OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

蘇れっ! このライブ!

2012-07-05 15:33:09 | Rock

Live Yardbirds! Featuring Jimmy Page (Epic)

前にも書きましたが、近年のミュージシャン側主導によるアーカイヴ商法は、まさにファンの夢を叶えてくれる好企画とはいえ、それゆえに未だ叶わぬ夢への期待と絶望も激しく交錯しています。

例えば本日ご紹介のアルバムは、ブリティッシュ三大ギタリスト、つまりエリック・クラプトン、ジェフ・ペック、そしてジミー・ペイジを輩出したヤードバーズが1968年春に敢行したアメリカ巡業のステージから作られた公式ライプ盤なんですが、結果的に当時のバンドを仕切っていたジミー・ペイジのクレームによって発売後に回収されたという、今や幻の人気LP!

というのも、これがちゃんとしたレコード会社から世に出たのは1971年秋!?! 既に録音から3年半以上が経過した時期だったんですが、その目論見はジミー・ペイジがヤードバーズの発展的解散後に再編結成したレッド・ツェッペリンの大成功に肖った事は言うまでもないでしょう。

ですから、これを元ネタに、今日まで夥しいブートが流通してきたのは、それだけファンの要望が強く、当然ながらその中身には、ルーツ・オブ・ゼップ! という以上の聴きどころやハードロックの本質的興奮がびっしり詰まっているのです。

 A-1 The Train Kept A Rolling
 A-2 You're A Better Man Than I
 A-3 I'm Confused
 A-4 My Baby
 B-1 Over Under Sideways Down
 B-2 Drinking Muddy Water
 B-3 Shapes Of Things
 B-4 White Summer
 B-5 I'm Man

まず、何と言ってもA面ド頭の「The Train Kept A Rolling」が強烈で、今となってはエアロスミスの十八番と思われているかもしれませんが、それは明らかにヤードバーズの、このライプバージョンを基にしている事は暗黙の了解!

そしてヤードバーズがお手本にしたと思われるのが1956年頃に世に出たジョニー・バーネット&ザ・ロックンロール・トリオによる痛快なロカビリー演奏と言われているとおり、実は原曲が1950年代の黒人R&Bなんですから、やはりサイケデリック路線に踏み込んでいたヤードバーズにしても、デビュー当時からの基本は忘れていなかったという事でしょう。

ここでもアップテンポで突進するエネルギーは満タン状態!

ちなみに当時のメンバーはキース・レルフ(vo,hca)、ジミー・ペイジ(g)、クレス・ドレア(b)、ジム・マッカーティ(ds) という末期4人組ということで、荒っぽい中にもそれなりの纏まりがありますから、個人的には思わず熱くなって聴いてしまいます。

特にクライマックスで飛び出すジミー・ペイジの上昇系ギターソロに呼応するクリス・ドレアのドライヴするエレキベース、さらに全篇ヤケッパチ気味なジム・マッカーティのドラミングは、まさにハードロックの醍醐味!

なんだかんだと後々まで言われるキース・レルフのボーカルとハーモニカにしても、ここでは熱演だと思います。

あぁ~~、何度聴いても興奮しますねぇ~~~♪

またジェフ・ペック時代の演目にも煮詰められた熱気が感じられ、「You're A Better Man Than I」におけるジミー・ペイジのギターソロとキース・レルフのボーカルが醸し出す幻覚性が一転、ジャケットにクレジットは無いものの、中盤から「Heartfull Of Soul」が演じられる大サービスは嬉しいところ♪♪~♪

しかし最高に興奮させれるのは、そのまんまの流れで入っていく「I'm Confused」で、これは明らかに後のレッド・ツェッペリンで披露される「Dazed And Confused」の原型バージョン! というよりも、基本的なアイディアや演奏パータン、そのスタイルの主な部分は完成に近いところまで出来上がっていた証拠物件であり、本当に興味津々、楽しく聴けますよ♪♪~♪

ただし、それゆえにキース・レルフとロバート・プラントの比較は避けられない問題であって、前者のボーカルの弱さが露呈するのは……。

ですから続く「My Baby」のフォークロック風演奏が尚更に面白く聴けてしまうのは、後追い鑑賞ならではの徳用オマケという事かもしれません。

気になるジミー・ペイジのギターワークには、例のバイオリンの弓を使ったり、ワウワウや特殊に考案された(?)エフェクターを用いたサウンド作り等々、如何にも頭脳派らしいキメ技が随所にあって、もちろんこれはアルバムのウリのひとつだと思います。

こうしてレコードをひっくり返し、B面に針を落してみれば、そこは当時のヤードバーズが期待されていたとおりのヒットパレード大会で、「Over Under Sideways Down」や「Shapes Of Things」という人気曲は言わずもがな、シカゴブルースの定番リフを使った「Drinking Muddy Water」のハードロックな雰囲気も含めて、なかなかの熱演が続きますが、またまたこうしたジェフ・ペック時代の演目をやっても、ジミー・ペイジのギターが遜色のないトリッキーさを発揮するのは流石!

う~ん、MCで「マジック・フィンガー」と紹介されるのもムペなるかな!

ですから、ここにジミー・ペイジのギターをメインに演じられる「White Summer」が収録されたのも必然性があったと思います。

しかし、それでもジミー・ペイジがこのアルバムに不満を抱き、発売を前提に録音されていながら、しばらく世に出なかったのは、音質的な問題やミックスの不備があったと思われます。

なにしろ一説によれば、客席からの歓声がその場の音声ではなく、レコード会社に用意してあった既成のSEを被せたという疑惑も強くありますし、各楽器の定位も幾分不確かなパートが散見されますからねぇ……。

ただしレコードを一気に聴いて楽しめば、オーラスの「I'm Man」は見事な大団円であって、基本の黒人R&Bをハード&サイケデリックロックに再構築するヤードバーズのヤル気は決して侮れません!

十八番のインド系モードによる早弾きフレーズや、例によってバイオリンの弓を使った独創的(?)なジミー・ペイジのギター、意外な小技を用いるジム・マッカーティのドラミング、その場の状況に流されないクリス・ドレアのペースによる演奏パートのロック性感度の高さは、そんなに過小評価されるものでは無いでしょう。

後年問題視されるキース・レルフの存在にしても、この曲だけでなく、アルバム全体の奮闘は、もっと素直に楽しまれても当然と思うばかりです。

ということで、結局は現在でも公式には幻のアルバムになっている1枚なんですが、ブートはしょっちゅう出回っているので、案外と容易に聴く事が可能だと思います。

ちなみに掲載した私有盤は、1980年代初頭のある日、某輸入盤屋に何故か中古(!?)で大量入荷した時にゲットしたんですが、果たしてこれが本物なのか!?

もしかしたら精巧に作られた複製ブートかもしれないぞっ!?

なぁ~んていう疑惑が当時からありましたですねぇ。

何故ならば既に述べたとおり、1971年に公式発売され、それがジミー・ペイジのクレームによって回収された時、マスターテープもジャンクされたという噂が定説になっているからです。

しかし、相手はジミー・ペイジですよ!

そんなに簡単には物事を捨てられないはずという推察は容易でしょう。

とすれば、何時の日か、これがリミックス&リマスターされて世に出ないとは絶対に断言出来ないはずで、もちろんサイケおやじは万難を排する覚悟は出来ているつもりです。

コメント (6)
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