■つばめのように / Gigliola Cinquetti (Seven Seas / キングレコード)
ふっと気がつくと、もう何年も燕という鳥を見ていないような……。
そうですよ、子供の頃の春から初夏は家の軒先、寺社仏閣の境内等々には燕の巣が珍しくなく、地面スレスレに飛行する姿は颯爽として、潔い風物詩でしたねぇ~♪
ですからプロ野球チームにも燕=スワローズがありますし、「つばめ」を曲タイトルにした歌も多数あって、本日ご紹介もそのものズバリ!
昭和45(1970)年秋~初冬にかけて、それこそ爆発的に流行った洋楽ポップスのひとつとして、今も忘れられていないと思います。
しかし後に知ったところでは、この「つばめのように / Volano Le Rondini」がシングルヒットしたのは日本だけのようで、歌っているジリオラ・チンクェッティはイタリアのアイドルシンガーなんですが、その実力は侮れません。
なにしろ16歳のデビュー時には、あのサンレモ音楽祭とユーロヴィジョンコンテストでダブル優勝ですからねぇ~~♪ 忽ち世界的なスタア歌手の仲間入りというわけですが、殊更我国では彼女の可愛らしいルックスと確かな歌声のアンバランスなバランス感覚がウケたのでしょうか、件のデビュー曲「夢みる想い / Non Ho Leta」等々の日本語バージョンも作られていたほどです。
そして我国の洋楽ヒットパレードでは常連となり、またポップス系女性歌手の多くが、彼女の演目をカパーしていたのも懐かしい思い出です。
ちなみに「つばめのように / Volano Le Rondini」の楽曲そのものは、厳かなのにチープなオルガンと共犯関係になっているエレキギターのイントロが、如何にも昭和歌謡曲的なメロデイを彩っていくという、まさに当時の日本人の琴線に触れまくるキメが心地良く、これはGSエレキ歌謡のイタリア語バージョン?
なぁ~んて、逆もまた真なり!?
みたいな、本気で快感のパラドックスに魅了されるんですよ♪♪~♪
もちろんジリオラ・チンクェッティの可憐なイメージが、それを増幅させている事は言わずもがな、ちょっぴり哀切感の滲むボーカル表現が素晴らしいばかりで、ジャケット裏に掲載されているイタリア語の歌詞と翻訳を読んでみても、なにやら意味深なムードが……!?
う~ん、だからこんな良いメロディの歌が、本国ではシングルカットされないのか?
と思ってしまうわけですが、それほど流行歌の世界は奥が深いんでしょうねぇ。
最後になりましたが、ジリオラ・チンクェッティは他にも素敵な歌をどっさり残していて、我国独自のアルバムもリアルタイムで発売されていたほどです。
なにやら世の中、生臭い話が横行していますが、そんな世相にこそ、彼女の歌が似合うような気がしています。