OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

熱血!

2006-02-06 17:56:38 | Weblog

今日はちょっと良いことがあったので、生きる希望が湧いてきたと大袈裟に言い放ちます♪

まあ、たいした事では無いんですが、ここはひとつ、熱くなる演奏を聴いてみましょうか――

Phil Woods at the Montreux Jazz Festival (MGM)

1960年代後半から始まるジャズの不遇時代、多くのジャズメンは本場アメリカで仕事に恵まれず、しかもそれは大物であればあるほど、そうだったのですから救いがありません。そこで欧州に活動拠点を移した者もいれば、スタジオの仕事に生活の糧を求めていく者、あるいは引退同様に故郷に隠棲する者等々、道半ばにして針路変更を余儀なくされたジャズメンが大勢いたのです。

フィル・ウッズ(as) もそうしたひとりで、白人でありながら1950年代からチャーリー・パーカー(as) に傾倒し、その奥義を究めんと奮闘していたのですが、1960年代に入るとリーダー盤を作る機会もめっきりと減り、ほとんどがスタジオでの仕事という有様だったようです。

しかしジャズへの情熱は断ち難く、ついに1968年、渡欧したのです。そしてそこで邂逅したのが、ヨーロピアン・リズム・マシーンと命名したリズム隊、つまりジョルジュ・グランツ(p)、アンリ・テキシェ(b)、ダニエル・ユメール(ds) という熱血トリオ♪ すぐさま製作されたのが、超人気名盤「フィル・ウッズ&ヨーロピアン・リズム・マシーン (Patha)」というわけです。

その素晴らしいアルバムには、ウッズのジャズへの熱い想いがたっぷり詰まっていたわけですが、実際のライブ活動においても、それがどこまでも際限なく表出されていたという証明が、今回ご紹介の作品です。

録音は1969年6月19日、スイスのモントルー・ジャズ祭での演奏です。

まずA面は紹介アナウンスの後、ド迫力の「Capricci Cavallereschi」でスタート! いきなりパワー全開のウッズと強烈な波動を伴ったリズム隊の爆発力に圧倒されます。やや直裁的な表現ですが、ザーメンが濃そうなウッズのアルトサックスのウネリと先鋭的なバンド全体のノリが強烈です。それはモード&フリーなパートも含んでおりますが、ハードドライブな演奏はジャズの本質や伝統を蔑ろにはしていませんので、安心して身も心もまかせて楽しめます。サイドメンのソロではアンリ・テキシェがお約束のエスニック風味のベースソロを聞かせてくれますよ♪

そして続く「I Remember Bird」は、タイトルどおり、チャーリー・パーカーに捧げたグルーヴィな大名演です。ミディム・テンポでソウルフルに始まるテーマから、チャーリー・パーカーのフレーズを引用しつつ豪快に吹ききるウッズは、まさに白熱のプレイ! この出来上がり方は凄いの一言です。リズム隊とのコラボレーションも自在のテンポ、鋭いツッコミの応酬、さらにジャズ本来の楽しさの追求まで含めて、完璧です!

この最高のノリはB面に入ってますます加速し、クールな曲調の「Ad Infinitum」ですら、暴虐の嵐の中で展開されるのです。押さえようとしても押さえきれない熱いエモーションに支配されたバンドは、暗い情念を秘めつつクライマックスに突進していきますが、ここではジョルジュ・グランツのピアノが特に秀逸です♪

さらに凄いのがオーラスの「Riot」で、作者はご存知、ハービー・ハンコックというジャズの名曲ですが、それをタイトルどおり、激烈に演じるバンドは神がかっています。特に初っ端から大暴走するウッズとダニエル・ユメールのデュオ・パートは怖ろしい! フリーもロックも超越したジャズの瞬間芸が満喫出来ます♪ そしてそこへピアノとベースが襲い掛かっていく瞬間には観衆も興奮の大嵐! ここから、もうひとつ上の爆裂が始まるのですから、最高です!

と、思わず力が入ってしまうのが、このアルバムです。フィル・ウッズのアルトは鳴りすぎが欠点とよく言われますが、ここではそれが吉と出ています。あぁ、何度聴いても、興奮しますねっ♪

ちなみにバンドからは、この直後にジョルジュ・グランツが抜けてしまいますので、オリジナルメンバーでの貴重な録音という側面もあります。全体に激しい演奏なので、お茶の間には適さないかもしれませんが、そこはヘッドホーンという文明の利器もありますし、ジャズ者ならば一度は聴いておく演奏と、断言致します。熱くなりますよ♪

もちろん現在CD復刻されていますが、近々廃盤の噂がありますので、入手は急ぎましょう。

コメント
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