OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

モブレー大好き宣言!

2006-02-18 18:17:12 | Weblog

伯父の見舞いに行った病院に、偶然にも中学時代の同級生が入院していることを知りました。もちろん、ついでながらお見舞いしてきましたが、どうやら不治の病らしいので……。

全く、この歳になると、そういう場面に曹禺する機会が増えますね、避けて通れない道ではありますが、ますます一期一会を大切になんて、そんな気持ちになりました。

で、気分転換にジャズ喫茶に入り、リクエストしたのが――

Workout / Hank Mobley (Blue Note)

私が一番好きな黒人テナーサック奏者はハンク・モブレーですが、コルトレーンが神様だった1970年代前半までのジャズマスコミでは、そのアンチテーゼとして、なんとなくバカにされた存在でした。

それはR&Bをルーツとするそのスタイルが、バリバリのハードバップでありながら、如何にも古く、また音色がソフトで滑らかなくせに、時としてコルトレーン流の音符過多なフレーズを入れたモード曲をやったりするモブレー自身のわからなさ、というあたりから来たものかもしれません。

しかし、そういう部分は、逆に言えばモブレーだけの魅力で、そのタメのあるフレーズの妙、ふくよかなのにパワフルなドライブ感満点のアドリブは、虜になると抜け出せません。当にジャズらしいジャズを演じては最右翼の存在だと思います。

そのモブレーの人気盤のひとつがこれです。メンバーはハンク・モブレー(ts)、グラント・グリーン(g) というブルーノートの2大看板スターをメインに、ウイントン・ケリー(p)、ポール・チェンバース(b)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds) という、極上のリズム隊がついています。

録音は1961年3月26日で、実はこの直前の3月7日にマイルス・デイビスの録音に参加したハンク・モブレーは、コルトレーンと共演となった「いつか王子様が」で、コルトレーンに差をつけられたという、今日まで有名な伝説が残されています。実際、そのトラックを聴いてみると、確かにコルトレーンの爆発的な情念が噴出したアドリブ・ソロには圧倒されますが、モブレー中毒者にとっては、その歌心を秘めた温か味のあるモブレー節にも心が和むのです。それは、まあ、負け惜しみと受け取られても仕方が無い面もあるのですが……。

で、このセッションは、そういう世間の冷たい見方をぶっ飛ばす快演の連続です。しかもモブレー自身は、前述したマイルス・デイビスとの録音と、基本的には同じ姿勢で臨んでいるのです。その内容は――

A-1 Workout
 歯切れの良いフィリー・ジョーのドラムスと掛け合いのようなテーマの提示から、いかにもハンク・モブレーらしいファンキーな雰囲気を漂わせ、アドリブソロでは何時ものモブレー節が全開するアップテンポの痛快な曲です。滑らかなフレーズと単音強調のブロー、さらにリズム隊にコール&レスポンスを求めるノリの良さが聞き物です。
 もうひとりのスタア、グラント・グリーンも切れの良い単音弾きで奮闘、またウイントン・ケリーも猛烈なドライブ感で楽しませてくれるのでした。

A-2 Uh Huh
 このアルバムで私が一番好きな演奏です。そしてこれを聴くと、ついテーマのところで「ラ~、ラブミ~、ドゥ~」と歌ってしまうとおり、ビートルズの「Love Me Do」そっくりの素敵な曲なんですよ、これは♪ もっとも、発表はこちらの方が早いんですが、このあたりにもモブレーの魅力のひとつである、作曲の上手さが表れています。否、もしかしたら、なにか元ネタがあるのかもしれませんが……。
 で、モブレーの演奏はもちろん最高の楽しさで、ゴスペル調のリズム隊に煽られて、最初から最後まで歌心とファンキーな雰囲気に満ち溢れた快演を聞かせてくれます。こういう楽しさは、コルトレーンには絶対無理な世界で、これは資質の違いではありますが、モブレーだって偉大なのだっ! と声を大にしてしまう私です。
 もちろん、こういう曲想はグラント・グリーンも望むところだったのでしょう、これまた快調♪ とにかく素晴らしい演奏です。リズム隊の快適さは言わずもがな!

B-1 Smokin'
 モブレー自身がリードする素晴らしいブレイクのイントロからスタートする、アップテンポで物凄くカッコ良いハードバップ曲です。煽りまくるリズム隊を逆に引張るモブレーのノリは強烈です。よくもまあ、これだけ素晴らしいフレーズが出るもんだっ! としか言えません。そのフレーズのひとつひとつが、確実にモブレー節になっているのですから♪
 と、思わず力が入ってしまいましたが、続くグラント・グリーンも淀みなくパキパキいう、例の針飛びフレーズを聞かせてくれます。もちろんこれは、ピッキングのシャープさが極限状態の証なのです。そしてウイントン・ケリーの弾けっぷりも最高です。おまけに終盤でのモブレー対フィリー・ジョーの対決も興奮度が大!

B-2 The Best Things In Life Are Free
 このアルバムで唯一取上げられたスタンダード曲は、まさにモブレー節がたっぷり聞かれる名演になっています。テーマの展開のさせかたやタメのあるアドリブフレーズの上手さ、この和み感覚が一度虜になると、もう、たまらん状態なんですよ♪ 
 グラント・グリーンも相変わらず好調ですし、ウイントン・ケリーも楽しいフレーズばかり弾いておりますが、フィリー・ジョーのクッションの効いたブラシ中心のドラムスも素晴らしいと思います。

B-3 Greasin' Easy
 妙な明るさが魅力なファンキーなブルースで、作曲はもちろんハンク・モブレーです。ちなにこのセッションでは「B-2」を除いて全てがモブレーのオリジナルになっていますが、この人は本当に作曲が上手くて、モダンジャズ的な名曲を沢山書いています。
 肝心の演奏は粘っこいモブレーに対して、倍テンポで挑みかかるグラント・グリーンが面白く、リズム隊の機転の効いたノリも最高です。しかも山場を作った後に、ブルース魂全開のキメまで聴かせてくれますからねぇ♪

ということで、これは人気盤以外の何物でも無い作品です。もちろんジャズの歴史上で云々という代物でもありません。実はジャズが好きになった当時、私はジャズ喫茶で良く、この盤をリクエストしていましたが、その頃は前述したようにコルトレーンが神様でしたし、ジャズマスコミでもハンク・モブレーはほとんど取上げられず、ましてアルバムも廃盤状態のブツばかりでしたので、こんな人のファンじゃ、ダメなのかなぁ……、なんて悩んだりもしました。

しかし現実には、ジャズ喫茶でモブレーはけっこう鳴っていましたし、もちろんこのアルバム以外にも名盤・人気盤は幾枚も存在しています。個人的にはコンプリート・コレクションを目指しているほど好きな人なので、これからもいろいろとご紹介していこうと目論んでおりますが、まずはこのアルバムを、ぜひとも聴いてみて下さい。
 

コメント (2)
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