忙しくて切羽詰った時、土壇場の一瞬にはクールに振舞いたい! これが私のせつなる願望です。難しいことは分かっていますがねぇ。
それを平常心でやりとげるには、屈強なポリシーが必要なわけです。
やっぱり、私には無理だ……。
そんな憧れから聴く本日のBGMは――
■Jimmy Raney Visits Paris Vol.1 (Vogue)
ジミー・レイニーは白人ジャズ・ギタリストです。スタイルは一応、クール派で、1950年代にスタン・ゲッツ(ts)のバンドに入って注目され、リーダー盤を吹き込むようになりました。
この人の特徴は、常に冷静だということです。ソロでは媚びたフレーズは弾きませんし、それでいて、泣くところは、しっかり泣いてくれますし、時には野生の咆哮まで聞かせてくれます。
伴奏に回ったときの和声感覚も抜群なので、けっして協調性の無い人ではありませんが、それでいて孤高の雰囲気があり、また反面、優しさの塊のようなイメージもあるのです。
こういう二面性を自然に醸し出すのは、資質もありましょうが、やはり修得した凄い技術をそれらしくない自然体で発揮することが出来る実力があってのことだと思います。
さい、このアルバムは1954年の欧州巡業の際にパリで録音されたもので、演奏メンバーはソニー・クラーク(p)、レッド・ミッチェル(b)、ボビー・ホワイト(ds)を従えたカルテット編成なので、ジミー・レイニーの素晴らしいギターが存分に味わえます。
これまで書いてきた、彼の特質である自然体のクールな情感は、お見事! の一言です。
で、オリジナルは10インチ盤だったこの作品、このCDでは別テイクも収録してあり、そこには案外熱くなっている演奏も聴かれたりして、安心させられる一幕もあります。
共演者では、日本だけの人気者であるソニー・クラークのピアノが、ファンキー味を押さえてマイナーな情感だけで勝負しているところが好ましく、リズム隊も全篇でテンションを落とさない好演です。
気になる曲目は「星影のステラ」「身も心も」「貴方無しには」等々、人気スタンダードばかりなのも、嬉しいですね。
こういう演奏を聴いていると、自分の卑小さに情けない気分にさせられる時もありますが、逆に大らかな気分に浸れる瞬間が、尊いというところです。
ちなみに本日から、ご要望によりジャケ写を大きくしてみました♪