■Rory Gallagher Live In Europe (Polydor)
ロリー・ギャラガーはイギリスというよりも、アイルランドのロック野郎! しかも十八番は自ら弾きまくる熱血ギターを存分に活かしたブルースロックなんですから、サイケおやじにはジャストミートのひとりなんですが、実際、我国でも1970年代中頃までは相当な人気がありましたし、その時期を中心に今でも新しいファンが増えているんじゃないでしょうか。
本日の1枚は、まさにロリー・ギャラガーの真髄を楽しめる傑作として、そうした人気に火をつけた名盤です。
A-1 Messin' With The Kid
A-2 Laundromat
A-3 I Could've Had Religion
A-4 Pistol Slapper Blues
B-1 Going To My Home Town
B-2 In Your Town
B-3 Bullfrog Blues
発売されたのは昭和47(1972)年で、録音は同年2~3月の欧州巡業と言われていますが、当時から既に当たり前だったスタジオでの手直しオーバーダビング等は極力感じられない、なかなか素のままのライプパフォーマンスが実にストレートな興奮を煽りますよ。
メンバーはロリー・ギャラガー(vo.g,hmc,mandolin) 以下、ジェリー・マッカヴォイ(b)、ウィルガー・キャンベル(ds) が参加したトリオ編成は、英国伝統のクリームスタイルを踏襲していますが、それもそのはず、十代の頃から既にプロとして活動していたロリー・ギャラガーが世に出たは、クリームのマネージメントにスカウトされ、当時組んでいたテイストというクリームの真似っこバンドで巡業の前座をやることになった経緯があるのです。
もちろんテイストはその後、「第二のクリーム」として売り出されますが、残念ながらブレイクすることはありませんでした。
しかしロリー・ギャラガーのギターから弾き出される熱血、それと同等のエモーションが込められた不屈のボーカルはライプの現場から評判を呼び、ついに音楽的な相違を理由にテイストが解散した後、あらためてソロデビューしたのが1971年でした。
そしてその頃になると、ロリー・ギャラガーの音楽性もクリーム一辺倒ではなくなり、ブルースをベースにしながらも、アメリカ南部の土着フォークソングやカントリー&ウェスタン、また同時に自己のルーツに忠実なアイリッシュロックの伝統をも受け継いだ、実に素朴で野趣溢れる独得のスタイルへ移行していくのです。
それは当然ながら、定評のあったライプギグの方が真価を発揮する度合いが高く、そこでいよいよ発売されたこのアルバムが人気を呼ぶのもムペなるかな!
まずはA面冒頭「Messin' With The Kid」はご存じ、シカゴブルースの大物たるジュニア・ウェルズとバディ・ガイのコンビが十八番している定番を、実にロック的にカパーした大熱演! あのウキウキするキメのリフをちょいとシンプルに弾くのもニクイばかりですし、ずっしりとヘヴィなロックビートを基調に疾走していく歌と演奏は、最高に1970年代ロックしていますよ♪♪~♪
もちろんロリー・ギャラガーのギターソロは泣きまくり♪♪~♪
ボーカルと呼応する合の手フレーズの上手さも流石ですし、ブリッジ外奏法やミストーン寸前のチョーキング等々、高出力のフェンダーならではというロックギターの魅力を活かしきったストレートな技の数々は、真似出来そうで、実は出来ないのが素人の限界!?
