えていない。

*日本で大人気の「ジュニアアイドル」「U15」と呼ばれるジャンルの写真集、DVD。
中学生や小学生がきわどい水着や下着で映っているものが「芸術的鑑賞物」としておおっぴらに売買されている。日本の現行法ではこれはポルノにあたらない。

*アダルトコミックやアニメの世界では、子どもが性行為そのものをしている表現が当り前に描かれる。
こうしたものは諸外国では単純所持でも処罰の対象となるが、日本では合法。無規制である。

*児童ポルノに被害者はいない、と長い間いわれてきたが、実際の被害者は一生その写真やビデオのことを忘れることは出来ない。
何年経っても、物心つかない幼いころに撮られたものをもし目の前にいるこの人が見ていたら、という恐怖に苛まれ続ける。

*全世界で性的搾取の被害に遭う子どもは年間100万人。児童ポルノ法違反で有罪になった被告の85%が過去に子どもに性的虐待をしていたというデータがある。つまり、児童ポルノと子どもへの性的虐待は無関係ではなく、被害者はこれだけの数にのぼる、という事実。

*1999年の調査では全世界にネット配信される未成年女児のポルノ画像の73%の発信元が日本だった(その後法改正により改善)。

*未成年の売春について。
アメリカのデータでは、10代の売春婦の90%が近親姦・レイプの被害者であり、85%が性感染症にかかっており、3分の2がPTSDなどなんらかの精神疾患にかかっており、50%が自殺未遂の経験を持つ。
2005年の調査では、日本全国140,600人の風俗嬢のうち20,120人が18歳未満。

*日本の法規制。
日本で未成年の売買春を規制する法律は出会い系サイト禁止法、児童福祉法、児童買春・児童ポルノ禁止法。
近年では子どもから売春を誘うケースが急増中。こうした場合、被害者であるはずの子どもが処罰の対象になるため、事件化しにくくなる。

*援助交際に被害者はいない?
精神的に未熟な子どもが「身体を売る」という決断になぜ至るか?というところまで考えれば、子どもを被害者ととらえることに何の矛盾もないはず。

*大切なのは教育。
間違った性情報のシャワーを浴びている日本の子どもたち。
必要なのは正しい知識と、大人と性について話しあえる環境。

などなど。


満開でございます。

関連レビュー:
AIDS文化フォーラムin横浜 「日本における人身売買〜ホットラインの向こう側」
「人身取引大国ニッポン:女性や子どもたちへの暴力をなくすために」 第一回勉強会
『闇の子供たち』
『児童性愛者―ペドファイル』 ヤコブ・ビリング著
『子どものねだん―バンコク児童売春地獄の四年間』 マリー=フランス・ボッツ著
『アジアの子ども買春と日本』 アジアの児童買春阻止を訴える会(カスパル)編

お嫁通販

2009年02月14日 | lecture
てのひら〜人身売買に立ち向かう会主催のワークショップ第3回「被害者支援の現場から①〜民間シェルターの取り組み」に行って来た。
講師は女性の家HELP前ディレクター大津恵子さん。

HELPというのは明治時代に設立された女性団体・財団法人日本キリスト教婦人矯風会が運営するシェルター。女性とその子どもを対象とする緊急保護施設として知られている。人身売買問題の資料や講演でしょっちゅう耳にする・目にする名前で、いつか関係者の話が聞いてみたいと以前から思っていた。
今回の話は大津さん自身の個人的な体験談が多く、まとまった情報としてすぐに何かの役に立つというような内容ではなかったが、印象に残った点ををいくつかまとめておく。

*人身売買の被害者として保護されたのと同じ人物が、数年後にDV被害者として保護されるケースが増加中。
以前、東南アジアからはエンターティナービザで来日し強制売春の被害に遭う女性が非常に多かった。
エンターティナービザで入国した女性は接客業をしてはいけないことになっているが、雇った店では接客をしなければペナルティが課せられる。
ステージもない狭いスナックに10人以上も「エンターティナー」が雇われ、違法な売春をさせられる実態が問題視され、規制が強化された結果、現在は日本人と結婚し配偶者として来日するアジア人女性が急増。偽装結婚である。
また、日本国内で顧客と結婚する人身売買被害者も少なくないが、知りあった場所が風俗店であり、女性がアジア人である以上、夫婦として初めから不平等な関係になりやすい。また、結婚した男性は女性の借金を肩代わりすることもある。「金で買った嫁」「元風俗嬢」「アジア人」という三重の差別意識が家庭内でのいじめ、虐待に結びつくのは難しいことではない。
それでも女性たちは「自分さえ我慢すれば」と堪えるのだが、多くのケースでは暴力が女性だけでなく子どもにまで及んでいよいよという段階になってから助けを求めてくる。
中には老親の介護をさせるだけさせられ、親が亡くなった後、身ぐるみ剥がれて放り出されたアジア人妻もいる。

*近年、人身売買被害者が「被告」として起訴される事件が知られるようになった。
大津さんが関わったある裁判では、愛知県で強制売春をさせられていたタイ人女性が逃亡、大阪・堺のスナックで働いていたところ、顧客に尾行され、自宅に侵入されてナイフで脅され、レイプされそうになった。
彼女は警察に助けを求めたが、入管法違反(オーバーステイ)と売春防止法違反で逆に起訴されてしまった。
未遂とはいえ彼女は暴行・強姦の被害者であり、売春も自らの意志でしたわけではない。期限内に国外へ退去したくても旅費さえない。
性産業従事者はたとえ人身売買の被害に遭っても、レイプされても傷つく人間じゃない、法の元の平等に守られる権利は必要ない、という誤解がまかり通っている。

などなど。


今日は異常にあったかかったっすね。