落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

ストイックな彼女

2009年02月24日 | diary
何年か前に、某伝統芸能の方が主演する映画に参加したことがあるんですが。
伝統芸能の公演スケジュールは1年以上前からフィックスされてることが多いんだけど、映画のために本業のそれを2ヶ月空けて撮影日程を組んだものの当然予定通りにことは運ばず、1ヶ月ほど撮影期間が延びてしまった。なので後半の1ヶ月間、彼は公演とかけもちで撮影もこなしていた。
ある日、ぐりが夜になってから撮影所に行くと「こんなに遅くから大変だね」「もう遅いから来ないかと思った」と主演のその方が声をかけてくれた。「〜さんこそ早くから遅くまで大変じゃないですか」と答えると、「ううん、今日ボクお昼から。朝、飛行機で高知から帰って来たから」とニコニコとこともなげにいう。
ぐりが呆れて「昨日公演だったんですね。大変ですね。とんぼ帰りで」というと、なんとその方は笑って「全然。ボクらがやってんのは伝統芸能だからさ、いっつもやることおんなじなの。大変じゃない。楽勝」と答えた。
口ではそんなふうにいうけど、彼の仕事ぶりはまったく「大変」どころではない。朝は遅くても7時には撮影所に入っていて、連日深夜、日によっては午前3時までほとんど出ずっぱりである。台詞は多くて難解だし、カツラや衣裳は重たいし、アクションもあるし、その時点では週に数日は泊りで地方公演に行ってたから10日に1日あるかどうかの撮休もつぶれてしまう。ゆっくり眠れる時間なんか何週間もなかっただろうし、体力的には相当キツイはずである。しかも合間にはお弟子さんに稽古までつけていたと聞いてぶっとんだ。
それでも結局3ヶ月間、ぐりが撮影現場で見ていた限りでは、彼が疲れを顔に出したのはたった一度だけだった。

これはぐりが勝手に思ってるだけだけど、彼のような人は「努力する」とか「頑張る」という行為のとらえ方がちょっと人とは違うんじゃないかと思う。
ふつうの人は、何か目標なり目的なりがあって努力するし、頑張る。そして目標なり目的なりが達成されると、また別のゴールを再設定して努力し、頑張る。
でもたぶん、彼みたいな人にとって「努力する」「頑張る」とは、ほとんど呼吸や睡眠と同じように、生きていく上で当り前の行為なんじゃないかと思う。もちろん彼らには彼らなりの目標・目的はあるだろう。けどそれとは別に、彼らの努力は彼らひとり、彼個人のものでは既にない。そこにはふつうの人には想像できないほどの重圧がかかっているはずだ。彼らひとりの努力に、ありとあらゆるものが懸かっている。その重圧を、おそらく彼らは自分自身の一部としてきちんと消化してるんじゃないかと思う。
そういうのは間違いなく特殊な才能がないとできない。ほんとは「才能」なんて言葉は使いたくないけど、こういう人を前にしてしまうと、やっぱどーしたってこーゆー人とあたしは同じ人間じゃーないよなー、としみじみ実感してしまう。
だからどーっだっちゅーこともないんだけどさ。

こないだ安室奈美恵のBEST FICTION tour 2008-2009@代々木体育館に行って来たんですけれど。
実をいうとぐりは安室ちゃんのファンでもなんでもない。アルバムも一枚も持ってないし、ライブに行くのもこれが初めてです。今回のツアーはあまりに評判が良くて何だか観たくなって、追加発売のチケットを買って行って来た。
安室ちゃんも以前に仕事でお世話になっている。仕事柄、前述のように著名人の撮影に立ち会うことはたまーにあるけど、ぶっちゃけていうと著名人もふつうの人間である。間近でナマで見たからってどーっちゅーこともない。大抵はせいぜい「TVといっしょだわ」「意外と小柄/大柄」くらいな印象です。でも安室ちゃんは違った。「おお」と思った数少ないゲーノージンのおひとりです。
ホントにこの人はねー。特別な人です。今さらいうまでもないけど確かにプロポーションはすごくいい。お肌も髪も綺麗です。けどぐりがいちばん驚いたのは体力(爆)。スタミナ。もうねえ、ある意味この人の体力は異常です。こんなん人間とちゃう!ロボか?ってくらい、常にびしっとばしっと、どんな動きも完璧にキマッてる。イケてない瞬間が存在しない。それでいて全身どこも力が入ってる感じはしない。すごく自然。ちょー不思議。振付けがラクだったわけではないと思う。バックダンサーはみんなぜえぜえ息をきらしてへばっていたので(撮影では何度も同じ踊りをくりかえし踊る)。全員安室ちゃんより年下だと思うけど。

今回のライブではMCがまったくないとは聞いてたけど、ほんとに安室ちゃんはいっさい喋らなかった。ずーーーーーーーっと、ひたすら歌って踊りまくる。5〜7曲続けて、衣裳替えやセット替えで1分ほどステージが暗くなって映像が流れ、曲が流れ出すとその後はまた曲と曲の間のインターバルもなしに連続で歌い続け、踊り続ける。
2時間で何曲やったのか数えてなかったけど、踊らないバラード調の曲は4曲だったかな?それ以外は全部、バリッバリにダンサブルな曲ばっかりです。けど最後までまるっきり疲れというものを微塵も見せない。どのフリもどんな動きもパーフェクト。それでまたどこといって手を抜いたようなところ、気を抜いたようなところ、妥協らしきものがまるで見受けられない。全部のパフォーマンスがぱっつぱっつに完全無欠。すげーっす。マジで。すばらしすぎる。ここまで来たらアーティストでありかつアスリートといってもよいのでは。
小さいときから努力家でいろいろと伝説のある彼女だけど、あのパフォーマンスを見てしまうと、彼女もまた「努力」を「努力」と思わない、一種の求道者のように思えてくる。
そんな大袈裟な、なんて笑う人もいると思うけど、とりあえず一度はあのライブ、観た方がいいです。絶対。すごすぎるから。ホントに。
ぐりももっかい観たいです(爆)。


会場外に設置された顔出し看板。
等身大なので顔の面積が異様に狭く、常人ではとてもこの穴からは顔は出せないとゆーシロモノだが、みなさま大喜びで記念撮影してました。ぐりの連れも撮ってた(つかぐりが撮った)。ライブ直後の異常なテンションだからできるわざでございます。
ってかぐりもうっかりグッズとか買いそうになっちまいましたよ。ブースが芋洗いのごとく混んでて断念しましたけどね。