しかしそれがロリー・ギャラガーの真骨頂だと思います。
つまり明らかにエリック・クラプトンからスタートしたと思しきギタースタイルが、決してコピーではない自分だけのスタイルに完成されているんですねぇ。それは例えばミック・テイラーも同じなんでしょうが、そんなところから、なんとロリー・ギャラガーはミック・テイラーの後釜としてストーンズから誘いを受けていたのは有名なエピソードだと思います、
閑話休題。
ですから猪突猛進の「Laundromat」がディープ・パープルになりかかったり、あるいは正統派ブルースロックの「In Your Town」がミッドナイトランブラーしそうになっても、そこはロリー・ギャラガーが自らオリジナルとクレジットしているとおり、自信に満ちたギターと熱い歌いっぷりによって、堂々と乗り切ってしまう姿勢が潔い! 特にワンコードのブギ「In Your Town」で唸りまくるスライドギターとボーカル、そしてベースとドラムスがぶっつけてくるシンプルなビートとの相乗効果は圧巻ですよ。
また、もうひとつの魅力が所謂アンプラクドな「Pistol Slapper Blues」や「Going To My Home Town」で、巧みなフィンガービッキングでアコースティックギターの弾き語りを聞かせる「Pistol Slapper Blues」は戦前ブルースのコピーですが、マンドリンを激しくかき鳴らして歌う「Going To My Home Town」は、なんとロリー・ギャラガーのオリジナルなんですから、そのブルースやカントリーフォークへの愛情は本物だと痛感されますねぇ~♪
このあたりはライ・クーダーとは異なる、ロリー・ギャラガーならではの「ロックな個性」だと思います。だって、このストレートに熱い勢いはライ・クーダーの完成された美意識とは別次元の荒削りに剥き出しなところがあって、これは誰にも止められないと思うばかりっ!
ですからエレキを抱え、おそらくはホルダーで首にかけたハーモニカを吹きながら歌う「I Could've Had Religion」が、尚更に街角のブルースになっているのは当然が必然でしょう。途中からドラムスとベースを従えて唸るギターとボーカルの蠢く情感の昂りが、本当に最高ですよ。
そしてオーラスの「Bullfrog Blues」が、これまた痛快至極のR&Rブルース大会♪♪~♪ もう、これまでの経緯なんか全て忘れてノリまくろうぜっ! そんなロリー・ギャラガーの男義とサービス精神が全開です。
ちなみにドラムスとベースのふたりは、決してテクニシャンではなく、むしろ場面によってはロリー・ギャラガーの足をひっぱりかねないところもあるんですが、そんなの関係ねぇ~! ひたすらに弾きまくられるギターと迸る情熱のボーカルを懸命にサポートせんとする勢いがありますから、そんなラフな部分さえもロックの存在証明となる好結果が、このライプ盤の大きな魅力でもあります。
ということで、とにかく「一家に1枚」的な1970年代ロックの必聴アルバム!
もちろん世界各国でヒットしたことにより、ロリー・ギャラガーはアメリカや日本でも巡業を敢行し、大きな人気を確固たるものにしています。
と同時にスタジオ録音盤も名作を幾つも作っていくのですが、その頃になるとバンドそのものにメンバーチェンジがあったりして、個人的にはどうもイマイチ……。熱狂的なファンは増えていたと思いますし、評論家の先生方も新作が出る度に絶賛していたんですがねぇ……。
まあ、それほど私にとっては、このアルバムが核心に触れるほど掛け替えのないものになっていたということでしょう。
しかし1995年、享年47歳にして天国へと旅立ったロリー・ギャラガー!?!
残され音源は遺族によって、かなりきっちり管理されつつあり、CD化も相当に進んでいるはずですから、一時期に比べ、今では様々なアルバムを聴くことが容易だと思います。
そしてその中でも、このライプは真っ先に聴いていただきたい魂の記録!
掲載したジャケ写からもご覧になれるとおり、長髪にチェック柄のシャツとジーパン姿でボロボロのギターを弾きながら歌うロリー・ギャラガーこそ、1970年代ロックのひとつの象徴だったのです。
あぁ、それにしてもロリー・ギャラガーが入ったストーンズを聴きたかったのは、サイケおやじだけでしょうか? 噂によれば実際にスタジオでのリハーサルやセッションに参加し、幾つかのレコーディングもやったそうですが、なんと自ら誘いを辞退したというのですから、今はただただ、妄想が刺戟されます。
ロリー・ギャラガーよ、永遠なれっ!